【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
315 / 778
墓参り 編

百合

しおりを挟む
「ふぅん……」

 私はチラチラと尊さんを見て、自分的萌えポイントを確認する。

「確かにえっちなお兄さんですよね。なんか尊さんって存在そのものがやらしいもん。目つきとか色っぽいし」

 普通に会話をしている時も、『な?』とこちらを見る表情が堪らなくて、キャーキャー悶えたくなるけど、不審者になるので毎度我慢している。

 その分、盛大にニヤつきたくなる表情筋との熾烈な戦いになり、最終的に尊さんには『なにニヤついてるんだよ』と笑われてしまうけれど。

 イケメンってニヤつかれる運命にあるんだ……。

 そんな事を考えていると、尊さんに頭をチョンとチョップされた。

「朱里だってエッチなお姉さんだろうが。一緒に歩いてる時、その辺の男が意味ありげな目で見てるの、俺は見逃してないからな」

「ええ……?」

 それは初耳で、私は目を丸くする。

 尊さんは溜め息をつき、私の手を握ってくる。

「二十代、三十代の社会人からおじさん世代、はたまた十代の少年まで、お前とすれ違うと『色っぽい女』『綺麗なお姉さん』って目で見てくるんだよ。……朱里を連れて歩いていて、ある意味気持ちよくはあるけど、ある意味ムカつくな」

「むふふーん、嫉妬? 嫉妬ですか?」

 ツンツンと彼の腕をつつくと、尊さんは舌打ちする。

「喜ぶな」

「でもイケメン尊さんがドヤ顔して『俺の女に手を出すな!』ってオーラを出してくれるんでしょう?」

「誰がドヤ顔だ。俺だって先日のバーでの見事なドヤ顔、忘れてないからな」

 立ち止まった尊さんは、私のほっぺをムニュムニュと弄る。

「うう……」

 先日のバーでの事というのは、涼さんと話した時だ。

 スッキリしていざダーリンを迎えに……と思ったら、尊さんはカウンターで女性に挟まれていた。

 オセロならひっくり返っていたところだ。いや、ミト子になっても困る。

 せっかくいい気分になって尊さんへの愛を確認したいのに! となった私は、ツカツカとカウンターに近寄り、『お待たせ~』と彼をバックハグしたのだ。

 両側にいた女性が『なにこの女』という顔をしたのは言わずもがな、私は負けずにニッコリ笑って言い放った。

『放置プレイが終わったので、迎えに来たんです。お相手どうも。彼、こう見えて孤独を愛するタイプですから、お姉さん達がいなくてもお酒を楽しめますよ』

 そう言ったあと、物凄く何か言いたそうな尊さんの腕を組んで、涼さんがいる席まで戻った次第だ。

 涼さんは放置プレイにツボったらしく、噎せるまで笑っていた。

「……あの女性たちに未練がある訳じゃないけど、凄い誤解を与えたように思えるんだけど」

「ざっくりと『この人は私の男だからね!』っていうのが伝わったんだから、よしとしましょうよ」

「……しかしな……。放置プレイ……」

 再び歩き出した尊さんはブツブツ言い、不服そうだ。

「それとも『あーらごめんなさい! ここ座りたかったの!』って、お尻をぶつけて隣の席を強奪すれば良かったですか?」

 そう言うと、尊さんはプハッと噴き出して空を仰いで笑う。

「不思議とその光景がイメージできる。ホント、朱里は面白くて可愛い女だよ」

「お褒めにあずかり光栄です」

「極上またたび、やろうか?」

「洗濯してない尊さんのTシャツを嗅いで、ガンギマリしたいです」

「ええ……」

 本音でぶっちゃけると、尊さんはドン引きした顔をする。

「だって尊さん、いい匂いするんだもん」

「じゃあ俺にも朱里の匂いがついた何かをくれよ」

「変態」

「変態返ししただけだよ。変態を見ている時、変態もまた自分を見ているもんなんだ」

「ミコチェ!」

 私たちは軽口を叩いて笑い、荷物を持っていない手を繋いで霊園内を進む。

 やがて私たちは、速水家の名前が刻まれたお墓の前で立ち止まる。

「先に誰か来てたんだな。綺麗に掃除されてある」

 尊さんが言う通り、お墓には雑草一本生えず、新しいお花が供えられていた。

「……百合、母さんの好きな花なんだよ」

 彼は哀愁の籠もった笑みを浮かべ、「さて」と言ってバケツに汲んだ水を柄杓ですくい、そっと石碑に掛けていく。

 私はペコリと頭を下げて中に入り、雑巾でお墓を拭き始めた。

 尊さんも反対側や墓誌、灯籠や花立、水鉢、小さなお地蔵さまを拭き、最後にお花をちょっと無理矢理入れて線香を用意する。

 尊さんは溜め息をついたあと、墓誌に刻まれているさゆりさんとあかりちゃんの名前を見て、しゃがんで手を合わせる。

 母と妹の死を悼む姿を、私は後ろからそっと見守っていた。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

処理中です...