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四人でのお泊まり会 編
アップデートしながら
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「……思いだしても大丈夫?」
恵に尋ねられ、私はクシャリと笑う。
「……んー、なんかさ、切腹みたいな感じじゃないの。覚悟を決めてえいやっ! じゃない。私の意志にかかわらず、ある時突然『あ』って思い出すもんなんだと思う」
「……そうだね。……っていうか切腹って」
シリアスながらも突っ込まれ、私は小さく笑う。
「忘れて自分を守ろうとするほどの事だから、思いだしたらきっと動揺するかもしれない。……でも側にはいつも尊さんがいてくれるし、恵や皆もいる。落ち込んだら焼き肉とラーメン付き合ってもらうし、沢山飲む」
「……あんたのそういう逞しいところ、大好きだよ」
「えへへ」
褒められた私は照れ笑いする。
「まー、『怖い何かが起こった時、どうしよう……』って考えるより、『何かが起こった時はこうしてもらおう』って、先に周りの人にヘルプを求めておくほうが、確実なのかも」
「そうかもね。朱里は篠宮さんに会うまで、割となんでも一人で抱え込みがちだったけど、今はうまく周りを使っていると思う」
「ちょっとずつアップデートしてます。アカリ26.4……とか?」
「ふふっ、いーんじゃない? 私もとことん朱里に付き合っていく。私も一緒にアップデートしながらね」
「恵と一緒ならコワクナーイ!」
「コワクナーイ!」
笑い合ったあと、私たちはお風呂から上がった。
体を拭いたあと、私は恵に色々レクチャーしながらフェイスケア、ボディケア、ヘアケアをしていく。
今までもアドバイスはしていたけれど、心境の変化があった恵は真面目に聞いていた。
「しかし朱里のモチモチお肌の秘訣は、なかなか面倒臭いね」
「面倒なんだけどね~。やっぱり何事も手を掛けたほうが、あとで結果が出るのかもしれない。日焼け止めとかもね」
学生時代から日焼け止めだけはしっかり塗っていたので、今も割と肌は白いほうだと思っている。
真夏に真っ黒なアームカバーにフェイスカバー、サンバイザー! まではいかないけど、日傘も使っているし、アームカバーも重宝している。
そして三十路に近付いていくにつれ、アイシャドウやリップなどの色物コスメを使ったメイク方法より、如何に肌を大切にすべきかを重視するようになった。
ネットを見れば人生の先輩たちが色々とアドバイスを書いていてくれて、人それぞれのやり方があるから、全部をお手本にするつもりはないけれど、とりあえず目を通して情報を得てはいる。
「それだけ努力を重ねられるのは凄いよ。他部署の女で、美人な芸能人のアンチがいるけど、そういう人はきっと水面下で美のために努力している事を知らないんだろうね。……ちょっと考えれば分かる事だけど、嫌いな人には嫌な人であってほしいから、地道な努力をしているとか思いたくないんだろうな」
「そういうのはあるかもね。尊さんも『速水部長はナチュラルにイケメンだからいいですよね』ってよく言われていたみたいだけど、頭がいいのだって、身なりを整えているのだって、体型をキープしてるのだって、何もしていないわけじゃないのに」
私はドライヤーをかけ終えた髪をフワフワと確かめ、少し唇を尖らせて言う。
「ま、篠宮さんの場合、自分が心を許している人にだけ分かってもらえていたら、他はあまり気にしてなさそうだけどね」
「かも! 私は強火の速水部長オタクなので、全力で推しを支えていかないと!」
私は両手に化粧水と美容液を持ち、サイリウムのように左右に振る。
「よく言うよ。『部長なんて大嫌い』って言ってたくせに」
恵はケラケラ笑い、「お言葉に甘えて水飲もうか」と、洗面所にある冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを二本出し、一本を私に手渡してくる。
そのあと、私たちは洗面所から出て廊下をペタペタ歩き、リビングダイニングに向かった。
(尊さんと涼さんもお風呂に入ったのかな)
そう思いながらだだっ広いリビングダイニングに入り、「ん?」と目を瞬かせた。
涼さんはお風呂に入っているのかそこにはおらず、尊さんは……、なぜかテーブルの上にトランプを三角形に積み上げるタワーを作っていて、めっちゃ真剣な顔をしている。
「……何やってるんだろ。側でくしゃみしてやろうかな」
恵がボソッと言い、私は「まぁまぁ」と彼女を制する。
「真剣ミコもまた乙なもの」
そう言った私は、スマホで彼の真剣な顔を写真に収めた。
「尊さん、何やってるんですか?」
彼を驚かせないように遠くから声を掛けると、尊さんは「ああ」と返事をしてから、微妙な顔で笑う。
「実につまんねー事なんだが、涼と明日の朝飯について話していて、俺がタワーを完成させられたら和食になった」
「つまんなっ」
恵がとっさに突っ込む。
恵に尋ねられ、私はクシャリと笑う。
「……んー、なんかさ、切腹みたいな感じじゃないの。覚悟を決めてえいやっ! じゃない。私の意志にかかわらず、ある時突然『あ』って思い出すもんなんだと思う」
「……そうだね。……っていうか切腹って」
シリアスながらも突っ込まれ、私は小さく笑う。
「忘れて自分を守ろうとするほどの事だから、思いだしたらきっと動揺するかもしれない。……でも側にはいつも尊さんがいてくれるし、恵や皆もいる。落ち込んだら焼き肉とラーメン付き合ってもらうし、沢山飲む」
「……あんたのそういう逞しいところ、大好きだよ」
「えへへ」
褒められた私は照れ笑いする。
「まー、『怖い何かが起こった時、どうしよう……』って考えるより、『何かが起こった時はこうしてもらおう』って、先に周りの人にヘルプを求めておくほうが、確実なのかも」
「そうかもね。朱里は篠宮さんに会うまで、割となんでも一人で抱え込みがちだったけど、今はうまく周りを使っていると思う」
「ちょっとずつアップデートしてます。アカリ26.4……とか?」
「ふふっ、いーんじゃない? 私もとことん朱里に付き合っていく。私も一緒にアップデートしながらね」
「恵と一緒ならコワクナーイ!」
「コワクナーイ!」
笑い合ったあと、私たちはお風呂から上がった。
体を拭いたあと、私は恵に色々レクチャーしながらフェイスケア、ボディケア、ヘアケアをしていく。
今までもアドバイスはしていたけれど、心境の変化があった恵は真面目に聞いていた。
「しかし朱里のモチモチお肌の秘訣は、なかなか面倒臭いね」
「面倒なんだけどね~。やっぱり何事も手を掛けたほうが、あとで結果が出るのかもしれない。日焼け止めとかもね」
学生時代から日焼け止めだけはしっかり塗っていたので、今も割と肌は白いほうだと思っている。
真夏に真っ黒なアームカバーにフェイスカバー、サンバイザー! まではいかないけど、日傘も使っているし、アームカバーも重宝している。
そして三十路に近付いていくにつれ、アイシャドウやリップなどの色物コスメを使ったメイク方法より、如何に肌を大切にすべきかを重視するようになった。
ネットを見れば人生の先輩たちが色々とアドバイスを書いていてくれて、人それぞれのやり方があるから、全部をお手本にするつもりはないけれど、とりあえず目を通して情報を得てはいる。
「それだけ努力を重ねられるのは凄いよ。他部署の女で、美人な芸能人のアンチがいるけど、そういう人はきっと水面下で美のために努力している事を知らないんだろうね。……ちょっと考えれば分かる事だけど、嫌いな人には嫌な人であってほしいから、地道な努力をしているとか思いたくないんだろうな」
「そういうのはあるかもね。尊さんも『速水部長はナチュラルにイケメンだからいいですよね』ってよく言われていたみたいだけど、頭がいいのだって、身なりを整えているのだって、体型をキープしてるのだって、何もしていないわけじゃないのに」
私はドライヤーをかけ終えた髪をフワフワと確かめ、少し唇を尖らせて言う。
「ま、篠宮さんの場合、自分が心を許している人にだけ分かってもらえていたら、他はあまり気にしてなさそうだけどね」
「かも! 私は強火の速水部長オタクなので、全力で推しを支えていかないと!」
私は両手に化粧水と美容液を持ち、サイリウムのように左右に振る。
「よく言うよ。『部長なんて大嫌い』って言ってたくせに」
恵はケラケラ笑い、「お言葉に甘えて水飲もうか」と、洗面所にある冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを二本出し、一本を私に手渡してくる。
そのあと、私たちは洗面所から出て廊下をペタペタ歩き、リビングダイニングに向かった。
(尊さんと涼さんもお風呂に入ったのかな)
そう思いながらだだっ広いリビングダイニングに入り、「ん?」と目を瞬かせた。
涼さんはお風呂に入っているのかそこにはおらず、尊さんは……、なぜかテーブルの上にトランプを三角形に積み上げるタワーを作っていて、めっちゃ真剣な顔をしている。
「……何やってるんだろ。側でくしゃみしてやろうかな」
恵がボソッと言い、私は「まぁまぁ」と彼女を制する。
「真剣ミコもまた乙なもの」
そう言った私は、スマホで彼の真剣な顔を写真に収めた。
「尊さん、何やってるんですか?」
彼を驚かせないように遠くから声を掛けると、尊さんは「ああ」と返事をしてから、微妙な顔で笑う。
「実につまんねー事なんだが、涼と明日の朝飯について話していて、俺がタワーを完成させられたら和食になった」
「つまんなっ」
恵がとっさに突っ込む。
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