【R-18】上司と継弟に求められて~私と彼と彼の爛れた生活~

臣桜

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親友と向き合う

「いいんじゃないか? 亮くんには亮くんの人生がある。彼は賢いし、様々なリスクも考えた上で自分の選択をしてると思う。夕貴であっても止める権利はないよ」

 秀弥さんに言われ、私はそれ以上反対するのをやめる。

 それでもスッキリしない顔をしていると、亮が言った。

「『自分のせいで』って思うのは分かる。でもこれは俺の選択だ。仮にうまくいかなくなったとしても、夕貴を責めないし、お前が責任を感じる事じゃない」

「うん……」

 納得しようとしていると、秀弥さんはクシャッと私の頭を撫でて言った。

「夕貴の思考は、責任感が強いとか、他人思いと言えるかもしれないけど、逆を言えば『自分が他人の人生に大きく影響を与えている』っていう思い込みでもあるからな? お前みたいな思考の奴は結構いるけど、世の中、他人中心に生きてる奴ってそういないから。ある意味、ネガティブな意味での自信過剰」

「あ……」

 指摘され、私は赤面する。

「なんでも背負う事はない。俺も亮くんも金を持ってる成人男性だし、夕貴の世話にならなくても勝手に生きていける。姉として弟を心配する気持ちは分かるけど、もっと彼を信頼してあげたら?」

 そう言われて、思い詰めていた気持ちがフワッと軽くなった。

「……ごめん。私、考えすぎてたみたい」

「色々あったから、つい自責思考になるのは分かるけど、夕貴はもっと気軽に生きていいよ」

 亮にも頭を撫でられ、私は気が抜けたように笑う。

 それから志保の事を考えた。

「……私、志保と話してみる。会社は辞めるし、彼女と縁を切ったほうがいいなら、これを機にお別れする。ちゃんと話して彼女の言い分も聞いて、仕方のない事だったなら、これからも友達を続けるかもしれない」

「……甘いな……」

 秀弥さんがボソッと言ったのが聞こえたけれど、気持ちは大体固まっていた。

「傷付くなら一気にドドドッと傷付いて、そのあとゆっくり回復していきたい。志保の事に決着がついたら、実家に帰って両親とも話す」

「分かった。付き合うよ」

 亮が言い、秀弥さんも頷く。

 二人に勇気をもらった私は、ズキズキと痛む胸に耐えながら志保にメッセージを打った。



**



 後日、会社では普通に過ごし、退勤したあとに私は志保と一緒に個室居酒屋に向かった。

 彼女には『話をしたい』としか言っていなかったけれど、最近の志保はソワソワして、例の件について負い目があるように感じられた。

 テーブルを挟んで向かい合わせに座った今も、彼女は必要以上に明るく振る舞い、「どれも美味しそう」とオーダー後もメニューを見ている。

「……志保。……あの、非常に言いづらいけど、私へのクレームメールがあったあと、志保が総務部の人から話を聞いて、噂を広めたって分かったの」

 躊躇いながらも切り出すと、彼女はメニューに視線を落としたまま固まる。

「どうしてか理由を聞いてもいい? 志保に……、…………裏切られたって思いたくなくて」

 しばらく彼女は沈黙したままで、黙っている間に飲み物が運ばれてきてしまった。

「…………悪気はなかったの」

 やがて聞こえた小さな声に、私は「うん」と頷く。

 そのあとも志保は乱れた呼吸を必死に整え、懸命に何かを言おうとしていた。

 私はひたすらに彼女の言葉を待ち、カクテルのグラスの表面に水滴が浮かぶのを見守る。

「…………っ、私、西崎さんが好きだった……っ」

 押し殺した声を聞いた時、私はすべてを理解して胸に深い痛みを覚える。

 彼女の言葉を聞いただけで、大きなガラスの破片にグサリと体を貫かれ、激しい痛みに襲われているような心地になった。

(でも、私には志保の言葉を最後まで聞く責任がある)

 自分に言い聞かせた私は、覚悟を決めて次の言葉を待った。

「……けど、夕貴は友達だし、西崎さんが夕貴を選んだなら祝福しようと思ってた。今までだって失恋した事はあるし、彼氏に浮気された事もあった。好きな人が友達を好きになるぐらい、普通にあるって……」

 志保は顔を真っ赤にし、涙を流して続ける。

「~~~~っ、でも、佐藤愛菜って名乗った高瀬さんに、夕貴が弟くんとも関係してるって教えられて、感情が乱れて制御できなくなったの。『皆が憧れている西崎さんの愛を得たのに、浮気してるの!?』って。しかも血が繋がってないのは分かるけど、弟と! 夕貴の家に遊びに行った時、亮くんに会ったけど、彼も物凄いイケメンじゃない。しかも不動産業の専務で……っ。~~~~だから……っ、妬ましかった……っ」

 私は視線を落とし、志保の告白を黙って聞いていた。
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