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イベントを終えて 編
決して振り向いてはなりません
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「最高の癒し効果がありそうだな」
「百二十分、触り放題」
「ビュッフェ形式じゃねぇか。元はとれるのか?」
「それは尊さん次第ですよ?」
軽口を叩いた私たちは笑い合う。
「一緒に風呂に入ったあと、飯にするか」
「そうですね」
お腹が空いているといえば空いてるけど、今はこのまま尊さんとイチャイチャしたい気分だ。
町田さんはもう帰宅しているけれど、冷蔵庫の中には作り置きのおかずがあるから、温めたらすぐ食べられるはずだ。
「町田さんが風呂入れてくれてるはずだから、先にメイク落としてきな」
「分かりました」
尊さんは起き上がったあと、私の腕を引いて立たせてくれる。
そのあと私は部屋で着替えをし、洗面所で丁寧にメイク落としをする。
尊さんも家着に着替えたあと、「先入ってるぞ」と言って私の後ろで服を脱ぎ、サッとバスルームに入った。
私がバスルームに入った頃、尊さんはすでに体と髪を洗い終えてお湯に浸かっていた。
洗っている所を見られるのは恥ずかしいと分かっているからか、彼は壁際を向いてくれている。物分かりのいいミコだ。
「決して振り向いてはなりません」
体を洗いながら言うと、彼は小さく噴き出して笑う。
「振り向いたら鶴が体を洗ってるパターンじゃねぇか。飛んでかれたらやだから、振り向かないよ」
「ギッコン、バッタン」
「やめろ」
尊さんはお湯をチャプチャプ波立たせて笑う。
「振り向いたら、あなたの婚約者は黄泉の世界に連れ戻されます」
「それは絶対振り向かない奴だな。っていうか、まだ死んでないんだから、黄泉の世界にやるつもりはねぇよ。どんなに美味しそうでも、あっちのもんを食ったら駄目だからな。こっちの世界の美味いもんを、たらふく食え」
「んふふ、言われなくても」
最後にトリートメントを流して髪をクリップで留めると、私はかけ湯をしてからバスタブに入った。
「こっちを見ても石になりませんよ」
「今度はメデューサ設定か」
尊さんは笑って言ってから両手で顔を覆い、私のほうを向く。
彼の意図を察した私は、尊さんが指の隙間からこちらを見る前に、思いきり顔を寄せた。
尊さんが指を開いてその隙間から私を見た瞬間――。
「近いって!」
彼は声を上げて笑い、私を抱き締めてくる。
「●ゅーるを前にした、キラキラ目の猫みたいだな」
言われた私は、ペロペロと彼の頬を舐め始める。
「こらこら」
尊さんは正面から私を抱き、膝の上にのせる。
「んふふ」
私はギューッと尊さんを抱き締め、頬ずりをする。
「どした? 今日はやけに甘ったれだな」
尊さんは私のこめかみにチュッとキスをし、耳元で囁いてくる。
「……んー……、六月のイベントが終わったら、七月のイベントの事を考えないと」
そう言うと、尊さんは広島行きを思い出して「ああ……」と頷く。
「心配か?」
彼はまた以前と同じ事を尋ね、私は小さく首を横に振る。
「尊さんが宮本さんに気持ちを戻すかとか、彼女の想いがまた再熱するんじゃないか……って心配はしてない。……でも、お互い複雑な気持ちを持っているだろうから、どうなるのかな? って」
「まぁ、ずっと勘違いした者同士、十年ぶりに会うんだから不安になるよな」
尊さんは私の背中を撫で、肩に顎を置く。
「……きっとうまくやれるから、見守っててくれよ」
「はい。終わったら皆でお好み焼きかなぁ……。本場の食べてみたかった」
「東京出る直前に、大阪お好み焼きを食べてから行くとか言うなよ?」
「はっ、その手があった……」
わざとらしく言うと、尊さんはクシャッと笑う。
「三百六十五日、食いしん坊なお前が愛しいよ」
「私に食欲がなくなった時は、世界が終わる時ですよ」
冗談めかして言うと、尊さんはスッと真顔になった。
「……意外と洒落にならないな……。本当に隕石でも落ちたりして」
「もー!」
ペチンと彼の胸板を叩くと、彼は快活に笑った。
「百二十分、触り放題」
「ビュッフェ形式じゃねぇか。元はとれるのか?」
「それは尊さん次第ですよ?」
軽口を叩いた私たちは笑い合う。
「一緒に風呂に入ったあと、飯にするか」
「そうですね」
お腹が空いているといえば空いてるけど、今はこのまま尊さんとイチャイチャしたい気分だ。
町田さんはもう帰宅しているけれど、冷蔵庫の中には作り置きのおかずがあるから、温めたらすぐ食べられるはずだ。
「町田さんが風呂入れてくれてるはずだから、先にメイク落としてきな」
「分かりました」
尊さんは起き上がったあと、私の腕を引いて立たせてくれる。
そのあと私は部屋で着替えをし、洗面所で丁寧にメイク落としをする。
尊さんも家着に着替えたあと、「先入ってるぞ」と言って私の後ろで服を脱ぎ、サッとバスルームに入った。
私がバスルームに入った頃、尊さんはすでに体と髪を洗い終えてお湯に浸かっていた。
洗っている所を見られるのは恥ずかしいと分かっているからか、彼は壁際を向いてくれている。物分かりのいいミコだ。
「決して振り向いてはなりません」
体を洗いながら言うと、彼は小さく噴き出して笑う。
「振り向いたら鶴が体を洗ってるパターンじゃねぇか。飛んでかれたらやだから、振り向かないよ」
「ギッコン、バッタン」
「やめろ」
尊さんはお湯をチャプチャプ波立たせて笑う。
「振り向いたら、あなたの婚約者は黄泉の世界に連れ戻されます」
「それは絶対振り向かない奴だな。っていうか、まだ死んでないんだから、黄泉の世界にやるつもりはねぇよ。どんなに美味しそうでも、あっちのもんを食ったら駄目だからな。こっちの世界の美味いもんを、たらふく食え」
「んふふ、言われなくても」
最後にトリートメントを流して髪をクリップで留めると、私はかけ湯をしてからバスタブに入った。
「こっちを見ても石になりませんよ」
「今度はメデューサ設定か」
尊さんは笑って言ってから両手で顔を覆い、私のほうを向く。
彼の意図を察した私は、尊さんが指の隙間からこちらを見る前に、思いきり顔を寄せた。
尊さんが指を開いてその隙間から私を見た瞬間――。
「近いって!」
彼は声を上げて笑い、私を抱き締めてくる。
「●ゅーるを前にした、キラキラ目の猫みたいだな」
言われた私は、ペロペロと彼の頬を舐め始める。
「こらこら」
尊さんは正面から私を抱き、膝の上にのせる。
「んふふ」
私はギューッと尊さんを抱き締め、頬ずりをする。
「どした? 今日はやけに甘ったれだな」
尊さんは私のこめかみにチュッとキスをし、耳元で囁いてくる。
「……んー……、六月のイベントが終わったら、七月のイベントの事を考えないと」
そう言うと、尊さんは広島行きを思い出して「ああ……」と頷く。
「心配か?」
彼はまた以前と同じ事を尋ね、私は小さく首を横に振る。
「尊さんが宮本さんに気持ちを戻すかとか、彼女の想いがまた再熱するんじゃないか……って心配はしてない。……でも、お互い複雑な気持ちを持っているだろうから、どうなるのかな? って」
「まぁ、ずっと勘違いした者同士、十年ぶりに会うんだから不安になるよな」
尊さんは私の背中を撫で、肩に顎を置く。
「……きっとうまくやれるから、見守っててくれよ」
「はい。終わったら皆でお好み焼きかなぁ……。本場の食べてみたかった」
「東京出る直前に、大阪お好み焼きを食べてから行くとか言うなよ?」
「はっ、その手があった……」
わざとらしく言うと、尊さんはクシャッと笑う。
「三百六十五日、食いしん坊なお前が愛しいよ」
「私に食欲がなくなった時は、世界が終わる時ですよ」
冗談めかして言うと、尊さんはスッと真顔になった。
「……意外と洒落にならないな……。本当に隕石でも落ちたりして」
「もー!」
ペチンと彼の胸板を叩くと、彼は快活に笑った。
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