【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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彼と彼女のその後 編

涼の家

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「お茶するだけ。うちのほうがゆっくりできるし、靴を脱いで過ごせるだろ」

 確かに二日連続で歩き遊び、さすがにクタクタだ。

「居心地はそれなりにいいはずだから、おいで。俺が淹れるコーヒーも割と美味しいと思うよ」

「……じゃ、じゃあ……。お邪魔します」

「よし」

 頷いた涼さんはアクセルを踏み、首都高湾岸線に沿って車を走らせていった。



**



 着いたのは六本木にある滝トラストが手がけたタワーの一つで、四十七階の建て建物だ。

 駐車場から建物の中に入るとコンシェルジュがいて、その奥にあるドアを通るとすぐにエレベーターホールだ。

 どうやらマンション部分は三階から二十四階らしく、涼さんの家は二十四階だそうだ。

「……タ、タワマンってデメリットありますか?」

 間が持たなくて尋ねると、彼は「んー」と考えてから首を傾げて言う。

「エレベーターの待ち時間?」

「な、なるほど。メリットは?」

「んー、……セキュリティとか管理を人任せにできる所かな。俺、割と出張する他は家と会社の行き来なんだけど、嫌みな話、金さえ払ってれば家政婦さんに掃除や食事の作り置きを任せて、食べて寝るだけの生活ができるし。……あぁ、あとジムやプールもタワー内にある事とか、コンビニがある事とか? 使うにはエレベーター必須だけど」

「おお……」

 金持ち発言を聞いて頷いた時、エレベーターがフロアに着いた。

 黒やチョコレートブラウンなど落ち着いたトーンの廊下を進み、涼さんは角部屋のドアを開ける。

「いらっしゃい」

 涼さんはニコッと笑って言い、スリッパを出してくれる。

「……ど、どうも……」

 玄関から入るとすぐに広い空間になっていて、美術館みたいに絵画が幾つも飾られてあった。

 絵は自然を描いたものや動物の絵が多く、なんとなく涼さんの趣味を感じる。

 すぐ右手にはシューズクローゼットがあって、彼はそこに靴をポンと入れると中に入って行った。

「わぁ……!」

 ギャラリーホールの奥にあるスライドドアを開けると、五十畳以上はあるだだっ広い区間が広がり、コーナー窓からは東京タワーが見えた。

「適当に座ってて。今、コーヒーとお菓子の用意するから」

 涼さんは荷物を置くと、隣の部屋に向かう。

「あ、……あの、見てても?」

「いいよ」

 彼について行くと、八人ぐらい座れるダイニングテーブルの向こうにキッチンがあった。

 台所なのに二十畳はありそうなそこにはアイランドキッチンが完備され、オーブンに巨大冷蔵庫、ワインセラーにサブ冷蔵庫、冷凍庫とあらゆる物が揃っている。

 キッチンからも絶景が望めるので、ここで料理をしたらさぞ気持ちいいだろうなと思った。

「……料理のプロなんですか?」

「まさか。料理はプロに任せてるよ。俺自身、できない訳じゃないけど」

「あ……、そっか」

 先ほどの話を失念していた自分に溜め息をついた時、涼さんが「コーヒーの好みある?」と尋ねてきた。

「え? 好みとは?」

「酸味が少なくてコクのあるタイプが好きとか、浅煎りで軽めが好きとか。コナコーヒーもあるし、なんなら紅茶も各種あるよ。勿論、日本茶も中国茶も」

「そ、そんなに飲めません。……コーヒーは詳しくないので涼さんが好きなのでいいです。飲み物に好き嫌いはないので」

 返事をすると、彼は冷凍庫の中からコーヒー豆を出し、お湯を沸かしながら言う。

「うっかりそういう事を言うと、センブリ茶を出すよ」

「罰ゲームか!」

 思わず突っ込むと、彼は「調子が出てきたね」とケラケラ笑う。

 涼さんに進められてスツールに腰かけると、彼は「好きなお菓子はある?」と尋ねつつ冷蔵庫から高級チョコレートを出す。

「なんでも食べます。……涼さんの所のお菓子、何でも美味しそうなので」

「素直で宜しい」

 彼はクスッと笑い、戸棚からレストランで出てきそうな黒い長方形のお皿を出すと、その上にチョコレートを数種類、二つずつ並べ、別のお皿にマドレーヌやフィナンシェなどを並べる。

 まるで高級レストランで出てきそうな盛り付けをする彼を見て、私は思わず溜め息を漏らしてしまった。
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