【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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彼と彼女のその後 編

誕生日、いつ?

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「私、そういう食べ方をする発想がなかったです。もらい物をした時は、箱から直接食べてました」

「そりゃあ、好きな子の前なら格好つけないと」

 不意打ちを食らった私は、「うぐ……」と黙り込む。

 タワマンは地上から離れているだけあって、喧噪が聞こえなくて静かだ。

「ここ、揺れますか?」

「自然災害の時は揺れるね。このビルの上層階はオフィスだけど、上の人たちはもっと揺れを感じるんじゃないかな。怖いと言えば怖いけど、しならせる事でボキッと折れないようにしている訳だから、まぁ仕方ないかなと思ってる」

「へぇー……」

 お菓子をセットし終えた涼さんは箱を片づけ、お湯が沸くのを待つ間にコーヒーカップを準備する。

 彼が出したのは深い群青色の有田焼のカップで、これも彼らしい趣味だなと感じた。

「恵ちゃんはどういうカップを使ってる?」

「ん? 朱里がプレゼントしてくれた、スターレックスの奴です」

 私も朱里もスタレが大好きで、新作フラペチーノが出たら必ず飲みに行っている。

 コーヒーショップが好きな割にコーヒーの善し悪しはあまりよく分からず、朱里と「そんなもんだよね~」と言っていた。

「へぇ、どんな? あそこ、タンブラーとか色々売ってるよね」

「私、夏生まれなんですが、海をイメージした可愛いマグカップがあって、誕生日プレゼントの一つとしてくれたんです。メインは彼女らしくコスメでしたが」

「誕生日、いつ?」

 ニコッと笑って尋ねられ、私はなんとなく嫌な予感を抱きつつ答える。

「七月二十五日です」

 すると涼さんはすぐスマホを出して何かを確認し、「……今なら休み取れそうかな」と呟いている。ちょっと待て。

「いや、あの。確か今年の誕生日は平日だったはずですし。その日は多分、会社が終わったあとに朱里とご飯を食べると思いますよ」

「木曜日だよね? 金、土、日が空いてるよね?」

 ニコニコ笑顔で尋ねられるけれど、……圧を感じる。

「……予定は入ってないですけど……。……涼さんの誕生日はいつですか?」

「十一月二十七日の射手座」

「朱里と誕生日が近いですね」

 一瞬「同じ星座の人を好きになりやすいのかな?」と思ったけれど、十二星座で人の性格を分けられたら堪ったもんじゃないので、その意見は下げておいた。

 でも朱里も涼さんも、表向きは人を受け入れているようで簡単には心に入れず、受け入れると決めたあとは、とても大切にするタイプだ。

「欲しい物はある?」

 お湯が沸く寸前に火を止めた涼さんは、ケトルを傾けてコーヒーをドリップしていく。

 イケメンは何をやっても格好いいな。

「あんまり物欲がないほうなので、特に思いつかないです」

「じゃあ、食? 旅行?」

「皆でワイワイ食べるご飯はなんでも好きです。旅行は……、好きって言えるほど行ってないですね」

 たまに朱里と温泉旅行や国内旅行はするけれど、あちこちに精通している訳じゃない。

「じゃあ、俺と近場に旅行してみる? 夏場で暑いから涼しい所がいいかな。それとも開き直って海のある所とか……」

「えっ?」

 いきなり涼さんと旅行する事になってしまい、頭がついていかない。

「北海道ならウニがシーズンだし、沖縄でソーキ蕎麦とか。近場の温泉でもいいのかな」

「いやいやいやいや……。ちょ、ちょっと急で……」

 慌てて両手を振ると、涼さんは朗らかに笑った。

「ごめん、嬉しくてまた先走ったみたいだ」

「今は五月で、七月って思ってるよりすぐだから、今すぐは無理でも検討してみて。誕生日の前の週は連休があるし、そっちにずらすともう少しゆっくりできるかも」

「……か、考えておきます」

 答えたあと、「そういえば朱里は、七月半ばの連休に広島に行くって言ってたっけ」と思いだした。

「……あの、涼さんは篠宮さんの事をよく知ってるんですよね?」

「そうだね、付き合いはそこそこ長いし、親友だと思ってる」

 コーヒーを淹れ終えた涼さんは、「ミルクと砂糖入れる?」と尋ねてきて、ミルクを所望した。

 そのあと私たちは、コーヒーとお茶菓子を持ってリビングに戻る。

「……七月に朱里が広島に行って、宮本さんっていう篠宮さんの元カノに会うって聞いたので、大丈夫かなって思って」

 心配している事を打ち明けると、彼はコーヒーを一口飲んで「ああ」と頷いた。
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