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依存体質
「私は亮を加害してないわ。ただ彼を愛しただけ」
高瀬は目の奥に苛立ちを込めて言い、俺を睨む。
「彼に愛し返されていると思う?」
「それは……、夕貴さんが彼を誑かしているから」
「夕貴は俺と結婚するって決めたけど」
「……でも二人ともまだ実家にいるんでしょう? 二十代半ばの男女が同じ屋根の下にいて、何もない訳がないでしょ」
夕貴が住まいを変えた事は言う訳にいかないので、俺は曖昧に微笑む。
「そうやって、すべてを他人のせいにするつもり?」
他責思考だと言うと、高瀬はギロリと俺を睨んできた。
「あなたは亮のなんなの? 偉そうに」
握り十貫が運ばれてきて、どれも美味そうだけど、バチバチにやり合っている間に味わえるはずがない。
普通は相手も同じはずなのに、高瀬は「いただきます」と言ってヒラメから順番にパクパク食べ始めた。すげぇ。
「君が知ってる通り、俺は夕貴の婚約者で、亮くんの未来の義兄になる男だよ。だから彼の事も大切に思ってる」
答えると、高瀬は俺を見て嘲笑した。
「嘘を言っては駄目よ。亮は夕貴さんを特別視してる。あなたがそれを知らない訳がないでしょう。婚約者の弟が恋敵なのよ? 私に構っている暇があるなら、亮をなんとかしたら?」
「君さ、さっきからどうしたい訳? 俺を煽って怒らせたい? 自分は亮くんを純粋に想っていると言っておきながら、彼を傷つけた自覚があり、亮くんが夕貴を大切にしている事も認識している。なのに自分と亮くんは親友同士で愛のあるセックスをしたと言い張るのか? 君の話は趣旨が一貫しているようでいて、辻褄が合わないんだよ」
溜め息をついて俺もヒラメの握りを口に入れると、すでにトロを食べ終えた高瀬が日本酒を呷ってから言った。
「あなたこそ何がしたいの? さっきからのらりくらりと。イライラするわ」
「だって君、正論で指摘したら逆ギレするだろ。俺は亮くんと夕貴に関わらないと約束してほしいだけだけど、この雰囲気なら話し合いはずっと平行線のままだ」
「逆ギレするなんて、知性のない女扱いするのはやめてくれる?」
高瀬は帆立、アワビ、ズワイガニ、数の子……と遠慮無く食べ、ウニの軍艦を口に入れる。
(食欲落ちる話してて、よくパクパク食えるな。やっぱり図太い)
溜め息をついた俺は、そろそろ食事が終盤に向かっているのも含め、終わらせようと決意した。
「夕貴と亮くんの側に立っていなくても、ハッキリ言って君はストーカーだし、好きな男に想いが届かなくて逆ギレした挙げ句、相手をレイプした最低な女だよ」
いくらの軍艦を咀嚼していた高瀬は、一旦口の動きを止めて俺を見つめ、視線に怒りを込めながら再度口を動かす。
「恋敵の情報を得るために、相手の会社まで押しかけて、社員に関係者のふりをして話しかけ、プライベートな話を聞き出すなんて非常識だと思わないのか? 思わないなら、君は自分のしている事はすべて正しいと思い込んでいる、認知の歪んだストーカーだ」
彼女が何か言う前に、俺は立て続けに言葉を浴びせる。
「なぜ自分が加害者だと認められない? 複雑な事情を抱えた家庭で育った自分は〝可哀想〟だから、何をしても許されると思っているのか? 『傷付いてる』? 世の中の誰もが理不尽な出来事で深く傷付いてるんだよ。自分だけが特別だと思うな。ガキか」
俺は腕組みをして高瀬をねめつける。
「人質をとって逆らえないようにして、集団レイプしたお前らはただの犯罪者だ。『好き』って言葉で誤魔化せると思うなよ。亮くんが同意していた? 同意せざるを得ない状況に持ち込んだんだろ? しかもお前が裏切って田町たちに情報を売った。『友達になりたい』と思ったなら、そこで留めておけよ。好きになったなら、失恋した時点で痛みを受け入れ諦めろ。中学生の時にフラれてるのに、二十四歳になった今もストーカーしてるなんて、狂気の沙汰だ」
「あなたに私の何が分かるのよ。私にとって亮がどれだけ特別か、救いの存在だったか分からないくせに」
「分かりたくもねぇよ。それだけ特別視してるなら、どうして亮くんの幸せを願ってあげられない? 諦めて別れを選ぶのも愛だとなぜ分からない? 何度拒絶しても、自分をレイプした相手から付きまとわれ続ける亮くんが可哀想だ。お前の存在そのものが彼を傷つけているんだよ」
「私は亮を愛してるだけだもの! あの女が体で籠絡しているから、亮は真実の愛に気付けないんだわ」
「だからすぐ他責思考になるなよ。亮くんが夕貴を選んだなら、なぜ『自分は選ばれなかった』と諦められない? 悔しいのは分かるが、そこで夕貴に怒りの矛先を向けるのは、ただの八つ当たりだ。お前は過去を捨てて前に進む勇気がないから、いつまでも初恋にしがみついてるだけなんだよ。『新しい男に自分の価値と魅力を教え、夢中にさせて幸せになれる』って自信がないから前に進めないんだ。自尊心の低い奴は依存体質になる。他人に『幸せにしてもらいたい』って甘えた望みを抱いてるから、いつまでも亮くんにこだわるんだ。難関大学を卒業して一流企業に勤めてる女なら、自尊心を満たす方法が沢山あるだろうが」
正論を返した瞬間、高瀬の表情が憎しみで歪んだ。
高瀬は目の奥に苛立ちを込めて言い、俺を睨む。
「彼に愛し返されていると思う?」
「それは……、夕貴さんが彼を誑かしているから」
「夕貴は俺と結婚するって決めたけど」
「……でも二人ともまだ実家にいるんでしょう? 二十代半ばの男女が同じ屋根の下にいて、何もない訳がないでしょ」
夕貴が住まいを変えた事は言う訳にいかないので、俺は曖昧に微笑む。
「そうやって、すべてを他人のせいにするつもり?」
他責思考だと言うと、高瀬はギロリと俺を睨んできた。
「あなたは亮のなんなの? 偉そうに」
握り十貫が運ばれてきて、どれも美味そうだけど、バチバチにやり合っている間に味わえるはずがない。
普通は相手も同じはずなのに、高瀬は「いただきます」と言ってヒラメから順番にパクパク食べ始めた。すげぇ。
「君が知ってる通り、俺は夕貴の婚約者で、亮くんの未来の義兄になる男だよ。だから彼の事も大切に思ってる」
答えると、高瀬は俺を見て嘲笑した。
「嘘を言っては駄目よ。亮は夕貴さんを特別視してる。あなたがそれを知らない訳がないでしょう。婚約者の弟が恋敵なのよ? 私に構っている暇があるなら、亮をなんとかしたら?」
「君さ、さっきからどうしたい訳? 俺を煽って怒らせたい? 自分は亮くんを純粋に想っていると言っておきながら、彼を傷つけた自覚があり、亮くんが夕貴を大切にしている事も認識している。なのに自分と亮くんは親友同士で愛のあるセックスをしたと言い張るのか? 君の話は趣旨が一貫しているようでいて、辻褄が合わないんだよ」
溜め息をついて俺もヒラメの握りを口に入れると、すでにトロを食べ終えた高瀬が日本酒を呷ってから言った。
「あなたこそ何がしたいの? さっきからのらりくらりと。イライラするわ」
「だって君、正論で指摘したら逆ギレするだろ。俺は亮くんと夕貴に関わらないと約束してほしいだけだけど、この雰囲気なら話し合いはずっと平行線のままだ」
「逆ギレするなんて、知性のない女扱いするのはやめてくれる?」
高瀬は帆立、アワビ、ズワイガニ、数の子……と遠慮無く食べ、ウニの軍艦を口に入れる。
(食欲落ちる話してて、よくパクパク食えるな。やっぱり図太い)
溜め息をついた俺は、そろそろ食事が終盤に向かっているのも含め、終わらせようと決意した。
「夕貴と亮くんの側に立っていなくても、ハッキリ言って君はストーカーだし、好きな男に想いが届かなくて逆ギレした挙げ句、相手をレイプした最低な女だよ」
いくらの軍艦を咀嚼していた高瀬は、一旦口の動きを止めて俺を見つめ、視線に怒りを込めながら再度口を動かす。
「恋敵の情報を得るために、相手の会社まで押しかけて、社員に関係者のふりをして話しかけ、プライベートな話を聞き出すなんて非常識だと思わないのか? 思わないなら、君は自分のしている事はすべて正しいと思い込んでいる、認知の歪んだストーカーだ」
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「なぜ自分が加害者だと認められない? 複雑な事情を抱えた家庭で育った自分は〝可哀想〟だから、何をしても許されると思っているのか? 『傷付いてる』? 世の中の誰もが理不尽な出来事で深く傷付いてるんだよ。自分だけが特別だと思うな。ガキか」
俺は腕組みをして高瀬をねめつける。
「人質をとって逆らえないようにして、集団レイプしたお前らはただの犯罪者だ。『好き』って言葉で誤魔化せると思うなよ。亮くんが同意していた? 同意せざるを得ない状況に持ち込んだんだろ? しかもお前が裏切って田町たちに情報を売った。『友達になりたい』と思ったなら、そこで留めておけよ。好きになったなら、失恋した時点で痛みを受け入れ諦めろ。中学生の時にフラれてるのに、二十四歳になった今もストーカーしてるなんて、狂気の沙汰だ」
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「分かりたくもねぇよ。それだけ特別視してるなら、どうして亮くんの幸せを願ってあげられない? 諦めて別れを選ぶのも愛だとなぜ分からない? 何度拒絶しても、自分をレイプした相手から付きまとわれ続ける亮くんが可哀想だ。お前の存在そのものが彼を傷つけているんだよ」
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「だからすぐ他責思考になるなよ。亮くんが夕貴を選んだなら、なぜ『自分は選ばれなかった』と諦められない? 悔しいのは分かるが、そこで夕貴に怒りの矛先を向けるのは、ただの八つ当たりだ。お前は過去を捨てて前に進む勇気がないから、いつまでも初恋にしがみついてるだけなんだよ。『新しい男に自分の価値と魅力を教え、夢中にさせて幸せになれる』って自信がないから前に進めないんだ。自尊心の低い奴は依存体質になる。他人に『幸せにしてもらいたい』って甘えた望みを抱いてるから、いつまでも亮くんにこだわるんだ。難関大学を卒業して一流企業に勤めてる女なら、自尊心を満たす方法が沢山あるだろうが」
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