【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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イベントを終えて 編

決して振り向いてはなりません

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「最高の癒し効果がありそうだな」

「百二十分、触り放題」

「ビュッフェ形式じゃねぇか。元はとれるのか?」

「それは尊さん次第ですよ?」

 軽口を叩いた私たちは笑い合う。

「一緒に風呂に入ったあと、飯にするか」

「そうですね」

 お腹が空いているといえば空いてるけど、今はこのまま尊さんとイチャイチャしたい気分だ。

 町田さんはもう帰宅しているけれど、冷蔵庫の中には作り置きのおかずがあるから、温めたらすぐ食べられるはずだ。

「町田さんが風呂入れてくれてるはずだから、先にメイク落としてきな」

「分かりました」

 尊さんは起き上がったあと、私の腕を引いて立たせてくれる。

 そのあと私は部屋で着替えをし、洗面所で丁寧にメイク落としをする。

 尊さんも家着に着替えたあと、「先入ってるぞ」と言って私の後ろで服を脱ぎ、サッとバスルームに入った。





 私がバスルームに入った頃、尊さんはすでに体と髪を洗い終えてお湯に浸かっていた。

 洗っている所を見られるのは恥ずかしいと分かっているからか、彼は壁際を向いてくれている。物分かりのいいミコだ。

「決して振り向いてはなりません」

 体を洗いながら言うと、彼は小さく噴き出して笑う。

「振り向いたら鶴が体を洗ってるパターンじゃねぇか。飛んでかれたらやだから、振り向かないよ」

「ギッコン、バッタン」

「やめろ」

 尊さんはお湯をチャプチャプ波立たせて笑う。

「振り向いたら、あなたの婚約者は黄泉の世界に連れ戻されます」

「それは絶対振り向かない奴だな。っていうか、まだ死んでないんだから、黄泉の世界にやるつもりはねぇよ。どんなに美味しそうでも、あっちのもんを食ったら駄目だからな。こっちの世界の美味いもんを、たらふく食え」

「んふふ、言われなくても」

 最後にトリートメントを流して髪をクリップで留めると、私はかけ湯をしてからバスタブに入った。

「こっちを見ても石になりませんよ」

「今度はメデューサ設定か」

 尊さんは笑って言ってから両手で顔を覆い、私のほうを向く。

 彼の意図を察した私は、尊さんが指の隙間からこちらを見る前に、思いきり顔を寄せた。

 尊さんが指を開いてその隙間から私を見た瞬間――。

「近いって!」

 彼は声を上げて笑い、私を抱き締めてくる。

「●ゅーるを前にした、キラキラ目の猫みたいだな」

 言われた私は、ペロペロと彼の頬を舐め始める。

「こらこら」

 尊さんは正面から私を抱き、膝の上にのせる。

「んふふ」

 私はギューッと尊さんを抱き締め、頬ずりをする。

「どした? 今日はやけに甘ったれだな」

 尊さんは私のこめかみにチュッとキスをし、耳元で囁いてくる。

「……んー……、六月のイベントが終わったら、七月のイベントの事を考えないと」

 そう言うと、尊さんは広島行きを思い出して「ああ……」と頷く。

「心配か?」

 彼はまた以前と同じ事を尋ね、私は小さく首を横に振る。

「尊さんが宮本さんに気持ちを戻すかとか、彼女の想いがまた再熱するんじゃないか……って心配はしてない。……でも、お互い複雑な気持ちを持っているだろうから、どうなるのかな? って」

「まぁ、ずっと勘違いした者同士、十年ぶりに会うんだから不安になるよな」

 尊さんは私の背中を撫で、肩に顎を置く。

「……きっとうまくやれるから、見守っててくれよ」

「はい。終わったら皆でお好み焼きかなぁ……。本場の食べてみたかった」

「東京出る直前に、大阪お好み焼きを食べてから行くとか言うなよ?」

「はっ、その手があった……」

 わざとらしく言うと、尊さんはクシャッと笑う。

「三百六十五日、食いしん坊なお前が愛しいよ」

「私に食欲がなくなった時は、世界が終わる時ですよ」

 冗談めかして言うと、尊さんはスッと真顔になった。

「……意外と洒落にならないな……。本当に隕石でも落ちたりして」

「もー!」

 ペチンと彼の胸板を叩くと、彼は快活に笑った。
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