【R-18】上司と継弟に求められて~私と彼と彼の爛れた生活~

臣桜

文字の大きさ
8 / 114

生い立ち

 実父が病気で亡くなったのは、私が十歳の時だった。

 父は病弱ではなかったけど、ある日心筋梗塞を起こして儚い人となった。

 母子家庭となったあと、母は女手一つで私を育ててくれた。

 昼間は弁当屋で働き、夜はスナック、空き時間に清掃員をし、少しでも生活費と学費を稼ごうとしてくれた。

 私は良くも悪くも〝物わかりのいい子〟で、父を亡くしても泣きわめかず、母が家を空けがちになっても非行に走らず、我が儘も言わなかった。

 母はできるだけご飯を作ってくれたけど、間に合わない時は弁当屋さんの廃棄弁当、またはお金を置いていた。

 お金を置かれた時は食べる物を買いつつも、なるべく安い物で済まそうとしていた。

(お母さんは頑張っているんだから、私も協力しないと)

 私は遠方にいる母方の祖母に電話をし、FAXで簡単なレシピを教えてもらった。

 祖母は包丁や火を使わなくてもできる料理を教えてくれ、私はスーパーで食材を買って自炊を始めた。

 遅く帰る母に【ご飯作ったよ】とメモと料理を残して寝ると、夜中に押し殺した泣き声が聞こえた。

 襖の隙間から覗くと、いつもは明るい母がグスグスと泣いて私の作ったご飯を食べているのが見える。

 子供心ながら『見たらいけない』と思った私は、見なかったふりをして布団に戻った。

 ご飯を食べたあと、母は自分の布団があるのに私の布団に潜り込み、『頑張ろうね』と言って眠りにつく。

 そんな日々が数年続いた。





『夕貴ちゃん、相談があるの』

 母に改まった声で〝相談〟されたのは十五歳の時だ。

 その頃の私は学校の了解を得た上で新聞配達をし、お給料の半分を母に渡していた。

 残るお金でスマホ代を払い、友達と遊んだ。

 祖父母や親戚からお年玉やお小遣いをもらう事はあったけど、使う金額を決め、あとは貯金する。

 母は月の収入と支出を教え、どれぐらいのお小遣いをあげられるか説明し、お金の大切さを知った私はなるべく無駄遣いしないよう心がけた。

 母はこうも言った。

『病気になったり交通事故に遭ったら、沢山お金が掛かってしまう。夕貴ちゃんが高校や大学に入る時はもっとお金が掛かる。大事な時のためにお金を取っておきたいから、今は我慢してね』

 理解した私は、学校の図書館に行けば幾らでも本を読めるので、趣味を読書にした。

 毎日ストレスフルに過ごしていたつもりはないけど、気がつけば私は色んな事を我慢する性格になっていた。

 ――ここで我慢をやめたら母を困らせる。

 父が亡くなってから私は感情的にならず、自分の希望をあまり口にしない子供になった。

 クラスでは〝お父さんが死んだ可哀想な子〟という立ち位置になったけど、同情されたからかいじめられる事はなく、そういう意味では恵まれていたのだと思う。

 精神的に老成していた私は、母から再婚の話をされても特に反対せず、『おめでとう、良かったね』と祝福した。

 心の中では少しだけ『お父さんの事はもう好きじゃなくなったのかな』と思ったけど、決して口にしなかった。

 大切なのは多忙な母が体調を崩さず健康でいてくれる事で、『これで少しはゆっくりできるのかな』と安心した気持ちのほうが強かった気がする。





 一年後、私たちは古いアパートから、新しい父と弟が住んでいる家に引っ越した。

 母いわく、継父は『長谷川ホープエステート』という不動産会社の社長らしい。

 どこで社長さんと出会ったのかびっくりしたけど、お弁当のデリバリーをしていた時、偶然にも前妻を病気で亡くした継父に見初められたらしい。

 継父は前の奥さんが大好きで再婚に乗り気でなかったけど、社長をしている手前、親戚に『再婚したほうがいい』と言われていたそうだ。

 その時に母と出会い、声を掛けて何回かデートを重ね、再婚するに至った。

 中学生頃から母の雰囲気がどことなく変わったのを感じていたけど、まさか新しい人と付き合っていたとは。

『言ってくれればいいのに』と思ったけれど、母としても多感な私に、他の男性と付き合っていると言いづらかったのかもしれない。

 実父が亡くなってまだ数年だし、母が実父を忘れてしまったように感じて本当はとても寂しかった。

 でも母としても必死だったのは分かる。

 勿論、新しい父の事が好きだから再婚しようと思ったのだと思う。

 けれどその時の生活がとても厳しく、いつまで体力が持つか分からず、未来への不安もあったから、私を守るために新しい夫を探そうと思っていたのだろう。

 だから私は特に反発をせず、淡々と引っ越し準備をした。
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。

イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。 きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。 そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……? ※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。 ※他サイトにも掲載しています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。