【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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不穏 編

乱闘

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 慎重に地下に続く階段を下りていくと、防音ドアの向こうから朱里の声がした。

 ドクンッと心臓が高鳴り、全身がざわつく。

 だが急いては事をし損じると思い、そっとドアを開けて中の様子を窺った。

 敵は四人。今のところ武器をチラつかせている様子はない。

 外敵を警戒する気配もないし、素人だ。

 安心してから朱里の様子を見ると、パイプ椅子に縛り付けられている以外は、特に痛めつけられた様子はない。

 だが誘拐された時にどんな目に遭ったかは分からないので、後方から見ただけですべてを判断するのは早計だ。

 あと少しで警察が到着するはずだが、どんなタイミングで出たものか……と思っていた時、ガシャンッ! と大きな音を立てて朱里が横に倒れた。

(~~~~っ、この野郎!)

 カッとなった俺は覚悟を決めて腕を振り下ろし、警棒を伸ばした。

「お前、自分の置かれている状況が分かってるのかよ。今すぐひんむいて輪姦まわしてもいいんだぞ」

 荒んだ表情で言っているのは田村だ。

 確かにあいつを陥れるために裏で糸を引いたが、まさかこんな事になるとは思わなかった。朱里にも中村さんにも、あとできちんと詫びなければ。

「……助けて……、尊さん……」

 朱里が今にも泣きそうな声でうめき、それを田村がせせら笑う。

「そう簡単に助けがくるわけがないだろ。いい加減諦めろ。あんなクソ男」

 俺は正面から戦う決意をし、ドアを開けるとゆっくりと彼らに歩み寄っていった。

「助けてほしい時に現れるから、ヒーローなんじゃないか? 三下クン」

「……っ、お前……っ! おいっ、お前らっ!」

 田村はギョッとした顔をして立ちあがり、男達に合図を送る。

 何より、いきなり現れた俺が武器を手にしている事に驚き、怯んでいるようだった。

「朱里、怖い想いをさせてすまなかった。今助ける。すぐ終わるから、もう少しそのままでいてくれ」

「~~~~っ、はいっ」

 涙で崩れた朱里の声を聞き、俺はゆっくりと息を吸うと全身に神経を行き渡らせ、いつでも戦えるよう軽く脚を開く。

「やっちまえ!」

 田村が声を上げ、チンピラ風の三人の男が襲いかかってくる。

(顔と肘から下は狙うな。太腿、胴、背中)

 俺はゆっくりと深呼吸し、左手を右肩に当て、右手に持った警棒を振りかぶる。

 警棒は親指と人差し指で挟み、残る三本の指は、振り下ろす時に握り込んで反動をつけるので、軽く開いておく。

「っらぁ!」

 そして一人目の男のパンチをかわし、その手を左手で払いつつ、胴に警棒を振り下ろした。

「いてぇっ!」

 怖じ気づいて途中で止めれば、威力が半減する。

 だから警棒の先が背中につくほど振りかぶってから、思いきりスイングして男を打った。

 よろけた相手を蹴り飛ばしたあと次の男の拳を身を屈めてかわし、両手で警棒の端を持つと、相手の肋骨に当たるようにガンッと押しつける。

「うわっ!」

 と、背後から胴を抱え上げられ、とっさに後ろに向かって頭突きをした。

 そして相手が怯んだところで、両手を床について後方に向けて両脚でキックをする。

「げふっ」

 床に倒れた男達が痛みにうめく中、俺は乱れた髪を掻き上げて乱暴に息を吐き、警棒を握り直して田村を睨む。

「くっ……、来るなっ!」

 こいつ自信は戦う意志がなかったのか、殺気に満ちた俺の視線を受けただけで、顔色をなくしている。

 ――が、ギラギラとした目で俺を睨むと、朱里の頭の上で足を上げた。

「――――っ! 女に手を上げんじゃねぇよ!」

 カッとして怒鳴ったあと、俺は助走を付けてジャンプし、田村に思いきり回し蹴りを食らわせた。

「ぎゃっ!」

 田村が悲鳴を上げて吹っ飛んだ時、サイレンの音が間近に迫り、ライブハウスの中に警官が突入してきた。

 安堵した俺は溜め息をつき、警棒を収納してポケットに入れる。

 あとは警察に任せ、朱里を縛めていた粘着テープを万能ナイフで切っていった。

「尊さん……」

 頬を腫らした朱里を見て、この上ない無力感と罪悪感、怒りと悲しみが沸き起こる。

「……抱っこして」

「ああ」

 だが怯えて震えている朱里を抱き締めると、彼女を無事救い出せたと思えて安心感も得た。
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