【R-18】上司と継弟に求められて~私と彼と彼の爛れた生活~

臣桜

文字の大きさ
40 / 114

焦燥と誤算

 そのいっぽうで、俺と夕貴が世間的には姉弟だという事も理解している。

 夕貴にはいまだ男として告白しておらず、そういう素振りもまったく見せていない。

 なのにいきなり『好きだ』と言って『付き合いたい、キスをしてセックスしたい』と言えば、必ず夕貴は俺を拒絶するだろう。

 だから彼女の押しに弱い性格を利用し、血が繋がっていない事を強調して〝練習〟をしたいと言えば、夕貴自身の好奇心も手伝って頷いてくれるのでは……と期待した。

 とにかく俺は、彼女の性的な興味を自分に向けて、『弟は男だ』と意識させたかった。

 反吐が出そうな思い出だが、〝経験〟なら嫌というほどした。

 本当の意味での〝練習〟なら沢山したから、夕貴で〝本番〟をさせてほしかった。

 彼女の唇を味わい、肉体を知ってこそ、俺のあの汚泥を啜るような想いが報われると思っていた。

〝練習〟など言ってしまったもう一つの理由を挙げるなら、俺は焦っていた。

 時間と余裕があったら、夕貴に告白してじっくり落とす正攻法を取れただろう。

 だが田町たちから解放されて、彼女が二十歳になるまでの二年間、不甲斐なくも俺は〝普通〟の男子高校生に戻れた日常に慣れるので精一杯だった。

 何をしていてもビクついていた俺は、叫んで物に当たってしまいたくなるのを、必死に堪えていた。

 同じ屋根の下に、手を伸ばせば触れられる距離に夕貴がいて、『助けてくれ』と抱きついて無理矢理キスしてしまいたくなる衝動を必死に抑えていた。

 ――彼女に向き合うには、まず自分の心をコントロールしないとならない。

 ――いざ夕貴に触れられるという時に、トラウマが襲ってきて役に立たないなんて事には、絶対になってはいけない。

 だから俺は己を制御するために、二年を費やしたのだ。

 その二年が過ぎた間、夕貴は自由な大学生活を送っていた。

 夕貴は少しでもいい大学に入るために、高校時代は勉強一色だった。

 だが大学に入れば〝デビュー〟して、バイト先で出会いがあったり、合コンに行く可能性も増えてくる。

 だから、俺は焦っていた。

 男ができる前に俺という〝男〟を覚え込ませ、あとから好きになってもらえばいいと思ってしまったのだ。

 弟として強引に頼めば、夕貴が引いてくれるだろう事は予想していた。

 けれどそれで『結ばれた』と思ったのは俺だけで、彼女は俺とのセックスを気持ちいいと思いながらも、罪悪感に苦しみ続けていた。

 俺の中ではずっと育ててきた恋慕だが、夕貴にしてみればいきなり〝弟〟が自分に肉欲を向けてきたのだから、ひどく戸惑った事だろう。

 しかも『好きだ』と言われず〝練習〟としてセックスしていたので、夕貴は自分の気持ちをどう処理すればいいのか分からなかったと思う。

 俺もまた、夕貴を自分のものにした安堵感に満たされ、彼女の肉体に溺れてしまい、自分たちの関係をきちんと説明しなかった。

 彼女を抱いている時は『好きだ、愛している』と口に出して言っていたのに、きちんとした告白をしなかったからか、夕貴はその言葉をまともに捉えていなかった。

 ズルズルと肉体関係だけが続いて不安になった夕貴は、罪悪感から『早くこの関係から抜け出さないと』と思うようになる。

 お互い大学生になり、勉強とバイト、セックスする毎日を送り、俺にとってはこの世の天国だった。

 しかし先に社会人になった夕貴は、持て余す感情をごまかすために、〝外〟に逃げ場を作るようになっていった。

 仕事に打ち込み、仲よくなった同僚と飲みに行き、遊びに行き、旅行をする。

 夕貴が自分で稼ぐようになったあとは、両親も「大人だから」と言って口うるさくするのをやめ、学生時代の苦労をねぎらうように自由に遊ぶのを許した。

 ――会社に変な男はいないだろうな?

 ――合コンなんて行かないよな?

 ――旅行先で変な男に付きまとわれていないよな?

 二つ年下というだけで、こんなにも気が狂いそうな想いに襲われる。

 おまけに高瀬も同じ大学に入り、無視しても無視しても付きまとってくる。

 女子生徒と仲良くしたいとは思っていなかったが、高瀬が牽制するせいで、女子は俺の側に寄ってこなかった。

 ――これも、卒業するまで。

 ――大学を卒業したら、本当に高瀬とは縁を切る。

 ――うちの会社に入りたいと言っても、絶対に許さないし『責任を持って仕事をしたいから、顔見知りは入社させないでほしい』と親父に言っておいた。

 ようやく大学を卒業できると思った頃には、夕貴に男の影があった。

 夕食で〝西崎さん〟の名前が増え、笑顔で仕事の話をするようになる。

 ――誰だよ、西崎って。

 焦って夕貴を激しく抱くほど、彼女の気持ちが離れていっている気がする。

 ――頼むよ。こんなに我慢したのに。

 ――お前を求め続けたのに。



 そして――。



**
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。

イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。 きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。 そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……? ※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。 ※他サイトにも掲載しています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。