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壮行会 編
これからの新しい道
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「お二人の事、応援してますよ。これからの新しい道に幸あらん事を」
「…………ありがとう」
祝福してくれる割にはちょっと距離が近いし、なんだか悪戯めいている。
でも変な事はしてこない確信はあるから、「もう避け合うのはやめましょう」という意思表示なんだと思った。
「神」
その時、男性陣に囲まれていた尊さんが近づいてくる。
「お、やっと来ましたね。僕が話しかけた時からチラチラ見てましたけど、囁いた辺りから我慢できなくなった感じですね」
神くんにからかわれ、尊さんは大きな溜め息をつく。
「お前なぁ……」
「花を渡しただけですから、心配する事はありませんよ」
ニッコー! とキラキラ王子スマイルで言われ、尊さんは言葉をなくす。
「とにかく、お疲れさん。……その後のケア、宜しくな」
尊さんにポンと肩を叩かれ、神くんは「任せてください」と微笑む。
「あっ、そうだ。どうせだから三人で記念撮影しましょうか」
神くんはスマホを出すと、インカメラにしてピースする。
「撮りますよ~」
「あっ、待って」
私は荷物を左手に持ち替え、右手でピースをしてニコッと笑う。
尊さんは特に何もなく、普通の顔でスマホのレンズを見つめた。
カシャッと音がしたあと、神くんはフォトアルバムを確認して「どうも!」と笑う。
「あーっ! ずるい! 私たちも記念撮影したい!」
それを見て、綾子さんたちがすかさず自分のスマホを出す。
一応、解散する前に店内で店員さんに集合写真を撮影してもらったけれど、やっぱり個人の写真がほしいらしい。
他の人たちも我も我もとなり、撮影会が終わったあとに本当に解散となった。
「沢山もらっちゃった」
私は両手に花束とプレゼントを抱え、嬉しさと寂しさがない交ぜになった感情で言う。
「また、来週から頑張らねぇとな」
今日は飲み会があるので車で出社しておらず、私たちはハイヤーに乗って三田のマンションに向かう。
「ですね」
「……あーあ、とうとう皆に言っちゃった」
「……事前に打ち合わせしなくて悪い」
「そうじゃないんです。覚悟してたからいつでも良かったです。けど、とうとうこの日が来たなと思って、色々言われる心構えをしておかないと、って」
「ま、部署の皆が味方になってくれたから、何とかなるって思っとこうぜ。神もそうだし、牧原さんもコミュ力が高い。朱里の立場が悪くなるような反論はしないと思う。時沢もああ見えて顔が広いし、成田さんも頼りになる」
「成田課長、やっぱり繰り上げで部長になったんですね。あの人、尊さんの事をちょっと見下してるようなところがありましたけど」
そう言うと、彼は小さく笑う。
「誰だって自分より十歳近く年下の若造が上司になってたら、面白くないだろ。たまに嫌みを言われる事はあったけど、成田さんは課長として有能だ。収まるべきポストに収まったあとは、実力を発揮してくれると思う。一番大切にすべきは、部署のためになるかどうかだ。俺個人が成田さんをどう思うかなんてどうでもいい。彼もずっと俺のやり方を見て、何をしたら皆から好かれるか、何をしたら反感を食らうか分かってると思う。その辺はわきまえてる人だ。……だから、きっと大丈夫」
「……大人だなぁ……」
溜め息をついて尊さんの肩に頭を乗せると、彼はクスッと笑う。
「雇われ人だからな、個より会社の利益を考えねぇと」
ブレない彼の考え方に微笑んだあと、私はそっと息を吐く。
「早いですね。すべて始まったのは十二月だったのに、もう四月になろうとしてます」
「あ」
その時、尊さんが素の声を漏らし、私は「ん?」と顔を上げる。
「付き合って一か月記念とか、三か月記念とかしたほうが良かったか? ……悪い。バタバタしてて失念してた……」
そう言った尊さんは重大な事を見逃した顔をして、珍しく青ざめていた。
「い、いえ! 気にしないでください! 私、そんな記念日女じゃないので! 最低限、誕生日さえ覚えていてもらえたら……」
「……そうか……。……でもせっかく二人して異動になった訳だし、近いうちに食事にでも行くか」
「えっ? いいんですか?」
食事と聞いて表情を輝かせると、尊さんはクスクス笑う。
「食いたいもん、考えておいてくれ」
「はい! 明日……、あ……」
高級な食事じゃなくていいので、明日デートできないか尋ねようと思ったけれど、明日は尊さんの〝野暮用〟がある日だった。
「…………ありがとう」
祝福してくれる割にはちょっと距離が近いし、なんだか悪戯めいている。
でも変な事はしてこない確信はあるから、「もう避け合うのはやめましょう」という意思表示なんだと思った。
「神」
その時、男性陣に囲まれていた尊さんが近づいてくる。
「お、やっと来ましたね。僕が話しかけた時からチラチラ見てましたけど、囁いた辺りから我慢できなくなった感じですね」
神くんにからかわれ、尊さんは大きな溜め息をつく。
「お前なぁ……」
「花を渡しただけですから、心配する事はありませんよ」
ニッコー! とキラキラ王子スマイルで言われ、尊さんは言葉をなくす。
「とにかく、お疲れさん。……その後のケア、宜しくな」
尊さんにポンと肩を叩かれ、神くんは「任せてください」と微笑む。
「あっ、そうだ。どうせだから三人で記念撮影しましょうか」
神くんはスマホを出すと、インカメラにしてピースする。
「撮りますよ~」
「あっ、待って」
私は荷物を左手に持ち替え、右手でピースをしてニコッと笑う。
尊さんは特に何もなく、普通の顔でスマホのレンズを見つめた。
カシャッと音がしたあと、神くんはフォトアルバムを確認して「どうも!」と笑う。
「あーっ! ずるい! 私たちも記念撮影したい!」
それを見て、綾子さんたちがすかさず自分のスマホを出す。
一応、解散する前に店内で店員さんに集合写真を撮影してもらったけれど、やっぱり個人の写真がほしいらしい。
他の人たちも我も我もとなり、撮影会が終わったあとに本当に解散となった。
「沢山もらっちゃった」
私は両手に花束とプレゼントを抱え、嬉しさと寂しさがない交ぜになった感情で言う。
「また、来週から頑張らねぇとな」
今日は飲み会があるので車で出社しておらず、私たちはハイヤーに乗って三田のマンションに向かう。
「ですね」
「……あーあ、とうとう皆に言っちゃった」
「……事前に打ち合わせしなくて悪い」
「そうじゃないんです。覚悟してたからいつでも良かったです。けど、とうとうこの日が来たなと思って、色々言われる心構えをしておかないと、って」
「ま、部署の皆が味方になってくれたから、何とかなるって思っとこうぜ。神もそうだし、牧原さんもコミュ力が高い。朱里の立場が悪くなるような反論はしないと思う。時沢もああ見えて顔が広いし、成田さんも頼りになる」
「成田課長、やっぱり繰り上げで部長になったんですね。あの人、尊さんの事をちょっと見下してるようなところがありましたけど」
そう言うと、彼は小さく笑う。
「誰だって自分より十歳近く年下の若造が上司になってたら、面白くないだろ。たまに嫌みを言われる事はあったけど、成田さんは課長として有能だ。収まるべきポストに収まったあとは、実力を発揮してくれると思う。一番大切にすべきは、部署のためになるかどうかだ。俺個人が成田さんをどう思うかなんてどうでもいい。彼もずっと俺のやり方を見て、何をしたら皆から好かれるか、何をしたら反感を食らうか分かってると思う。その辺はわきまえてる人だ。……だから、きっと大丈夫」
「……大人だなぁ……」
溜め息をついて尊さんの肩に頭を乗せると、彼はクスッと笑う。
「雇われ人だからな、個より会社の利益を考えねぇと」
ブレない彼の考え方に微笑んだあと、私はそっと息を吐く。
「早いですね。すべて始まったのは十二月だったのに、もう四月になろうとしてます」
「あ」
その時、尊さんが素の声を漏らし、私は「ん?」と顔を上げる。
「付き合って一か月記念とか、三か月記念とかしたほうが良かったか? ……悪い。バタバタしてて失念してた……」
そう言った尊さんは重大な事を見逃した顔をして、珍しく青ざめていた。
「い、いえ! 気にしないでください! 私、そんな記念日女じゃないので! 最低限、誕生日さえ覚えていてもらえたら……」
「……そうか……。……でもせっかく二人して異動になった訳だし、近いうちに食事にでも行くか」
「えっ? いいんですか?」
食事と聞いて表情を輝かせると、尊さんはクスクス笑う。
「食いたいもん、考えておいてくれ」
「はい! 明日……、あ……」
高級な食事じゃなくていいので、明日デートできないか尋ねようと思ったけれど、明日は尊さんの〝野暮用〟がある日だった。
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