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夜のお出かけ 編
食の喜び
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「あとは任せてくれ。朱里のミッションは、これから餃子を美味しく食べる事」
これまでの雰囲気を払拭するような、冗談めかした明るい言い方に、私は思わず笑みを零した。
「はいっ! それは大得意です!」
宇都宮まで尊さんとたわいのない話をし、人気店で行列に並んでから食べる餃子はこの上なく美味しかった。
餃子の中には数個食べただけで、もたれはしないけど満腹になる物があるけれど、ここの餃子は「空気か!」というほどあっさりとした味わいだ。
大きめなのに野菜が多めでパクパク食べられるので、私は大盛りご飯を片手に、焼き餃子も水餃子も、揚げ餃子も余す事なく美味しく食べた。
美味しい! しかも安い!
「食いっぷりが良くて惚れ直すわ……」
尊さんは焼き餃子と水餃子のセットを頼んでいて、彼こそ結構食べている。
「この餃子はあっさりだからカロリーゼロですが、食べた事実は残るのでキスはなしです」
「……なるほど」
彼は視線を逸らして呟いたあと、「ま、美味そうに食ってるからいいか」と再び食べ始めた。
私はそんな尊さんをチラ見して、ニヤつくのを必死に抑える。
いつも彼と外食をすると高級なお店に行く事が多いけれど、勿論、私も尊さんもどんな料理だって大好きだ。
こうやって庶民派なお店で尊さんとご飯を食べるのも嬉しく、彼が綺麗な食べ方ながらも、大きな口を開けてパクパク食べているのを見ると嬉しくなってしまう。
「たんとお食べ」なんてお母さんみたいだけど、尊さんが食事をしているところを見ると嬉しくて堪らない。
私は中学生頃、父を喪ったショックでほぼ物を食べられずにいた。
だからこそ今は食の喜びに人一倍敏感な気がする。
死んでしまう事に比べれば、食べて太るなんてどうって事はない。
沢山食べて栄養をつけて、大好きな人と「美味しかったね」と言い合って、明日を生きる活力にする。
だから私は食事が大好きだ。
体型を気にして食べたい物を我慢するぐらいなら、食べてから運動したい。
男性の前でだって「そんなに食べられな~い」なんて事は言わない。
父の分も、さゆりさんとあかりちゃんの分も、私と尊さんが美味しい物を沢山食べるんだ。
「おいふぃーれふね!」
「ん」
私は餃子を頬張りながら尊さんに笑いかけ、お箸で白米をとり、あむっと食べた。
**
「んー……、お腹一杯……」
「たんと食べたもんな」
帰り道、私はお腹一杯なのと、昼間外出したのも相まって、若干の疲れを覚えてウトウトする。
「眠たいなら寝な。着いたら起こすから」
「餃子戦隊ギョウザリオンのレッドなので、起きてます」
「なんだそりゃ。……じゃあ、俺はブラックかな」
「ラー油ビームかましますよ」
「敵はチャーハンか」
「んふふふ……。私は今回宇都宮餃子に味方をしたので、倒すのは浜松餃子です」
「おい……。聞く人が聞いたら戦争が起こる話はやめろよ……」
「ひひひ。きのことたけのこより、いいじゃないですか」
「あれはラグナロクだからな……」
私は何気ない会話をして笑いながら、口の匂いを気にしてお茶を飲む。
「今日は自分の部屋で寝ますね」
「なんでだよ」
「だって……、にんにくがエントリーしたので」
「俺だってエントリーして、胃の中で『御社ー!』って言ってるよ」
「弊社の胃はある程度強力だと自負しておりますが、匂いばかりは……」
「二人で寝れば怖くないだろ。餃子ごときで遠慮するなよ。結婚したあとどうするんだよ」
「…………乙女でいたいし……」
ぶすっとして答えると、尊さんは前を向いたままワシャワシャと頭を撫でてくる。
「朱里はドリアン食っても乙女だよ」
「くさや食べてやる」
「一緒にシュールストレミングいってやんよ」
「ふひひひ……」
私はクピクピとお茶を飲みつつ笑う。
これまでの雰囲気を払拭するような、冗談めかした明るい言い方に、私は思わず笑みを零した。
「はいっ! それは大得意です!」
宇都宮まで尊さんとたわいのない話をし、人気店で行列に並んでから食べる餃子はこの上なく美味しかった。
餃子の中には数個食べただけで、もたれはしないけど満腹になる物があるけれど、ここの餃子は「空気か!」というほどあっさりとした味わいだ。
大きめなのに野菜が多めでパクパク食べられるので、私は大盛りご飯を片手に、焼き餃子も水餃子も、揚げ餃子も余す事なく美味しく食べた。
美味しい! しかも安い!
「食いっぷりが良くて惚れ直すわ……」
尊さんは焼き餃子と水餃子のセットを頼んでいて、彼こそ結構食べている。
「この餃子はあっさりだからカロリーゼロですが、食べた事実は残るのでキスはなしです」
「……なるほど」
彼は視線を逸らして呟いたあと、「ま、美味そうに食ってるからいいか」と再び食べ始めた。
私はそんな尊さんをチラ見して、ニヤつくのを必死に抑える。
いつも彼と外食をすると高級なお店に行く事が多いけれど、勿論、私も尊さんもどんな料理だって大好きだ。
こうやって庶民派なお店で尊さんとご飯を食べるのも嬉しく、彼が綺麗な食べ方ながらも、大きな口を開けてパクパク食べているのを見ると嬉しくなってしまう。
「たんとお食べ」なんてお母さんみたいだけど、尊さんが食事をしているところを見ると嬉しくて堪らない。
私は中学生頃、父を喪ったショックでほぼ物を食べられずにいた。
だからこそ今は食の喜びに人一倍敏感な気がする。
死んでしまう事に比べれば、食べて太るなんてどうって事はない。
沢山食べて栄養をつけて、大好きな人と「美味しかったね」と言い合って、明日を生きる活力にする。
だから私は食事が大好きだ。
体型を気にして食べたい物を我慢するぐらいなら、食べてから運動したい。
男性の前でだって「そんなに食べられな~い」なんて事は言わない。
父の分も、さゆりさんとあかりちゃんの分も、私と尊さんが美味しい物を沢山食べるんだ。
「おいふぃーれふね!」
「ん」
私は餃子を頬張りながら尊さんに笑いかけ、お箸で白米をとり、あむっと食べた。
**
「んー……、お腹一杯……」
「たんと食べたもんな」
帰り道、私はお腹一杯なのと、昼間外出したのも相まって、若干の疲れを覚えてウトウトする。
「眠たいなら寝な。着いたら起こすから」
「餃子戦隊ギョウザリオンのレッドなので、起きてます」
「なんだそりゃ。……じゃあ、俺はブラックかな」
「ラー油ビームかましますよ」
「敵はチャーハンか」
「んふふふ……。私は今回宇都宮餃子に味方をしたので、倒すのは浜松餃子です」
「おい……。聞く人が聞いたら戦争が起こる話はやめろよ……」
「ひひひ。きのことたけのこより、いいじゃないですか」
「あれはラグナロクだからな……」
私は何気ない会話をして笑いながら、口の匂いを気にしてお茶を飲む。
「今日は自分の部屋で寝ますね」
「なんでだよ」
「だって……、にんにくがエントリーしたので」
「俺だってエントリーして、胃の中で『御社ー!』って言ってるよ」
「弊社の胃はある程度強力だと自負しておりますが、匂いばかりは……」
「二人で寝れば怖くないだろ。餃子ごときで遠慮するなよ。結婚したあとどうするんだよ」
「…………乙女でいたいし……」
ぶすっとして答えると、尊さんは前を向いたままワシャワシャと頭を撫でてくる。
「朱里はドリアン食っても乙女だよ」
「くさや食べてやる」
「一緒にシュールストレミングいってやんよ」
「ふひひひ……」
私はクピクピとお茶を飲みつつ笑う。
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