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宮島 編
神域・宮島
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「すげぇな……。今、なんか……、ヒュッと消えたように思える」
「ひほふひへひっははらへふはへ(一口でいったからですかね)?」
「こういうゲームのキャラクターいたよな……」
「やめてくださいよ。ゲーム会社に怒られます」
私は両手で口元を覆い、思う存分モグモグしてから、何事もなかったかのようにパッと顔を出す。
「今のは、腹の足し的に、点数つけるならどれぐらい?」
「んー……、一……?」
真顔で答えると、尊さんは信じられないものを見る目をした。
「それが婚約者を見る目ですか」
「こういう目も含めて俺の事が全部好きなんだろ」
「わぁ……っ、ずるい……! こういうの、ずるい男って言うんだ!」
「ちょっと違うと思う」
尊さんはスンッと真顔で言ったあと、「商店街行くぞ」と歩き出した。
宮島は平家ゆかりの地である事もあり、商店街は〝清盛通り〟とも言われているそうだ。
歩いていると色んなもみじがいて、パイもみじとか、アイスサンドもみじもいる。
全員食べてあげたい……。
そんな事を思いつつ向かったのは『紅葉堂』本店さんで、揚げもみじ発祥の店らしい。
彼は列に並んでノーマルのこしあんを頼み、私は変化球で瀬戸内レモンを頼んだ。
「んン!? んー!」
棒に刺さった揚げもみじを一口囓った私は、目を見開いて尊さんを見ると、右手でサムズアップして、ぐっぐっぐっとする。
「ん」
私の「んー!」に対し、尊さんは口をモグモグさせつつ短く返事をし、ぐっとサムズアップした。
多分これ、意志疎通できていると思うんだけど、サクサクの衣の中にあるフワッとしたもみじ饅頭と、クリームが絶妙に美味しい。
二口で終わってしまった私は、「別の味も食べたいな……」と思い、お店を見る。
「一箇所で三、四を消費するか、別の店で消費するか」
「別のお店行きます!」
「……の、前に、そろそろ神社行ってみるか」
「アイアイサー!」
小腹を満たした私たちは、途中でどでかいしゃもじの前で記念撮影をしてから、神社に向かった。
本当は杓子というのが正しいようで、日清・日露戦争の時に厳島神社に参拝した兵士たちが『敵を召し捕る』として杓子を奉納し、故郷へのお土産としたところからきているみたいだ。
今では弁財天様の御利益で、『幸せを召し捕る』として、縁起物になっている。
御笠浜を通って厳島神社に向かう途中、ミコペディアが色々教えてくれる。
「厳島って呼ばれるようになったのも、神様が『居着く』島とされたからだって。本州側から島を見ると、観音様が横たわってるように見えるんだとか。島全体が神域だから、墓もないんだ。あと、出産も禁止、神域を傷つける行為になるから、畑を作って耕すのも禁止」
「おお……。思っていた以上の縛りですね。ちなみに、この島の住人は?」
「墓はフェリーに乗った宮島口にあるらしく、妊婦さんは臨月になったら島を出て出産して、昔は百日経ってから島に戻る事になっていたそうだ」
「ちなみに秋になったら紅葉が綺麗なんでしょうけど、別の土地も綺麗だと思うんです。どうしてここまでもみじ推しに?」
「弥山に登った時、伊藤博文の話をチラッとしたけど、彼も信仰心が厚くて何度も弥山に訪れていたらしい。で、茶屋でお茶を出してくれた女の子の手が、紅葉みたいに可愛いって言ったところから始まったんだとか」
「へぇ……、ふーん……」
私は頷きながら、自分の手をパーにして開く。
「そのサイズの饅頭は売ってないぞ」
「想像しただけですって」
お見通しミコに、私は唇を尖らせる。
「あと、気づいてると思うけど、信号もないしゴミ箱もない」
「信号がないのは、コンパクトに観光できるから?」
「まぁ、多分そうだろうな。あちこち歩いて俺も分かったけど、人が大勢いるし道も狭いし、車移動には向いてない。ゴミ箱がないのは鹿が食わんようにらしい。ちなみにトイレが押して入るんじゃなくて、引いて入るようになってるのも、鹿対策」
「なるほどー……。……で、いよいよ到着ですね」
神妙な面持ちで見た先には二本の柱――注連石があり、その上部には割とピーンとしめ縄が張ってある。
周囲を写真に収めたあと、昇殿料三百円を払って、いざ参拝だ。
「ひほふひへひっははらへふはへ(一口でいったからですかね)?」
「こういうゲームのキャラクターいたよな……」
「やめてくださいよ。ゲーム会社に怒られます」
私は両手で口元を覆い、思う存分モグモグしてから、何事もなかったかのようにパッと顔を出す。
「今のは、腹の足し的に、点数つけるならどれぐらい?」
「んー……、一……?」
真顔で答えると、尊さんは信じられないものを見る目をした。
「それが婚約者を見る目ですか」
「こういう目も含めて俺の事が全部好きなんだろ」
「わぁ……っ、ずるい……! こういうの、ずるい男って言うんだ!」
「ちょっと違うと思う」
尊さんはスンッと真顔で言ったあと、「商店街行くぞ」と歩き出した。
宮島は平家ゆかりの地である事もあり、商店街は〝清盛通り〟とも言われているそうだ。
歩いていると色んなもみじがいて、パイもみじとか、アイスサンドもみじもいる。
全員食べてあげたい……。
そんな事を思いつつ向かったのは『紅葉堂』本店さんで、揚げもみじ発祥の店らしい。
彼は列に並んでノーマルのこしあんを頼み、私は変化球で瀬戸内レモンを頼んだ。
「んン!? んー!」
棒に刺さった揚げもみじを一口囓った私は、目を見開いて尊さんを見ると、右手でサムズアップして、ぐっぐっぐっとする。
「ん」
私の「んー!」に対し、尊さんは口をモグモグさせつつ短く返事をし、ぐっとサムズアップした。
多分これ、意志疎通できていると思うんだけど、サクサクの衣の中にあるフワッとしたもみじ饅頭と、クリームが絶妙に美味しい。
二口で終わってしまった私は、「別の味も食べたいな……」と思い、お店を見る。
「一箇所で三、四を消費するか、別の店で消費するか」
「別のお店行きます!」
「……の、前に、そろそろ神社行ってみるか」
「アイアイサー!」
小腹を満たした私たちは、途中でどでかいしゃもじの前で記念撮影をしてから、神社に向かった。
本当は杓子というのが正しいようで、日清・日露戦争の時に厳島神社に参拝した兵士たちが『敵を召し捕る』として杓子を奉納し、故郷へのお土産としたところからきているみたいだ。
今では弁財天様の御利益で、『幸せを召し捕る』として、縁起物になっている。
御笠浜を通って厳島神社に向かう途中、ミコペディアが色々教えてくれる。
「厳島って呼ばれるようになったのも、神様が『居着く』島とされたからだって。本州側から島を見ると、観音様が横たわってるように見えるんだとか。島全体が神域だから、墓もないんだ。あと、出産も禁止、神域を傷つける行為になるから、畑を作って耕すのも禁止」
「おお……。思っていた以上の縛りですね。ちなみに、この島の住人は?」
「墓はフェリーに乗った宮島口にあるらしく、妊婦さんは臨月になったら島を出て出産して、昔は百日経ってから島に戻る事になっていたそうだ」
「ちなみに秋になったら紅葉が綺麗なんでしょうけど、別の土地も綺麗だと思うんです。どうしてここまでもみじ推しに?」
「弥山に登った時、伊藤博文の話をチラッとしたけど、彼も信仰心が厚くて何度も弥山に訪れていたらしい。で、茶屋でお茶を出してくれた女の子の手が、紅葉みたいに可愛いって言ったところから始まったんだとか」
「へぇ……、ふーん……」
私は頷きながら、自分の手をパーにして開く。
「そのサイズの饅頭は売ってないぞ」
「想像しただけですって」
お見通しミコに、私は唇を尖らせる。
「あと、気づいてると思うけど、信号もないしゴミ箱もない」
「信号がないのは、コンパクトに観光できるから?」
「まぁ、多分そうだろうな。あちこち歩いて俺も分かったけど、人が大勢いるし道も狭いし、車移動には向いてない。ゴミ箱がないのは鹿が食わんようにらしい。ちなみにトイレが押して入るんじゃなくて、引いて入るようになってるのも、鹿対策」
「なるほどー……。……で、いよいよ到着ですね」
神妙な面持ちで見た先には二本の柱――注連石があり、その上部には割とピーンとしめ縄が張ってある。
周囲を写真に収めたあと、昇殿料三百円を払って、いざ参拝だ。
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