【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
619 / 792
宮島 編

厳島神社参拝

しおりを挟む
 朱塗りの東廻廊入り口に差し掛かると、「いよいよ厳島神社だ!」という気持ちになって気持ちが引き締まる。

 厳島神社は大雑把にMの字に参拝していくコースになり、左下からスタートして東廻廊を通り、真ん中の谷の上の部分に拝殿、本殿がある。

 もっと言えばMの谷になっている先端の先に海があり、大鳥居を望める感じなのだ。

 そして右手側に抜けると、西廻廊となる。

 廻廊の床は細長い横板がズラーッと並んでいるけれど、高潮の対策や波の勢いを弱めるために、板の間の隙間を広くとっていて、それを〝目透し〟と言うらしい。

「尊さん、ピンヒール履いてください」

「やだよ。嫌がらせか」

 私たちはそんな会話をしつつ、廻廊を進む。

 外側には屋根から灯籠がぶら下がっているけれど、最初は毛利元就が奉納したんだとか。

 でも潮風で腐食してしまって、今は青銅製の物に変えられたそうだ。

 東廻廊を進んですぐ左手には、国宝のまろうど神社の拝殿、その奥に本殿がある。

 廻廊を挟んで向かい側は、祓殿はらいでん――お祓いを受ける場所だ。

 客神社は複数の男性の神様を祀っていて、厳島神社のメインの神様ではなく、深い関わりのある神様を祀る摂社せっしゃという神社だ。

 大きな神社だと境内に別の小さめのお社が複数あるけれど、摂社の他にも、まったく関係のない神様を祀っている末社まっしゃもある。

「おお……、これが御本社ごほんしゃ……」

 厳島神社の御本社は手前に祓殿があり、拝殿――参拝客がお参りする場所があり、その奥に幣殿へいでん――参拝者がお供え物を捧げる場所があり、その奥に本殿がある。

 祀っているのは宗像三女神むなかたさんじょしんで、〝道〟の最高神として海上運航、交通安全の御利益があるらしい。

 三柱みはしらのうち一柱、市杵島姫命いちきしまひめのみことは弁財天と同視され、金運、美、芸能の御利益もあるそうだ。

〝厳島神社〟と呼ばれる神社は全国に五百社あるけれど、ここが勿論総本社で、昔は伊都岐島神社いつきしまじんじゃと呼ばれていて、市杵島姫命いちきしまひめのみことの名前が変化してそう呼ばれるようになったとか。

「……なんか、圧巻ですね。普通の神社ってここまで〝中〟にいる感覚がないですから」

 私は少し控えめの声量で言う。

「確かに、普通の神社は外に拝殿があって、お参りしたら終わりだもんな。でもここは朱塗りの柱に囲まれて、神様の家にお邪魔してる感覚が強い。屋根の下っていうのもあるのかも」

 私たちはお参りしたあとに言い、失礼にならないようにちょっと角度をつけた所から写真を撮る。

 拝殿の外――屋根の外に出ると高舞台があり、その向こうに大鳥居が見える。

「ここで、駅前にいた蘭陵王の舞楽とかを奉納するんだよ」

「へぇ……」

「最初に、大阪の四天王寺から移ってきたって言っただろ? 日本三舞台ってあって、一つが大阪四天王寺の石舞台、もう一つが大阪住吉大社の石舞台、で、もう一つがここ厳島神社の板舞台の、高舞台と平舞台なんだ」

「凄いですね。ここで見られる舞楽って、めっちゃ貴重そう」

「一月は松の内が狙い目みたいだ。他の月はあって月一ぐらいなのかな。詳細は分からんけど」

 今、中央部分にいるので、左右を見ると先ほどの客神社や五重塔が見えたり、西廻廊のほうには能舞台も見える。

 西廻廊を歩いて行くと、大きな朱塗り――正確には塗りというらしい――の、太鼓橋――反橋そりばしが見える。

 日本庭園の中に小さめのやつがあるけど、そんな規模じゃなくて、ミコペディアが言うには約二十四メートルあるそうだ。

 もとはこちらのほうが入り口だった西側から出て、私たちはとうとう大鳥居へ向かう。

「思ってたより水がないもんですね」

「だな」

 もっとベッチョベチョかと思っていたけれど、地面が出ている所は意外と普通に歩ける。

「くぁー……、すご……、でっか……」

 歩いて行くにつれ、六十トンある大鳥居の大きさを思い知り、顔を上げる角度も変わっていく。

「ちょ、まだ鳥居の全貌が見える間に、記念写真撮りましょう」

「おう」

 私は自撮り棒を構え、尊さんと二人で大鳥居を背景にピースする。

「凄いですねぇ……。でっかぁ……」

「平清盛の時代に、こんなどでかいもんを、しかも木造で作るんだからすげぇよ」

 言ったあと、尊さんはチラッと腕時計を見た。

 時刻はいい感じにお昼過ぎになり、満たした小腹がまた空いている。

「よし、あなご飯いくか」

「よっしゃー!」

 私たちは大鳥居の周りをぐるっと一周したのち、西側出口の宝物館近くにあるあなごめし屋『ふじたや』さんを目指した。
しおりを挟む
感想 2,520

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

処理中です...