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二次会 編
その他の女性の事を教えてください!
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「はい、上村さん」
涼さんが先生のように私を指す。
「宮本さんの事は知っているんですが、その他の女性の事を教えてください!」
ハキハキと言った私の言葉を聞いて、尊さんは「ぶふっ」とお酒に噎せる。
「朱里」
彼はおしぼりで口元を拭きつつ、げんなりした顔をする。
「だって気になるじゃないですか。前なんて『バーでちょっと飲んで話したら、お持ち帰りできる自信がある』って調子こいた事言ってましたし、パパ活みたいな付き合いもしてたんですよね?」
酔っぱらった私は尊さんの過去の発言を口にし、得意げにニヤニヤ笑う。
尊さんはもう言い返す気力もなく、ソファに背中を預けて脚を組み、お酒を飲んでいた。
「あー、それなー」
涼さんは心当たりがあるという言い方をし、ニヤッと笑って尊さんの表情を確認する。
「聞いても妬かない?」
「ウェルダンで妬くと思いますけど、気になってるの放置するほうも気持ち悪いですし」
「『焼く』の意味が違ぇよ……。食いしん坊が……」
尊さんはボソッと呟く。
「んまー、褒められた付き合いはしてなかったな。俺が知ってるのは大学生以降だけど、顔がいいもんだから告白されて付き合って、相手の望み通りデートやら贈り物やらして、ホテルにも行って。……でも心の底には朱里ちゃんがいる訳だろ? 女ってそういうのピンとくるんだよな。『私の事を見てない』って言ってフラれて、また告白されて……以下同文」
『心の底には朱里ちゃんがいる』を聞いて、私はむふーと笑ってしまう。
「こら、嬉しそうにするな」
尊さんが私の肩をツンツンつついてくる。
「でも俺たちが大学生当時って、二十歳として朱里ちゃんは中学生だろ? それはちょっと引いたけど。……でもこいつの報われない人生を知ると、たった一つの成功体験だったんだろうな、とも思ったよ。それがずっと胸の奥に残って救いになるのは理解できる。こいつも『中学生、高校生は恋愛対象に見られない』と言っていたから、ある意味安心はしてたけど」
「んー……」
あの橋で〝忍〟に助けてもらった私は、完全に恋に落ちていた。
それを思うとまるっきり相手にされてなかったんだな、と思って少し寂しくなる。
けど大人になった今、〝正しい大人の在り方〟ではあったんだろう。
あの時連絡先を教えてくれて、やり取りをして遠距離恋愛みたいになっていたら、きっと私はとても救われたと思うし、尊さんだって恵を通して私の情報を得るなんて回りくどい方法を採らなくて済んだと思う。
それでも尊さんは、私には年相応の恋愛をしてほしいと望んだし、自分の大きな感情を押しつけようとしなかった。
物凄く孤独で、当時は認識していなかった
妹さんと同じ名前だっていう事も、深く傷付いた彼は理解していなかった。
でも本能的に『守りたい』と思ってくれたんだろう。
私はキュッと尊さんの両手を握った。
「ん?」
こちらを見て微笑んだ彼が、愛おしい。
――私はずっと、この人に守られていた。
つい先日だって、昭人と決着をつける時に守ってくれた。
亮平や美奈歩の時も、分かり合えるよう架け橋になってくれたし、ツンツンした私の心を丸く穏やかにさせてくれた。
「最高じゃないです? 過去に尊さんに惹かれた女性が得られなかった心を、いま私が独占状態ですよ? スクープ取り放題です」
「記者か」
尊さんは呆れて言い、私のほっぺをムニュ、と摘まむ。
「おはようからおやすみまで、尊さんの暮らしを見つめる朱里です」
某会社風に言うと、彼は笑い崩れる。
……と、カウンターに座っている女性二人が、こちらをチラチラ見てくるのに気づいてしまった。
イケメンが二人もいるもんだから、声を掛けたがってるんだろうな。
だが渡さん。
私は性格が悪いので、わざとギュッと尊さんと腕を組む。
「そうだ、涼さんもし良かったら、私の友達と一緒にランド行きませんか?」
「え?」
彼は一瞬呆けた顔で声を漏らし、腕を組んで考える。
「ランドって言っても……」
「数合わせです。私は尊さんとも行きたいけど、親友とも行きたい。でも三人ってデンジャラスな人数なので、できればもう一人」
キッパリと言うと、彼の警戒心が緩んだみたいだ。
「別にいいよ。日帰り?」
そう言われて、言葉に詰まってしまった。
確かに泊まりになったら、恵も涼さんも初対面の異性と宿泊する事になる。それはちょっと……。
涼さんが先生のように私を指す。
「宮本さんの事は知っているんですが、その他の女性の事を教えてください!」
ハキハキと言った私の言葉を聞いて、尊さんは「ぶふっ」とお酒に噎せる。
「朱里」
彼はおしぼりで口元を拭きつつ、げんなりした顔をする。
「だって気になるじゃないですか。前なんて『バーでちょっと飲んで話したら、お持ち帰りできる自信がある』って調子こいた事言ってましたし、パパ活みたいな付き合いもしてたんですよね?」
酔っぱらった私は尊さんの過去の発言を口にし、得意げにニヤニヤ笑う。
尊さんはもう言い返す気力もなく、ソファに背中を預けて脚を組み、お酒を飲んでいた。
「あー、それなー」
涼さんは心当たりがあるという言い方をし、ニヤッと笑って尊さんの表情を確認する。
「聞いても妬かない?」
「ウェルダンで妬くと思いますけど、気になってるの放置するほうも気持ち悪いですし」
「『焼く』の意味が違ぇよ……。食いしん坊が……」
尊さんはボソッと呟く。
「んまー、褒められた付き合いはしてなかったな。俺が知ってるのは大学生以降だけど、顔がいいもんだから告白されて付き合って、相手の望み通りデートやら贈り物やらして、ホテルにも行って。……でも心の底には朱里ちゃんがいる訳だろ? 女ってそういうのピンとくるんだよな。『私の事を見てない』って言ってフラれて、また告白されて……以下同文」
『心の底には朱里ちゃんがいる』を聞いて、私はむふーと笑ってしまう。
「こら、嬉しそうにするな」
尊さんが私の肩をツンツンつついてくる。
「でも俺たちが大学生当時って、二十歳として朱里ちゃんは中学生だろ? それはちょっと引いたけど。……でもこいつの報われない人生を知ると、たった一つの成功体験だったんだろうな、とも思ったよ。それがずっと胸の奥に残って救いになるのは理解できる。こいつも『中学生、高校生は恋愛対象に見られない』と言っていたから、ある意味安心はしてたけど」
「んー……」
あの橋で〝忍〟に助けてもらった私は、完全に恋に落ちていた。
それを思うとまるっきり相手にされてなかったんだな、と思って少し寂しくなる。
けど大人になった今、〝正しい大人の在り方〟ではあったんだろう。
あの時連絡先を教えてくれて、やり取りをして遠距離恋愛みたいになっていたら、きっと私はとても救われたと思うし、尊さんだって恵を通して私の情報を得るなんて回りくどい方法を採らなくて済んだと思う。
それでも尊さんは、私には年相応の恋愛をしてほしいと望んだし、自分の大きな感情を押しつけようとしなかった。
物凄く孤独で、当時は認識していなかった
妹さんと同じ名前だっていう事も、深く傷付いた彼は理解していなかった。
でも本能的に『守りたい』と思ってくれたんだろう。
私はキュッと尊さんの両手を握った。
「ん?」
こちらを見て微笑んだ彼が、愛おしい。
――私はずっと、この人に守られていた。
つい先日だって、昭人と決着をつける時に守ってくれた。
亮平や美奈歩の時も、分かり合えるよう架け橋になってくれたし、ツンツンした私の心を丸く穏やかにさせてくれた。
「最高じゃないです? 過去に尊さんに惹かれた女性が得られなかった心を、いま私が独占状態ですよ? スクープ取り放題です」
「記者か」
尊さんは呆れて言い、私のほっぺをムニュ、と摘まむ。
「おはようからおやすみまで、尊さんの暮らしを見つめる朱里です」
某会社風に言うと、彼は笑い崩れる。
……と、カウンターに座っている女性二人が、こちらをチラチラ見てくるのに気づいてしまった。
イケメンが二人もいるもんだから、声を掛けたがってるんだろうな。
だが渡さん。
私は性格が悪いので、わざとギュッと尊さんと腕を組む。
「そうだ、涼さんもし良かったら、私の友達と一緒にランド行きませんか?」
「え?」
彼は一瞬呆けた顔で声を漏らし、腕を組んで考える。
「ランドって言っても……」
「数合わせです。私は尊さんとも行きたいけど、親友とも行きたい。でも三人ってデンジャラスな人数なので、できればもう一人」
キッパリと言うと、彼の警戒心が緩んだみたいだ。
「別にいいよ。日帰り?」
そう言われて、言葉に詰まってしまった。
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