556 / 810
窮猫、犬に甘噛みされる 編
こういう事をしたら、もっと怒るかな?
しおりを挟む
「……し、知りません……」
私は頑なに顔を背け、タラタラと冷や汗を流す。
「あんなに凄い速さでパッと横を向いたのは、俺を認識したからだよね?」
涼さんは私の耳を摘まみ、サワサワと親指で撫でてくる。
「ひっ……、ぅ……うぅ……、も、黙秘を貫きます……」
「ふぅん……?」
彼はわざとらしく言うと体を離す。
チラッと盗み見すると、涼さんは腕を組んで半眼になって微笑んでいた。
私はジリ……、ジリ……、と足を動かして横へ逃げようとする。
――と、涼さんは屈んだかと思うと私を抱き上げ、例のベッドみたいなソファに連れて行った。
「んっ」
ボフッと乱暴に横たえられた……と思いきや、力を加減してくれたのか全然痛くない。
「さて、どうしようかな」
涼さんは帰ってきたままのスーツ姿で、見せつけるようにネクタイをほどきながら笑う。
「俺が贈ったワンピース、着てくれてありがとう」
「……あ、ありがとうございます……」
涼さんがこの日のためにプレゼントしてくれたのは、ランバンのネイビーのレースワンピースだ。
変わったデザインという訳ではなく、結婚式とかにも普通に着ていけそうな物なので、それほど悪目立ちする事なくパーティーに参加できた。
ただ、目ざとい綾子さんたちには『ワンピースを着るの珍しいわね』と言われたけど……。
「俺は出資者だから、脱がせる権利があるよね?」
「えっ」
私は目をまん丸に見開き、両手で胸元を隠し膝を合わせる。
すると涼さんは嬉しそうに目を細め、私の耳に髪の毛を掛けて、大ぶりなパールのピアスをチャラッと弄った。
「ん……っ」
耳元をくすぐられるのは弱く、私は首を竦めてやり過ごそうとする。
「遠くから見てたけど、みんな恵ちゃんに注目してたよ」
「そんな事、ある訳ないじゃないですか」
「いいや、俺は観察力があるから、間違いない」
「涼さんが凄い人なのは分かってますけど、時々レーダーがぶっ壊れてそうです。思い込みは駄目ですよ」
「いや、会社の人に『あの子、俺の婚約者』って言ったら『美人ですね』って言ってたから間違いない」
「ちょおっ!? いつから婚約……っ、えっ!? 会社の人!? 美人っ!?」
情報量の多さについていけず、私はワタワタと焦る。
「会社の役員ぐらい、いいでしょ」
「それって、お父さんまで情報がいきません?」
固まったまま尋ねると、涼さんは少し考えてから「かもね」とニコッと笑う。
「~~~~っ」
私は横を向くとズリズリと彼の体の下から這い出て逃げようとするが、「こら、逃げない」と捕らえられてしまった。
「そのうち家族に会ってもらう予定だけど、家族の前でもプイッとされると困るかなぁ……」
「し……、しませんよ……」
「ふぅん? ……じゃあ、一プイにつき一キスね」
妙な条件を突きつけられ、私は苦虫をかみつぶしたような顔になる。
「恵ちゃんは白とかアイボリーも似合うけど、こういう引き締めカラーも似合うよね」
彼は私の脛に手を当て、ススス……とスカートを捲ってくる。
「ウ……ッ、おっ、お褒めに与りっ、コウエイッ」
私は緊張のあまり、眉間に皺を寄せて鼻の頭にも皺を寄せ、それでも必死に笑ってみせる。
「うーん……、愛情表現が分からないワンコみたいだね。こういう時は愛くるしい顔をして、素直に『嬉しい』って言えばいいんだよ」
涼さんは私を見つめて妖しく笑い、下唇を親指の腹でなぞってくる。
誰からこんないやらしい仕草を習ったんだこの人は。
全身からいやらしオーラが吹き出て、このだだっ広いリビングダイニングがピンクに染まってそうだ。
「ウゥ……ッ、ウーッ」
素直に喜べと言われても、こんな美形に押し倒されていやらしい体勢になり、プリプリとお尻を振って喜べる訳がない。
「……参ったな……。どうやったら手懐けられるんだろう、この子……。やっぱりおやつかな」
涼さんは嘆息混じりに言い、「ん?」と私の目を覗き込みつつ頭を撫でてきた。
「こういう事をしたら、もっと怒るかな?」
彼は首元からスルリとネクタイをとると、それで私の両手首を緩く縛った。
私は頑なに顔を背け、タラタラと冷や汗を流す。
「あんなに凄い速さでパッと横を向いたのは、俺を認識したからだよね?」
涼さんは私の耳を摘まみ、サワサワと親指で撫でてくる。
「ひっ……、ぅ……うぅ……、も、黙秘を貫きます……」
「ふぅん……?」
彼はわざとらしく言うと体を離す。
チラッと盗み見すると、涼さんは腕を組んで半眼になって微笑んでいた。
私はジリ……、ジリ……、と足を動かして横へ逃げようとする。
――と、涼さんは屈んだかと思うと私を抱き上げ、例のベッドみたいなソファに連れて行った。
「んっ」
ボフッと乱暴に横たえられた……と思いきや、力を加減してくれたのか全然痛くない。
「さて、どうしようかな」
涼さんは帰ってきたままのスーツ姿で、見せつけるようにネクタイをほどきながら笑う。
「俺が贈ったワンピース、着てくれてありがとう」
「……あ、ありがとうございます……」
涼さんがこの日のためにプレゼントしてくれたのは、ランバンのネイビーのレースワンピースだ。
変わったデザインという訳ではなく、結婚式とかにも普通に着ていけそうな物なので、それほど悪目立ちする事なくパーティーに参加できた。
ただ、目ざとい綾子さんたちには『ワンピースを着るの珍しいわね』と言われたけど……。
「俺は出資者だから、脱がせる権利があるよね?」
「えっ」
私は目をまん丸に見開き、両手で胸元を隠し膝を合わせる。
すると涼さんは嬉しそうに目を細め、私の耳に髪の毛を掛けて、大ぶりなパールのピアスをチャラッと弄った。
「ん……っ」
耳元をくすぐられるのは弱く、私は首を竦めてやり過ごそうとする。
「遠くから見てたけど、みんな恵ちゃんに注目してたよ」
「そんな事、ある訳ないじゃないですか」
「いいや、俺は観察力があるから、間違いない」
「涼さんが凄い人なのは分かってますけど、時々レーダーがぶっ壊れてそうです。思い込みは駄目ですよ」
「いや、会社の人に『あの子、俺の婚約者』って言ったら『美人ですね』って言ってたから間違いない」
「ちょおっ!? いつから婚約……っ、えっ!? 会社の人!? 美人っ!?」
情報量の多さについていけず、私はワタワタと焦る。
「会社の役員ぐらい、いいでしょ」
「それって、お父さんまで情報がいきません?」
固まったまま尋ねると、涼さんは少し考えてから「かもね」とニコッと笑う。
「~~~~っ」
私は横を向くとズリズリと彼の体の下から這い出て逃げようとするが、「こら、逃げない」と捕らえられてしまった。
「そのうち家族に会ってもらう予定だけど、家族の前でもプイッとされると困るかなぁ……」
「し……、しませんよ……」
「ふぅん? ……じゃあ、一プイにつき一キスね」
妙な条件を突きつけられ、私は苦虫をかみつぶしたような顔になる。
「恵ちゃんは白とかアイボリーも似合うけど、こういう引き締めカラーも似合うよね」
彼は私の脛に手を当て、ススス……とスカートを捲ってくる。
「ウ……ッ、おっ、お褒めに与りっ、コウエイッ」
私は緊張のあまり、眉間に皺を寄せて鼻の頭にも皺を寄せ、それでも必死に笑ってみせる。
「うーん……、愛情表現が分からないワンコみたいだね。こういう時は愛くるしい顔をして、素直に『嬉しい』って言えばいいんだよ」
涼さんは私を見つめて妖しく笑い、下唇を親指の腹でなぞってくる。
誰からこんないやらしい仕草を習ったんだこの人は。
全身からいやらしオーラが吹き出て、このだだっ広いリビングダイニングがピンクに染まってそうだ。
「ウゥ……ッ、ウーッ」
素直に喜べと言われても、こんな美形に押し倒されていやらしい体勢になり、プリプリとお尻を振って喜べる訳がない。
「……参ったな……。どうやったら手懐けられるんだろう、この子……。やっぱりおやつかな」
涼さんは嘆息混じりに言い、「ん?」と私の目を覗き込みつつ頭を撫でてきた。
「こういう事をしたら、もっと怒るかな?」
彼は首元からスルリとネクタイをとると、それで私の両手首を緩く縛った。
750
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる