354 / 778
帰宅して 編
花言葉
しおりを挟む
「……悪いな」
「いいえ。今、うっかり尊さんをデートに誘おうとしたんですけど、そういえば以前に出かけるって聞いていたので、予定を入れていたんです。あやうくダブルブッキングするところでした」
これは本当で、ゆっくり過ごそうかと思ったけれど、あの広いマンションで一人で過ごすと寂しさが半端ない気がして、予定を入れたのだ。
だから、かねてから春日さんとエミリさんに恵を紹介したいと思っていたので、両者からOKをもらった上で「それなら週末に会おうか」という話になっていた。
「危ない、危ない。本当にうっかり誘うところでした」
ごまかし笑いをすると、尊さんは少し残念そうに言う。
「そんなに『うっかり』を連発するなよ。朱里からなら、沢山デートに誘われたい」
「じゃあ、今度『もののはずみで』デートに誘いますね」
「こんにゃろ」
「うひひ」
尊さんに両ほっぺをモチモチと引っ張られた私は、構ってもらえるのが嬉しくてクスクス笑った。
家に帰ってお風呂に入ったあと、私は大きめのロンTにスウェット地のショーパン姿でプレゼントを開封していた。
豪邸に住み、普段から尊さんに色んな物をプレゼントしてもらっているとはいえ、やっぱり人から何かもらえると嬉しい。
「おお……」
綾子さんのプレゼントはジバンシィのマットリップで、ベルベットのカバーがついていて高級感がある。
色はヌードベージュで、どんなシーンでも使えそうだ。
瑠美さん、美智香さんと一緒に買いに行ったらしく「勘違いさせたお詫びの意味も込めて」ちょっといい物にしたそうだ。
なんだか申し訳ないような、ありがたいような。
ちなみに瑠美さんはイソップのボディスクラブ、美智香さんはティファニーのハンドクリームをくれた。
「ありがたく使わせてもらう」
そして時沢係長がくれた資生堂パーラーのお菓子の詰め合わせを見てホクホクし、成田課長がくれたプレスバターサンドを見て「うひひ」と笑う。
成田課長は『娘が美味いと言っていた。俺はよく知らん』と言っていたけど、娘さんに聞いてくれる気遣いが嬉しい。
尊さんもお花をもらっていたので、家中お花まみれになってしまった。
その中でも、やっぱり神くんのくれた花束は色合いのセンスが良く、多分彼が懇意にしてる高級花屋さんの物なのかな? と考える。
「綺麗だなぁ……」
花瓶に植えられたお花を見て写真を撮っていると、スマホを手にした尊さんが、少しつまらなさそうに言う。
「……よくやるな」
「えっ? 何がです?」
別に彼に他意はなかったと思うし、お花をくれたぐらいいいのでは……、と思ったのだけれど。
「あいつ、結構いい性格してるよ。これ以上朱里に迫る事はないと思うけど……」
そこまで言い、尊さんはスマホを見る。
「黄色いダリア『優美』『栄華』、アプリコットのトルコキキョウ『優美』、……オレンジのカーネーション『純粋な愛』『熱烈な愛』。……日比谷花壇より」
彼が読み上げた言葉を聞き、私は少し固まってから「またまたぁ~!」と明るく言う。
「考えすぎですよ。男性の全員が、尊さんみたいに花言葉男じゃないんですから」
「おい、ひでぇ言いようだな」
思わず突っ込んだ彼に、私はケラケラ笑う。
「……まぁ、これぐらいで終わるならいいけどな」
そう言われ、私は神くんからもらった紙袋の底にあった物を思いだし、無意識に唇を突き出し、頬を少し膨らませる。
「…………なんだ、その顔は」
「どんな顔ですか」
「犬が飼い主に黙って、口におやつを咥えてるような、後ろめたい顔だよ」
「…………なんも……」
「目を逸らすな。まだ神に何かされたか? 餌付けか?」
「……んー……、ま、まぁ……、そんな感じですけど……」
疑い深そうに私を見ていた尊さんは、神くんからもらった紙袋を見て「やけにでかいな」と言い、立ちあがった。
「いいえ。今、うっかり尊さんをデートに誘おうとしたんですけど、そういえば以前に出かけるって聞いていたので、予定を入れていたんです。あやうくダブルブッキングするところでした」
これは本当で、ゆっくり過ごそうかと思ったけれど、あの広いマンションで一人で過ごすと寂しさが半端ない気がして、予定を入れたのだ。
だから、かねてから春日さんとエミリさんに恵を紹介したいと思っていたので、両者からOKをもらった上で「それなら週末に会おうか」という話になっていた。
「危ない、危ない。本当にうっかり誘うところでした」
ごまかし笑いをすると、尊さんは少し残念そうに言う。
「そんなに『うっかり』を連発するなよ。朱里からなら、沢山デートに誘われたい」
「じゃあ、今度『もののはずみで』デートに誘いますね」
「こんにゃろ」
「うひひ」
尊さんに両ほっぺをモチモチと引っ張られた私は、構ってもらえるのが嬉しくてクスクス笑った。
家に帰ってお風呂に入ったあと、私は大きめのロンTにスウェット地のショーパン姿でプレゼントを開封していた。
豪邸に住み、普段から尊さんに色んな物をプレゼントしてもらっているとはいえ、やっぱり人から何かもらえると嬉しい。
「おお……」
綾子さんのプレゼントはジバンシィのマットリップで、ベルベットのカバーがついていて高級感がある。
色はヌードベージュで、どんなシーンでも使えそうだ。
瑠美さん、美智香さんと一緒に買いに行ったらしく「勘違いさせたお詫びの意味も込めて」ちょっといい物にしたそうだ。
なんだか申し訳ないような、ありがたいような。
ちなみに瑠美さんはイソップのボディスクラブ、美智香さんはティファニーのハンドクリームをくれた。
「ありがたく使わせてもらう」
そして時沢係長がくれた資生堂パーラーのお菓子の詰め合わせを見てホクホクし、成田課長がくれたプレスバターサンドを見て「うひひ」と笑う。
成田課長は『娘が美味いと言っていた。俺はよく知らん』と言っていたけど、娘さんに聞いてくれる気遣いが嬉しい。
尊さんもお花をもらっていたので、家中お花まみれになってしまった。
その中でも、やっぱり神くんのくれた花束は色合いのセンスが良く、多分彼が懇意にしてる高級花屋さんの物なのかな? と考える。
「綺麗だなぁ……」
花瓶に植えられたお花を見て写真を撮っていると、スマホを手にした尊さんが、少しつまらなさそうに言う。
「……よくやるな」
「えっ? 何がです?」
別に彼に他意はなかったと思うし、お花をくれたぐらいいいのでは……、と思ったのだけれど。
「あいつ、結構いい性格してるよ。これ以上朱里に迫る事はないと思うけど……」
そこまで言い、尊さんはスマホを見る。
「黄色いダリア『優美』『栄華』、アプリコットのトルコキキョウ『優美』、……オレンジのカーネーション『純粋な愛』『熱烈な愛』。……日比谷花壇より」
彼が読み上げた言葉を聞き、私は少し固まってから「またまたぁ~!」と明るく言う。
「考えすぎですよ。男性の全員が、尊さんみたいに花言葉男じゃないんですから」
「おい、ひでぇ言いようだな」
思わず突っ込んだ彼に、私はケラケラ笑う。
「……まぁ、これぐらいで終わるならいいけどな」
そう言われ、私は神くんからもらった紙袋の底にあった物を思いだし、無意識に唇を突き出し、頬を少し膨らませる。
「…………なんだ、その顔は」
「どんな顔ですか」
「犬が飼い主に黙って、口におやつを咥えてるような、後ろめたい顔だよ」
「…………なんも……」
「目を逸らすな。まだ神に何かされたか? 餌付けか?」
「……んー……、ま、まぁ……、そんな感じですけど……」
疑い深そうに私を見ていた尊さんは、神くんからもらった紙袋を見て「やけにでかいな」と言い、立ちあがった。
174
あなたにおすすめの小説
3歳児にも劣る淑女(笑)
章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。
男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。
その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。
カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^)
ほんの思い付きの1場面的な小噺。
王女以外の固有名詞を無くしました。
元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末
黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。
※設定はふわふわ。
※予告なく修正、加筆する場合があります。
※いずれ他サイトにも転載予定。
※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。
完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。
音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。
見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。
だが、それではいけないと奮闘するのだが……
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる