【R-18】上司と継弟に求められて~私と彼と彼の爛れた生活~

臣桜

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ファーストキス

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『…………え?』

 一瞬何を言われたのか理解できず、私は何度目かの硬直をする。

 ――何言ってるの?

 ――確かにまだ懐かれてるとは言いがたいけど、一応姉なんだけど。

 ――亮なりのいじめだったりして。

 訳が分からないまま黙っていると、彼がつけ加えた。

『キスした事がないんだ。遅れてるって思われるのが嫌だから、練習させて』

 ――嘘だ。

 とっさに私は心の中で思った。

 亮は高身長で顔もいいし、成績もいい上にスポーツ万能だ。

 そんな彼がモテないはずがない。

 絶対大勢に告白されてるし、女の子が家まで勉強しに来た事だってあった。

 黒髪が綺麗な清楚なお嬢さんで、あきらかに亮に気がある表情をしているのを見て、『ああ、青春だな』と思っていた。

 ……私を見て、『お姉さん?』ってクスクス笑っていたのは、ちょっと気に食わないけど。

『練習であっても、姉弟でする事じゃないでしょ』

『あれ? 俺のこと意識してんの?』

『しっ、してない! 馬鹿言うな』

 赤面したのは、亮を恋愛対象として見ているからじゃない。からかわれたからだ。

『じゃあ、弟とのキスなんてカウントに入らないじゃん』

 そうじゃない。私だって未経験だし、弟とファーストキスをするなんて嫌だ。

『初めてじゃないだろ?』

 けれどそう言われて、サッと赤面した。

 年上なのに〝済ませない〟のが恥ずかしく、『初めて』なんて口が裂けても言えない。

 だから――とっさに嘘をついた。

『もっ、勿論、経験済みだけど?』

『じゃあ、教えてくれよ。好きな子がいるから、失敗したくないんだ』

 ――好きな子、いるんだ。

 ――あの綺麗な子かな。

 一瞬そう考えてモヤッとしてしまった自分が嫌だ。

 私、なんなの?

 姉でしょ? 血が繋がっていなくても、私は亮の姉なんだから。

 亮に好きな人がいても関係ないし、キスを教えてって言われても動揺する必要はない。

 テンパって自分に言い聞かせた私は、売り言葉に買い言葉で言い返していた。

『れ、練習したいなら亮からしたら? 私はいつもされる側だから、自分からした事ないの』

 苦し紛れにそう言ったのは、キスの仕方が分からないからだ。

 唇をつければいいのは分かってるけど、友達の失敗談を聞いたら歯がぶつかったというから、未経験の自分にできる訳がないと思って亮に丸投げした。

 亮が失敗しても私のせいにはならず、私が初めてとはバレないはず。

 言った時、亮はうっすら笑った。

『じゃあ俺からする』

 亮は私の前に立ち、見下ろしてくる。

 気まずくて視線を逸らしていると、肩に掛かった髪をサラリと払われた。

(練習、弟、ノーカン)

 私の心の中で、その言葉を繰り返す。

 けれど表向きは、慣れてますよ、と澄ました顔で目を閉じた。

 亮は私の頬を両手で包み、顔を仰向かせる。

 それだけで心臓がバクバクいい、顔が紅潮してしまいそうで焦る。

(早くして! 照れてるのバレる!)

 焦りのあまり、私は眉間に皺を寄せる。

 その時、唇に柔らかい物が押しつけられた。

(やわ……っ)

 ふにゅ、とマシュマロみたいな物が押し当てられ、ちゅ、ちゅ、と何度かついばんでくる。

(何……? 慣れてる? 初めてじゃなかったの?)

 驚いた私は顔を離そうとしたけれど、抱き締められてベッドの上に押し倒された。

『え……っ!?』

 ――話が違う!

 抵抗しようとしても、また唇を塞がれ、今度は口内にヌルリと舌が入ってきた。

(怖い!)

 未知の感覚に、私は体を硬直させる。

 それをいい事に、亮は私の口内を蹂躙するようにキスしてきた。

『んっ、んぅ……っ、ん、……んー!』

 亮はヌルヌルと私の舌を舐め、嫌なはずなのに体がゾクゾクする。

 怯えた私は逃げようとするけれど、亮はしっかりと私を抱き締めて離さない。

『あ……っ、ふ、――う、ぅ、……ん、……んむ、……んっ』

 抵抗していたはずなのに、私は気が付けば頭の中を真っ白にし、されるがままになっていた。

 最初は信じられないという思いと、驚きで固まっていた。

 でも亮のキスに翻弄されるうちに、悔しい事に気持ちよさを覚えて身を委ねてしまった自分がいる。

 すっかり亮に圧倒された私は、ワンピースの背中のファスナーを下ろされても、気付けずにいた。
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