【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
488 / 778
不穏 編

今助ける

しおりを挟む
「……なぁ、愛してるんだよ」

 嘘ばっかり。こいつは私の事を愛してなんかいない。

 私を攫うにあたっても、恵を襲ってスマホを手に入れて……と、女性を襲う卑怯な手段ばかり。

「安心して。あんたの事はもう一生好きにならないから」

 煽ったら駄目だと分かっていても、どうしても恵を襲った事だけは許せなかった。

 反抗しても既知の仲だし、そう酷い事はされないのでは……という慢心があったと思う。

 けれど――。

 バンッ! と凄まじい衝撃があったかと思うと、私は椅子ごと真横にひっくり返っていた。

(いったぁ……!)

 手を使えない状態で倒れたので、まともに体の右側面をぶつけてしまった上、いきなりだったので恐怖と驚きとでドキドキしている。

 幸いだったのは、肩や腕を犠牲にしたので頭をぶつけずに済んだ事だ。

「お前、自分の置かれている状況が分かってるのかよ。今すぐひんむいて輪姦(まわ)してもいいんだぞ」

 昭人は私の前に立ちはだかり、つま先で顎を軽く蹴ってくる。

「う……っ、く……っ」

 本当は「あんた達なんて尊さんがやっつけてくれるんだから!」と言い返したい。

 けれど不意打ちで暴力を受けた私は、それに心を折られかけ、歯を食いしばって泣かないようにするので精一杯だった。

 叩かれたぐらいで泣いてしまいそうになる自分が、あまりに弱くて嫌だ。

 私のせいで恵を危ない目に遭わせ、尊さんにも心配をかけた上、こんなところで昭人なんかに好き放題されている。

 そんな自分が情けなくて堪らない。

 大切な人に迷惑をかけてしまうなんて、最低だ。

 ――でも、こんな時だからこそ求めてしまう。

「……助けて……、尊さん……」

 昭人は弱々しくうめいた私の前にしゃがみ、せせら笑う。

「そう簡単に助けがくるわけがないだろ。いい加減諦めろ。あんなクソ男」

 その時――。

「助けてほしい時に現れるから、ヒーローなんじゃないか? 三下クン」

 皮肉っぽい声がし、私はハッとして目を見開く。

 後方を見たかったけれど、自由の利かない体では叶わない。

「……っ、お前……っ!」

 立ちあがった昭人は〝彼〟に向かって敵意を放ち、「おいっ、お前らっ」と仲間たちに声を掛ける。

「朱里、怖い想いをさせてすまなかった。今助ける。すぐ終わるから、もう少しそのままでいてくれ」

 聞きたくて堪らなかった声を聞き、私は堪えていたはずの涙をボロッと流した。

「~~~~っ、はいっ」

 ――この人がこう言ってくれるなら、信じられる。

 ――もう、これ以上一人で怖い想いをしなくていいんだ。

 気が緩んだ私は、顔をクシャクシャにして泣き、彼が解放してくれる時を待った。





 俺は『YOU』とスマホのマップアプリを連携した上で、ブルートゥースでカーナビにも連携し、朱里の居場所を目的地にして車を走らせ続けた。

 スマホの一台では、こちらの音声が聞こえないようにミュートにした上で、朱里の身に何が起こっているか、音量を大きくして電話を聞き続けた。

 いっぽうでもう一台のスマホでは涼から連絡を受けた警察のチームと電話を繋ぎ、自分が向かっている場所を伝えながら、朱里の電話を共有した。

 幸いだったのは、目的地がそう離れた場所ではなく、都内某所にある雑居ビルだった事だ。

 相手に気づかれないように少し離れた場所に車を停めた俺は、なるべく足音を立てないようにスニーカーを履いた足を忍ばせ、出入り口に近付いて行く。

 手は警棒に添え、建物の中を窺う。

 これから乱闘すると思うと、心底先に涼に連絡しておいて良かったと感じた。

 警棒もスタンガンも銃刀法違反にはならないが、持ち歩きについては軽犯罪法に触れる場合もある。

 今回の場合、朱里を助けるためという明確な理由があるが、警察は「一般人は黙って110番して自分たちの助けを待て」と言うだろう。

 だがそうもいかないからこうして武器を持って出かけたのだ。

 相手も荒っぽい事をする以上、小型のナイフぐらいは持っていると想定している。

 いくらなんでも素手対ナイフでは分が悪すぎるので、武装した上で涼が口利きした警官に見逃してもらう算段だ。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

半日だけの…。貴方が私を忘れても

アズやっこ
恋愛
貴方が私を忘れても私が貴方の分まで覚えてる。 今の貴方が私を愛していなくても、 騎士ではなくても、 足が動かなくて車椅子生活になっても、 騎士だった貴方の姿を、 優しい貴方を、 私を愛してくれた事を、 例え貴方が記憶を失っても私だけは覚えてる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるゆる設定です。  ❈ 男性は記憶がなくなり忘れます。  ❈ 車椅子生活です。

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

処理中です...