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二日目の夜の葛藤 編
初めて同士
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「でも、気遣ってくれてありがとう」
お礼を言われ、私はホッとする。
何だかんだで、こうやって意見が衝突しても怒らず、私のほうに非があったのに「ありがとう」を言える人って貴重だと思う。
「さっきも言ったけど、今は性的な行為に慣れる事を重視したほうがいいと思う。男なんて自分でチョチョッとやれば出るもんだから、気にしなくていいよ」
そう言った彼を見て、「大人だなぁ……」と感じる。
「……私だって涼さんに気持ち良くなってほしいのに……。不甲斐ないな……」
ボソッと呟くと、彼がギューッと抱き締めてきた。
「わっ、な、なに……」
「……可愛すぎて、我慢しているのが無駄になるから……、勘弁して……」
かすれた声で言われ、私はこれ以上なく真っ赤になる。
(可愛いとか……! っていうか、この〝大人〟が我慢してるの? 私に?)
もう、彼の言う言葉の一つ一つにクラクラしっぱなしだ。
「可愛いよ、恵ちゃん。……なんでもっと早く出会えなかったかな」
涼さんは耳元で囁き、チュッと私の耳にキスをする。
こんな甘ったるい時を過ごした事のない私は、照れ隠しのあまり拒絶反応を示してしまいそうで、必死に自分と戦っている。
「……あ、あの……。……お、お手柔らかに……」
「ん?」
涼さんは私から顔を離し、不思議そうに目を瞬かせる。
「……その。凄く嬉しいんです。涼さんみたいな素敵な人に、ここまで大切にされて、『可愛い』って言われて、分不相応な幸せでどうにかなってしまいそうです。……でも、こういうの慣れてなくて。……いきなりドカッと大きな幸せや愛情を注がれると、正面から受け止めていいのか分からなくて戸惑っちゃうんです。……はしゃいで『私も涼さんが大好き』ってデレデレしたとして、今まで男性にデレた事ってないので、そんな自分に違和感を抱いて、ウガーッってなりそうです。……だから、少しずつ、適切な距離感で」
「……うん、分かった」
涼さんはゆっくり起き上がるとベッドの上で胡座をかき、ポンポンと私の頭を撫でてくる。
「俺、これと決めたらストレートで、すぐ行動っていう面があるんだ。今まで何度も言ったように、女性関係についてはスペックありきで近づいてくる人が多くて、本当に自分を想ってくれる人をどう見極めたらいいか分からず、当分は焦って相手を決めなくていいかって放置してた。……本当は『付き合ってみたらいい関係になれるかもしれない』と思ってもいた。でも、焦って結論を出す必要はないし、いつかは結婚しなきゃいけないとはいえ、まだ猶予はある。……だから恋愛以外に楽しい事ばかりを求めていたんだけど……」
そこまで言い、涼さんは私をモフッと布団で包む。
「昨日の朝に恵ちゃんと会って挨拶した時、初対面の女性と会った時の〝いつもの〟反応じゃなくて『お?』と興味を引かれる自分がいた。悪いけど『少し話したらいつもみたいに落ちるだろ』と思っていたけど、恵ちゃんはまったく俺に興味を見せず朱里ちゃんばかり気にしてた。……恋愛対象が女性の人なのかな? と思ったけど、尊からはそういう話は聞いていない。……あぁ、安心して。事前に少し聞いたと言っても、二泊三日、円滑に過ごすための基本情報ぐらいしか聞いてないから」
きちんと説明され、私は布団で胸元を隠しつつ頷く。
「……正直、今まで会った女性の中には、俺に媚びるんじゃなくて、そっけない態度をとる事で興味を引こうとする人もいた。……だから注意深く見ていたんだけど……。恵ちゃんは凄く自然体な人だなって感じた。わざとそっけない態度をとる人は、ツンツンしながらも俺を気にする。『構って』オーラを物凄く出すんだ。……でも恵ちゃんはそういうものがまったくなくて、昨日一日かけて君を観察していくうちに『いいな』って感じていった」
涼さんはなぜ私に惹かれたのかを語り、私は興味深く耳を傾ける。
私も元彼がいたとはいえ、ここまで想いをプレゼンしてくれる人はいなかった。
何となく告白されて付き合って、相手から『キスしたい』『エッチしたい』のオーラを感じて嫌になり、別れを告げて終わりになっていた。
彼らは彼らなりに私を好きだったのかもしれないけど、「愛されている」と感じた瞬間はなかったし、特に幸せでもなかった。
だから私も、元彼たちとはまったく違う涼さんに、興味津々でならない。
「……こんなに気持ちを乱されて、気になって堪らないのは恵ちゃんが初めてなんだ。だから君の初々しい反応を引き出したいがゆえに、色んな事を言って、行動してみたくなる。君の事をもっと知りたいんだ。……多分、これが好きって事なんだと思う」
この上ない告白を聞き、私は顔の下半分を布団で隠し黙り込む。
(……どうしよう。嬉しい)
嬉しいけど、思ってるだけじゃ駄目だ。何か言わないと。
一生懸命いい言葉を探していると、涼さんにクシャクシャッと頭を撫でられた。
「俺も恵ちゃんも初めて同士だ。……だから、お互い報告し合っていこう。きっと俺たちはいい恋人になれる」
とても嬉しそうに笑う涼さんの顔を見ていると、今まで幸せな将来なんて想像できなかったのに、十年後ぐらい、幸せに過ごしている自分が見えてくるような気がする。
お礼を言われ、私はホッとする。
何だかんだで、こうやって意見が衝突しても怒らず、私のほうに非があったのに「ありがとう」を言える人って貴重だと思う。
「さっきも言ったけど、今は性的な行為に慣れる事を重視したほうがいいと思う。男なんて自分でチョチョッとやれば出るもんだから、気にしなくていいよ」
そう言った彼を見て、「大人だなぁ……」と感じる。
「……私だって涼さんに気持ち良くなってほしいのに……。不甲斐ないな……」
ボソッと呟くと、彼がギューッと抱き締めてきた。
「わっ、な、なに……」
「……可愛すぎて、我慢しているのが無駄になるから……、勘弁して……」
かすれた声で言われ、私はこれ以上なく真っ赤になる。
(可愛いとか……! っていうか、この〝大人〟が我慢してるの? 私に?)
もう、彼の言う言葉の一つ一つにクラクラしっぱなしだ。
「可愛いよ、恵ちゃん。……なんでもっと早く出会えなかったかな」
涼さんは耳元で囁き、チュッと私の耳にキスをする。
こんな甘ったるい時を過ごした事のない私は、照れ隠しのあまり拒絶反応を示してしまいそうで、必死に自分と戦っている。
「……あ、あの……。……お、お手柔らかに……」
「ん?」
涼さんは私から顔を離し、不思議そうに目を瞬かせる。
「……その。凄く嬉しいんです。涼さんみたいな素敵な人に、ここまで大切にされて、『可愛い』って言われて、分不相応な幸せでどうにかなってしまいそうです。……でも、こういうの慣れてなくて。……いきなりドカッと大きな幸せや愛情を注がれると、正面から受け止めていいのか分からなくて戸惑っちゃうんです。……はしゃいで『私も涼さんが大好き』ってデレデレしたとして、今まで男性にデレた事ってないので、そんな自分に違和感を抱いて、ウガーッってなりそうです。……だから、少しずつ、適切な距離感で」
「……うん、分かった」
涼さんはゆっくり起き上がるとベッドの上で胡座をかき、ポンポンと私の頭を撫でてくる。
「俺、これと決めたらストレートで、すぐ行動っていう面があるんだ。今まで何度も言ったように、女性関係についてはスペックありきで近づいてくる人が多くて、本当に自分を想ってくれる人をどう見極めたらいいか分からず、当分は焦って相手を決めなくていいかって放置してた。……本当は『付き合ってみたらいい関係になれるかもしれない』と思ってもいた。でも、焦って結論を出す必要はないし、いつかは結婚しなきゃいけないとはいえ、まだ猶予はある。……だから恋愛以外に楽しい事ばかりを求めていたんだけど……」
そこまで言い、涼さんは私をモフッと布団で包む。
「昨日の朝に恵ちゃんと会って挨拶した時、初対面の女性と会った時の〝いつもの〟反応じゃなくて『お?』と興味を引かれる自分がいた。悪いけど『少し話したらいつもみたいに落ちるだろ』と思っていたけど、恵ちゃんはまったく俺に興味を見せず朱里ちゃんばかり気にしてた。……恋愛対象が女性の人なのかな? と思ったけど、尊からはそういう話は聞いていない。……あぁ、安心して。事前に少し聞いたと言っても、二泊三日、円滑に過ごすための基本情報ぐらいしか聞いてないから」
きちんと説明され、私は布団で胸元を隠しつつ頷く。
「……正直、今まで会った女性の中には、俺に媚びるんじゃなくて、そっけない態度をとる事で興味を引こうとする人もいた。……だから注意深く見ていたんだけど……。恵ちゃんは凄く自然体な人だなって感じた。わざとそっけない態度をとる人は、ツンツンしながらも俺を気にする。『構って』オーラを物凄く出すんだ。……でも恵ちゃんはそういうものがまったくなくて、昨日一日かけて君を観察していくうちに『いいな』って感じていった」
涼さんはなぜ私に惹かれたのかを語り、私は興味深く耳を傾ける。
私も元彼がいたとはいえ、ここまで想いをプレゼンしてくれる人はいなかった。
何となく告白されて付き合って、相手から『キスしたい』『エッチしたい』のオーラを感じて嫌になり、別れを告げて終わりになっていた。
彼らは彼らなりに私を好きだったのかもしれないけど、「愛されている」と感じた瞬間はなかったし、特に幸せでもなかった。
だから私も、元彼たちとはまったく違う涼さんに、興味津々でならない。
「……こんなに気持ちを乱されて、気になって堪らないのは恵ちゃんが初めてなんだ。だから君の初々しい反応を引き出したいがゆえに、色んな事を言って、行動してみたくなる。君の事をもっと知りたいんだ。……多分、これが好きって事なんだと思う」
この上ない告白を聞き、私は顔の下半分を布団で隠し黙り込む。
(……どうしよう。嬉しい)
嬉しいけど、思ってるだけじゃ駄目だ。何か言わないと。
一生懸命いい言葉を探していると、涼さんにクシャクシャッと頭を撫でられた。
「俺も恵ちゃんも初めて同士だ。……だから、お互い報告し合っていこう。きっと俺たちはいい恋人になれる」
とても嬉しそうに笑う涼さんの顔を見ていると、今まで幸せな将来なんて想像できなかったのに、十年後ぐらい、幸せに過ごしている自分が見えてくるような気がする。
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