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認めなければならない
「ただ、うまくいかなかった場合も想定してくれ。『話せば分かってくれるかもしれない』と思いたいが、世の中には日本人の姿をしていても、永遠に日本語が通じないやつらもいる」
「うん」
世の中、色んなモンスターで溢れている。
カスハラという言葉をよく耳にするようになったし、ごく普通の親に見えても、学校に非常識な要求をする人もいる。
一見、身なりがきちんとしていて感じよく笑い、普通に会話ができ、「あの人、いい人だよ」と言われる人でも、何らかの地雷を踏むと信じられない行動をする。
そういう人は〝いい人〟に擬態するのがうまいから、よほど気をつけて人付き合いしなければ、ヤバイ人だと見破れない。
けれど、すべての事にはきっかけがある。
人は健康面、金銭面、仕事、恋人や家族、その他人間関係でうまくいっていないと、やりきれない思いを〝よそ〟にぶつけたがる。
その人がうまくいかないきっかけはそれぞれだろうけど、「自分にも非がある」と認められない人は、気に食わないもの、相手を悪にしたがり、もしくは何も関係ない、立場の弱い第三者にきつく当たって、鬱憤を晴らそうとする。
つらい出来事があっても、それをするかしないかで大きく変わる。
私は奈々ちゃんとあまり接点がなかったけれど、遠目に見る彼女は良家の子女という感じだった。
彼女は亮と同じ進学校にいたし、難関大学にも合格した優等生だ。
でも頭がよかろうが、社会的な層のどこに属していようが、ブレーキが利かない人は必ずいるのだ。
「……どこかで、何かを踏み間違えてしまったのかな」
「かもな。高瀬と同じ環境に身を置いている人がいたとしても、全員同じ事はしない。普通の人なら我慢できたところを、高瀬は我慢できず一線を踏み越えてしまった」
秀弥さんは小さく溜め息をつき、少しの間遠くを見る。
多分、彼の心の中には、家族を壊した女性の顔が浮かんでいるんだろう。
「高瀬とは誠意をもって話してみる。俺は自分たちの幸せのために精一杯頑張るが、高瀬の対応については期待するな」
「ん……」
「『うまくいくかも』って期待しすぎると、あとから余計にショックがでかくなる。『高瀬の良心を信じたい、人は善性を持っているはずだから』って思いたくなるのは分かる。でも世の中、自分の常識が通じるとは限らない」
「そうだね、その辺は驕ったら駄目な部分だ」
「よし、俺たちの話はこの辺にしよう。そろそろ遅いし、寝る準備するか」
「うん」
トントンと背中を叩かれ、私は少し安堵して微笑む。
そのあと、持ってきた荷物をそれぞれの場所に置かせてもらい、今日はドッと疲れたので寝る事にした。
夢の中には、色んなものが出てきた。
奈々ちゃんや、亮から聞いた出来事がグチャグチャに混ぜられ、自分の目で見ていないのに、彼を襲った女性たちが巨大に膨れ上がった恐ろしい姿で襲ってくる。
「は……っ」
ビクッとして目を開くと、汗びっしょりになっていた。
「……大丈夫か?」
秀弥さんが言い、私の頭を撫でてくる。
「うん……、大丈夫」
かすれ声で返事をした私は、彼の腕を抱いてその肩に額を押しつけた。
**
夕貴から亮くんの話を聞いた俺は、想像以上の〝事情〟に溜め息をつきたくなった。
あまりにも俺自身の体験と似すぎている。
初めは夕貴に浮気相手がいると知った時、身を焦がすような怒りに包まれたし、彼女の体に刻まれたメッセージを受け取るたびに、相手も分かっていてやっていると気づいていた。
だから俺同様に、かなり性格の悪い奴だと察していた。
でも蓋を開けてみれば、相手は夕貴の継弟。
それを知って「は?」となり、燃え上がった怒りを一旦静めた。
姉弟といっても他人だし、夕貴は胸のデカい美人だ。被虐的な雰囲気があるし、とてもそそられるのは分かる。
彼女と同じ屋根の下で生活していれば、どんどん惹かれていってもおかしくない。
もっと冷静に考えれば、彼は俺よりずっと前から夕貴の側にいて、きっと俺が彼女を抱くより遙か前から肉体関係を結んでいた。
だからあんなにも攻撃的な〝メッセージ〟を送ってきていたんだろう。
大好きな姉をとられたくない一心で……と思っていたが、それ以上に深い理由があった。
――亮くんは彼なりに深く夕貴を愛している。
俺はそれを認めなければならない。
「うん」
世の中、色んなモンスターで溢れている。
カスハラという言葉をよく耳にするようになったし、ごく普通の親に見えても、学校に非常識な要求をする人もいる。
一見、身なりがきちんとしていて感じよく笑い、普通に会話ができ、「あの人、いい人だよ」と言われる人でも、何らかの地雷を踏むと信じられない行動をする。
そういう人は〝いい人〟に擬態するのがうまいから、よほど気をつけて人付き合いしなければ、ヤバイ人だと見破れない。
けれど、すべての事にはきっかけがある。
人は健康面、金銭面、仕事、恋人や家族、その他人間関係でうまくいっていないと、やりきれない思いを〝よそ〟にぶつけたがる。
その人がうまくいかないきっかけはそれぞれだろうけど、「自分にも非がある」と認められない人は、気に食わないもの、相手を悪にしたがり、もしくは何も関係ない、立場の弱い第三者にきつく当たって、鬱憤を晴らそうとする。
つらい出来事があっても、それをするかしないかで大きく変わる。
私は奈々ちゃんとあまり接点がなかったけれど、遠目に見る彼女は良家の子女という感じだった。
彼女は亮と同じ進学校にいたし、難関大学にも合格した優等生だ。
でも頭がよかろうが、社会的な層のどこに属していようが、ブレーキが利かない人は必ずいるのだ。
「……どこかで、何かを踏み間違えてしまったのかな」
「かもな。高瀬と同じ環境に身を置いている人がいたとしても、全員同じ事はしない。普通の人なら我慢できたところを、高瀬は我慢できず一線を踏み越えてしまった」
秀弥さんは小さく溜め息をつき、少しの間遠くを見る。
多分、彼の心の中には、家族を壊した女性の顔が浮かんでいるんだろう。
「高瀬とは誠意をもって話してみる。俺は自分たちの幸せのために精一杯頑張るが、高瀬の対応については期待するな」
「ん……」
「『うまくいくかも』って期待しすぎると、あとから余計にショックがでかくなる。『高瀬の良心を信じたい、人は善性を持っているはずだから』って思いたくなるのは分かる。でも世の中、自分の常識が通じるとは限らない」
「そうだね、その辺は驕ったら駄目な部分だ」
「よし、俺たちの話はこの辺にしよう。そろそろ遅いし、寝る準備するか」
「うん」
トントンと背中を叩かれ、私は少し安堵して微笑む。
そのあと、持ってきた荷物をそれぞれの場所に置かせてもらい、今日はドッと疲れたので寝る事にした。
夢の中には、色んなものが出てきた。
奈々ちゃんや、亮から聞いた出来事がグチャグチャに混ぜられ、自分の目で見ていないのに、彼を襲った女性たちが巨大に膨れ上がった恐ろしい姿で襲ってくる。
「は……っ」
ビクッとして目を開くと、汗びっしょりになっていた。
「……大丈夫か?」
秀弥さんが言い、私の頭を撫でてくる。
「うん……、大丈夫」
かすれ声で返事をした私は、彼の腕を抱いてその肩に額を押しつけた。
**
夕貴から亮くんの話を聞いた俺は、想像以上の〝事情〟に溜め息をつきたくなった。
あまりにも俺自身の体験と似すぎている。
初めは夕貴に浮気相手がいると知った時、身を焦がすような怒りに包まれたし、彼女の体に刻まれたメッセージを受け取るたびに、相手も分かっていてやっていると気づいていた。
だから俺同様に、かなり性格の悪い奴だと察していた。
でも蓋を開けてみれば、相手は夕貴の継弟。
それを知って「は?」となり、燃え上がった怒りを一旦静めた。
姉弟といっても他人だし、夕貴は胸のデカい美人だ。被虐的な雰囲気があるし、とてもそそられるのは分かる。
彼女と同じ屋根の下で生活していれば、どんどん惹かれていってもおかしくない。
もっと冷静に考えれば、彼は俺よりずっと前から夕貴の側にいて、きっと俺が彼女を抱くより遙か前から肉体関係を結んでいた。
だからあんなにも攻撃的な〝メッセージ〟を送ってきていたんだろう。
大好きな姉をとられたくない一心で……と思っていたが、それ以上に深い理由があった。
――亮くんは彼なりに深く夕貴を愛している。
俺はそれを認めなければならない。
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