【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
309 / 779
二次会 編

人への興味を失った

しおりを挟む
「あ、泊まりの予定だった?」

「……すみません。『四人だったらきっと楽しい』しか考えていなくて、泊まりになる時の問題を考えていませんでした。初対面の男女が同じ部屋はちょっとね……」

「あれ? 中村さんと女子会じゃないのか?」

 尊さんに突っ込まれ、私は「あ!」と声を上げてから真っ赤になった。

「……ごめんなさい……。今のなし。……素で尊さんと泊まるつもりでいた……。そうだった。恵とお泊まりしたいからランドって言ったのに……」

 あまりにも大ボケをかましてしまい、私は体が火照るほど赤面して両手で顔を扇ぐ。

 それを見て、尊さんはツボに入って笑っている。

「いや、俺はいいけど? 朱里が俺のこと大好きなんだって分かって嬉しいし」

「だから」

「涼と中村さんが一緒に泊まるのが問題なら、もう一部屋とってもいいし」

「だからぁ……!」

 私はべしべしと尊さんの肩を叩き、彼はいっそうおかしそうに笑う。

「俺は知らないお嬢さんと同じ部屋でも問題ないけどな」

 その時、涼さんが斜め上の発言をし、私は「へっ?」とうわずった声を漏らす。

「冗談だよね?」と思って彼を見るけれど、涼さんはごくごく真顔で言った。

「女性と同室でも着替えとかプライバシーは守った上で、健全に寝る自信あるから、〝俺は〟問題ないって意味。むしろ『嫌だ』っていうのは女性側だと思う」

「ああ……。そういえば、モテすぎて人への興味を失ったんでしたっけ」

 尊さんから聞いた話を要約すると、涼さんは私の言った言葉を噛み締めるように頷いた。

「なんか『人への興味を失った』って響き、マッドサイエンティストっぽくていいな」

空山基そらやまはじめさんの作品みたいな、セクシーロボットと結婚したりして」

 尊さんの言葉を聞いて、涼さんは手を打って笑う。

「ん?」

 誰の事を言っているのか分からず首を傾げると、尊さんはスマホを操作したあとに画像を見せてくれた。

「わ! セクシー!」

 見せてもらった画像は、全身銀色で顔らしい顔もなく、頭部もツルッとしているロボットが、マリリン・モンローの有名なポーズをとって白いドレスをはためかせている絵だ。

「有名なエアブラシイラストレーターで、エアロスミスのジャケットも描いたし、犬型ロボットのデザインも手がけたし、ディオールオムのショーでコラボもした。このセクシーロボットが一般的には印象が強いかな」

 尊さんの説明を聞きながら、私は夢中になって画像検索欄をスクロールしていく。

「すっごぉ……。生身の私よりずっと色気がある」

「ポージングはピンナップガールとか、そういう雰囲気を意識していると思うから、余計に色っぽいと思うよ」

「ピンナップ……」

 尊さんに言われ、聞いた事はあるけど……という顔をすると、涼さんが付け加える。

「戦闘機とかに描かれた、色っぽい女性のイラスト知らない? あれはノーズアートって言うけど、ああいうの」

 言われて、映画で見た事がある気がして「うんうん」と頷く。

「一説では、有名なピンナップガールのミス・フェルナンダは、藤田嗣治ふじたつぐはるの妻のフェルナンド・バレエじゃないかって言われてるけど、この藤田嗣治の描く乳白色の表現も悩ましいんだよな……」

 涼さんの言葉を聞いて、私は「あ!」と声を上げる。

「それ、映画見たことあります。『FOUJITA』。ずっと前だったからうろ覚えだけど。色にこだわるシーンがうっすらと……」

 映画が好きで劇場にも行くし、家では配信で気になったのを手当たり次第見ているので、よほど記憶に残る作品じゃないと何を見たんだか分からなくなるけど、きっかけがあると「見た事がある」と思い出せる。

「まぁ、何が言いたいかと言うと、これだけ妖艶だったらマッドサイエンティストになった涼も寂しくないだろうな、って事」

 思いきり脱線した話を、尊さんが綺麗に軌道修正してくれる。

「……あぁ、人への興味を失ったって話だっけ」

 涼さんはそもそもの話を思いだし、頷く。

 というか、ここまで脱線したら私なら「なんの話してたっけ?」となるのに、お酒を飲んでいるのに綺麗に思い出せるのは凄い。

「人間ってさ、どんな美味い料理でも、腹一杯食べ続けるとご馳走って思わなくなるだろ。さらに四六時中、自分の周りに食べ物が置かれてる状況になると、食べ物見るのも嫌になると思う。食べるのが好きなら苦にならないかもしれないけど、俺はそれほど欲が強くないからな……。……それの女性バージョンが今の状況」

「へええ……。……すみません。私、お腹いっぱいになっても、寝て起きたらスイッチ切り替わって新しい食を楽しめる……、なんて思っちゃいました」

 そう言ったら、尊さんが「ぶふっ」と噴き出した。
しおりを挟む
感想 2,457

あなたにおすすめの小説

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

処理中です...