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彼と彼女のその後 編
誕生日、いつ?
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「私、そういう食べ方をする発想がなかったです。もらい物をした時は、箱から直接食べてました」
「そりゃあ、好きな子の前なら格好つけないと」
不意打ちを食らった私は、「うぐ……」と黙り込む。
タワマンは地上から離れているだけあって、喧噪が聞こえなくて静かだ。
「ここ、揺れますか?」
「自然災害の時は揺れるね。このビルの上層階はオフィスだけど、上の人たちはもっと揺れを感じるんじゃないかな。怖いと言えば怖いけど、しならせる事でボキッと折れないようにしている訳だから、まぁ仕方ないかなと思ってる」
「へぇー……」
お菓子をセットし終えた涼さんは箱を片づけ、お湯が沸くのを待つ間にコーヒーカップを準備する。
彼が出したのは深い群青色の有田焼のカップで、これも彼らしい趣味だなと感じた。
「恵ちゃんはどういうカップを使ってる?」
「ん? 朱里がプレゼントしてくれた、スターレックスの奴です」
私も朱里もスタレが大好きで、新作フラペチーノが出たら必ず飲みに行っている。
コーヒーショップが好きな割にコーヒーの善し悪しはあまりよく分からず、朱里と「そんなもんだよね~」と言っていた。
「へぇ、どんな? あそこ、タンブラーとか色々売ってるよね」
「私、夏生まれなんですが、海をイメージした可愛いマグカップがあって、誕生日プレゼントの一つとしてくれたんです。メインは彼女らしくコスメでしたが」
「誕生日、いつ?」
ニコッと笑って尋ねられ、私はなんとなく嫌な予感を抱きつつ答える。
「七月二十五日です」
すると涼さんはすぐスマホを出して何かを確認し、「……今なら休み取れそうかな」と呟いている。ちょっと待て。
「いや、あの。確か今年の誕生日は平日だったはずですし。その日は多分、会社が終わったあとに朱里とご飯を食べると思いますよ」
「木曜日だよね? 金、土、日が空いてるよね?」
ニコニコ笑顔で尋ねられるけれど、……圧を感じる。
「……予定は入ってないですけど……。……涼さんの誕生日はいつですか?」
「十一月二十七日の射手座」
「朱里と誕生日が近いですね」
一瞬「同じ星座の人を好きになりやすいのかな?」と思ったけれど、十二星座で人の性格を分けられたら堪ったもんじゃないので、その意見は下げておいた。
でも朱里も涼さんも、表向きは人を受け入れているようで簡単には心に入れず、受け入れると決めたあとは、とても大切にするタイプだ。
「欲しい物はある?」
お湯が沸く寸前に火を止めた涼さんは、ケトルを傾けてコーヒーをドリップしていく。
イケメンは何をやっても格好いいな。
「あんまり物欲がないほうなので、特に思いつかないです」
「じゃあ、食? 旅行?」
「皆でワイワイ食べるご飯はなんでも好きです。旅行は……、好きって言えるほど行ってないですね」
たまに朱里と温泉旅行や国内旅行はするけれど、あちこちに精通している訳じゃない。
「じゃあ、俺と近場に旅行してみる? 夏場で暑いから涼しい所がいいかな。それとも開き直って海のある所とか……」
「えっ?」
いきなり涼さんと旅行する事になってしまい、頭がついていかない。
「北海道ならウニがシーズンだし、沖縄でソーキ蕎麦とか。近場の温泉でもいいのかな」
「いやいやいやいや……。ちょ、ちょっと急で……」
慌てて両手を振ると、涼さんは朗らかに笑った。
「ごめん、嬉しくてまた先走ったみたいだ」
「今は五月で、七月って思ってるよりすぐだから、今すぐは無理でも検討してみて。誕生日の前の週は連休があるし、そっちにずらすともう少しゆっくりできるかも」
「……か、考えておきます」
答えたあと、「そういえば朱里は、七月半ばの連休に広島に行くって言ってたっけ」と思いだした。
「……あの、涼さんは篠宮さんの事をよく知ってるんですよね?」
「そうだね、付き合いはそこそこ長いし、親友だと思ってる」
コーヒーを淹れ終えた涼さんは、「ミルクと砂糖入れる?」と尋ねてきて、ミルクを所望した。
そのあと私たちは、コーヒーとお茶菓子を持ってリビングに戻る。
「……七月に朱里が広島に行って、宮本さんっていう篠宮さんの元カノに会うって聞いたので、大丈夫かなって思って」
心配している事を打ち明けると、彼はコーヒーを一口飲んで「ああ」と頷いた。
「そりゃあ、好きな子の前なら格好つけないと」
不意打ちを食らった私は、「うぐ……」と黙り込む。
タワマンは地上から離れているだけあって、喧噪が聞こえなくて静かだ。
「ここ、揺れますか?」
「自然災害の時は揺れるね。このビルの上層階はオフィスだけど、上の人たちはもっと揺れを感じるんじゃないかな。怖いと言えば怖いけど、しならせる事でボキッと折れないようにしている訳だから、まぁ仕方ないかなと思ってる」
「へぇー……」
お菓子をセットし終えた涼さんは箱を片づけ、お湯が沸くのを待つ間にコーヒーカップを準備する。
彼が出したのは深い群青色の有田焼のカップで、これも彼らしい趣味だなと感じた。
「恵ちゃんはどういうカップを使ってる?」
「ん? 朱里がプレゼントしてくれた、スターレックスの奴です」
私も朱里もスタレが大好きで、新作フラペチーノが出たら必ず飲みに行っている。
コーヒーショップが好きな割にコーヒーの善し悪しはあまりよく分からず、朱里と「そんなもんだよね~」と言っていた。
「へぇ、どんな? あそこ、タンブラーとか色々売ってるよね」
「私、夏生まれなんですが、海をイメージした可愛いマグカップがあって、誕生日プレゼントの一つとしてくれたんです。メインは彼女らしくコスメでしたが」
「誕生日、いつ?」
ニコッと笑って尋ねられ、私はなんとなく嫌な予感を抱きつつ答える。
「七月二十五日です」
すると涼さんはすぐスマホを出して何かを確認し、「……今なら休み取れそうかな」と呟いている。ちょっと待て。
「いや、あの。確か今年の誕生日は平日だったはずですし。その日は多分、会社が終わったあとに朱里とご飯を食べると思いますよ」
「木曜日だよね? 金、土、日が空いてるよね?」
ニコニコ笑顔で尋ねられるけれど、……圧を感じる。
「……予定は入ってないですけど……。……涼さんの誕生日はいつですか?」
「十一月二十七日の射手座」
「朱里と誕生日が近いですね」
一瞬「同じ星座の人を好きになりやすいのかな?」と思ったけれど、十二星座で人の性格を分けられたら堪ったもんじゃないので、その意見は下げておいた。
でも朱里も涼さんも、表向きは人を受け入れているようで簡単には心に入れず、受け入れると決めたあとは、とても大切にするタイプだ。
「欲しい物はある?」
お湯が沸く寸前に火を止めた涼さんは、ケトルを傾けてコーヒーをドリップしていく。
イケメンは何をやっても格好いいな。
「あんまり物欲がないほうなので、特に思いつかないです」
「じゃあ、食? 旅行?」
「皆でワイワイ食べるご飯はなんでも好きです。旅行は……、好きって言えるほど行ってないですね」
たまに朱里と温泉旅行や国内旅行はするけれど、あちこちに精通している訳じゃない。
「じゃあ、俺と近場に旅行してみる? 夏場で暑いから涼しい所がいいかな。それとも開き直って海のある所とか……」
「えっ?」
いきなり涼さんと旅行する事になってしまい、頭がついていかない。
「北海道ならウニがシーズンだし、沖縄でソーキ蕎麦とか。近場の温泉でもいいのかな」
「いやいやいやいや……。ちょ、ちょっと急で……」
慌てて両手を振ると、涼さんは朗らかに笑った。
「ごめん、嬉しくてまた先走ったみたいだ」
「今は五月で、七月って思ってるよりすぐだから、今すぐは無理でも検討してみて。誕生日の前の週は連休があるし、そっちにずらすともう少しゆっくりできるかも」
「……か、考えておきます」
答えたあと、「そういえば朱里は、七月半ばの連休に広島に行くって言ってたっけ」と思いだした。
「……あの、涼さんは篠宮さんの事をよく知ってるんですよね?」
「そうだね、付き合いはそこそこ長いし、親友だと思ってる」
コーヒーを淹れ終えた涼さんは、「ミルクと砂糖入れる?」と尋ねてきて、ミルクを所望した。
そのあと私たちは、コーヒーとお茶菓子を持ってリビングに戻る。
「……七月に朱里が広島に行って、宮本さんっていう篠宮さんの元カノに会うって聞いたので、大丈夫かなって思って」
心配している事を打ち明けると、彼はコーヒーを一口飲んで「ああ」と頷いた。
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