【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
454 / 791
彼と彼女のその後 編

綺麗でいたいし

しおりを挟む
 私は口を半開きにしたまま、人差し指を谷間に入れてみる。

 ――……指が、胸に挟まれる!

 感動を覚えた私は、そのままスポスポと抜き差ししたくなったけれど、グッと我慢した。

 そしてゆっくりと担当さんを振り返る。

「すっ……ごい、……ですね……」

「はい」

 彼女は満足げに頷く。

「どういう仕組みなんですか? 魔法のブラ?」

 そんな商品名があったなと思いつつ尋ねると、彼女は別の商品を吟味しながら言った。

「バストメイクは乳房の事だけではないのです。正しいサイズのブラジャーを着け、姿勢を良くして、背中や脇から根こそぎお肉を持ってきて『あなたの正しい位置はここなんですよ』と教えると、バストができあがるのです」

「……なるほど。それでメイク」

「補正ブラにしますと、その効果が顕著に出ます。年齢を重ねて少し脇や背中にお肉ができてしまったわ……、という時に補正ブラをつけると、後ろから見たシルエットがスッキリします。同様に、若い頃からガードルを穿く習慣をつけている方は、五十代、六十代になってもお綺麗なヒップをされていますね」

(マジか)

 何も対策しなくていいとは思わないけど、うちは痩せ型の家系なので、自分も対して変わらないんだろうなと思っていた。

 けど確かに母は『加齢と共にお尻が下がってきた』と言っていた。

(予防できるんなら、それに越した事はないな……)

 そう思ってしまうのも、涼さんとの今後の事をつい考えてしまうからだ。

(……綺麗で、……いたいし……)

 言い訳するように心の中で呟いた私は、誰にも何も言われていないのに赤面し、パタパタと手で顔を扇ぐ。

「こちらは総レースなのですが、こう見えてホールド力がかなりあるんですよ」

 担当さんが見せてきたのは、スッケスケの総レースのブラで、普通のブラみたいにカップがしっかりしていない。

「えぇー? ……またまたぁ……」

 私は素で言ってしまったけれど、テレビショッピングの〝フリ〟を作ってしまったなと感じた。

「お着けになってみますか?」

「……つ、つけるだけ……」

 新たな発見を得た私は、興味本位で頷き、彼女が後ろを向いている間に新しいブラジャーを着ける。

 そしてまたグイッ! グイッ! とされると、さっきのブラよりは補正度は低いものの、確かにしっかり支えて魅力的な谷間ができているのを見て、すっかり感心してしまった。

「……これはこれで……」

 硬めのカップがない分、胸元に触れるとフニュッと潰れる感があり、ちょっとエッチだ。

(…………い、……いいじゃん……)

 心の中で誰にともなくデレた私は、コソコソと担当さんに聞いた。

「これっておいくらするんですか? 自腹で買います」

 下着まで涼さんに買ってもらったら申し訳ないと思って聞いたけれど、結構なお値段で「フゥン?」と流行のうさぎのキャラクターみたいな声が出てしまった。





 そのあと、ある程度下着のフィッティングをしてリビングダイニングに戻ると、涼さんは他の担当さんと話し込んでいた。

 けれど私を見てパッと表情を輝かせると、「どうだった?」と尋ねてくる。

 ……いや、下着の感想を聞かれても困るんですけど……。

 モゴモゴしていると、下着の担当さんが「お気に入りの物ができたご様子です」とにこやかに答えた。

「そう、良かった。『谷間』って叫び声が聞こえてきたけど、サイズの変化でもあった?」

 やっぱり答えづらい事を聞かれて、またモゴモゴしていると、彼は一人で納得して言った。

「じゃあ、恵ちゃんに合いそうなサイズの、全部お願いします」

「かしこまりました」

 そのあとも、私が不在の間に見当をつけていたイエベ秋に似合いそうな服を見せられて、好きか嫌いかを尋ねられ、ブランドバッグも見せられた。

 そんな高価な物は持てないと断ったんだけれど、パーティー用の小さい物からトートバッグぐらいの大きさ、はたまたスーツケースまで「これ、良さそうだね」のノリで決められてしまう。

 帽子やサングラス、靴も「これ、いいんじゃない?」で決められ、サイズに問題がなかった場合は〝決まり〟になる。

 いつの間にか窓の外が暗くなってビルの灯りが点く頃には、信じられない事に千五百万円ぐらいの買い物が終わっていた。
しおりを挟む
感想 2,514

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

(完)そんなに妹が大事なの?と彼に言おうとしたら・・・

青空一夏
恋愛
デートのたびに、病弱な妹を優先する彼に文句を言おうとしたけれど・・・

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...