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友情の終わり
「夕貴にも事情があるんだろうけど、どうして教えてくれなかったの? 詳しく教えてくれたなら、私だって理解を示せたかもしれないのに。こんなの、裏切りじゃん」
志保に責められて思わず「ごめん」と謝ろうとしたけれど、心の中にいる秀弥さんや亮が「違うだろ」と厳しい表情で言う。
「……志保の好きな人が秀弥さんだとは知らなかった。教えてくれていたら、私も気を遣えたかもしれない」
「言える訳ないじゃん。私、お邪魔虫になるんだよ? 『付き合ってるの分かってるけど、私、西崎さんが好きだから』って言うの? それに『気を遣えたかもしれない』ってなに? 私が西崎さんを好きだって知ったら、身を引いてくれたの?」
引きつった表情で笑う志保を見て、私の心の中にいた親友像がボロボロと崩れていく。
「亮との事は、相談したかったけど言えなかった。連れ子同士といっても普通ではないし、志保に軽蔑されるのが怖かった。……でも誤解を解きたいから言っておくけど、私たち三人、今は合意して三人での関係を結んでいるの。途中では確かに浮気という形になっていたかもしれないけど、当人同士は問題ないという結果になった。……だから……」
そこまで言った時、志保は憎々しげに私を見て言う。
「マジで3Pしてるの? 信じらんない。気持ち悪い」
彼女の言葉が、ザクッと胸に刺さる。
「……そう思ったから、噂を広めたの?」
つらさを堪えて尋ねると、志保は視線を泳がせた。
「私の事が気に食わないから、困らせてやろうと思った? 志保、総務部に仲のいい人いるもんね」
私は必死に感情を押し殺し、淡々と言う。
「……こんなに広まると思わなかったの。高瀬さんが『会社にクレーム入れる』って言ってたから、確認したら案の定で……。あの子だって誰かに言っただろうし、私が言っても言わなくても、同じ結果になってたと思う」
ごまかし笑いをする志保を見て、私は心の底からの失望を得ていた。
「…………私、志保に好かれてると思ってた。沢山遊んだし、旅行にも行ったし、親友だと思ってくれてるんだと感じていた」
そう言うと、彼女は荒っぽい息を吐いた。
「私、夕貴のそういうところが嫌いなんだよね。ウジウジしていつも『私が悪いんです』って顔して、そんな態度をとってたら西崎さんみたいな面倒見のいい人が庇ってくれるもんね?」
「ち……っ、違うよ! これは元からの性格で、狙ってやってる訳じゃない。私は志保みたいに言いたい事をちゃんと言える人に憧れてた。……でも、努力したってできない事ってあるじゃない」
必死に否定すると、志保は溜め息をついて腕組みする。
「…………こうなったら白状するけど、夕貴と一緒に行動してると、男は皆あんたを見る。大人しそうで胸もでかくて、頼んだらすぐヤらせてくれそうだからだと思うけど。だから私は、夕貴より自分のほうが優れてるんだってあんたに思い知らせたかった」
そう言われて、記憶が蘇る。
『夕貴っていっつもそうだよね。だっさ。トロいよね』
『さっきの事、私がやっておいてあげたから。夕貴はどうせできないでしょ?』
『海とかナイトプールとかいいけどさ、夕貴は泳ぐの下手なんだから、行くだけ損じゃない? その魅惑的なボディを男共に見せつけたいなら別だけど』
『その服、可愛いんだけどね~。やっぱり胸が大きいとちょっと野暮ったくなるね。私みたいに普通サイズだとサラッと着こなせると思うけど』
『パンケーキにジュースも頼むの? お茶にしといたら? もっと肉がつくよ』
今まで志保と接していて、引っ掛かる言葉は確かにあった。
でも彼女の性格の一部だと思って、悪気はないんだと思うようにしていた。
けどあれが、すべて地味に私を見下して、傷つけようとしてのものだったなら……。
知らないうちに涙が溢れ、頬を伝っていく。
「泣かないでよ。私が悪者で泣かしてるみたいじゃない」
「……ごめん」
泣き止もうと思うものの、友情と思っていたものがすべて嘘だったと思うと、涙が止まらなかった。
「話は終わりでしょ? 私、帰るわ。夕貴、もう会社辞めるんでしょ? 私たちもこれで終わりにしよう。今まで夕貴にもらった物、後日宅配便で送るね。夕貴も私があげた物がいらなかったら、そうしたら? フリマアプリで売るから」
そう言って、志保は個室から去っていった。
この上なく打ちのめされた私は、声を上げて泣いてしまいそうになるのを堪え、きつく唇を噛んでスカートを握り締める。
黙って歯を食いしばり耐えていると、そのうち料理が運ばれてきてテーブルの上が一杯になってしまう。
(……どうしよう……)
困った私はノロノロとスマホを出し、秀弥さんと亮に助けを求めた。
【一人じゃ食べられません。助けてください】
テーブルの上の料理を写真に撮って一緒に送ったあと、私は深い溜め息をついた。
志保に責められて思わず「ごめん」と謝ろうとしたけれど、心の中にいる秀弥さんや亮が「違うだろ」と厳しい表情で言う。
「……志保の好きな人が秀弥さんだとは知らなかった。教えてくれていたら、私も気を遣えたかもしれない」
「言える訳ないじゃん。私、お邪魔虫になるんだよ? 『付き合ってるの分かってるけど、私、西崎さんが好きだから』って言うの? それに『気を遣えたかもしれない』ってなに? 私が西崎さんを好きだって知ったら、身を引いてくれたの?」
引きつった表情で笑う志保を見て、私の心の中にいた親友像がボロボロと崩れていく。
「亮との事は、相談したかったけど言えなかった。連れ子同士といっても普通ではないし、志保に軽蔑されるのが怖かった。……でも誤解を解きたいから言っておくけど、私たち三人、今は合意して三人での関係を結んでいるの。途中では確かに浮気という形になっていたかもしれないけど、当人同士は問題ないという結果になった。……だから……」
そこまで言った時、志保は憎々しげに私を見て言う。
「マジで3Pしてるの? 信じらんない。気持ち悪い」
彼女の言葉が、ザクッと胸に刺さる。
「……そう思ったから、噂を広めたの?」
つらさを堪えて尋ねると、志保は視線を泳がせた。
「私の事が気に食わないから、困らせてやろうと思った? 志保、総務部に仲のいい人いるもんね」
私は必死に感情を押し殺し、淡々と言う。
「……こんなに広まると思わなかったの。高瀬さんが『会社にクレーム入れる』って言ってたから、確認したら案の定で……。あの子だって誰かに言っただろうし、私が言っても言わなくても、同じ結果になってたと思う」
ごまかし笑いをする志保を見て、私は心の底からの失望を得ていた。
「…………私、志保に好かれてると思ってた。沢山遊んだし、旅行にも行ったし、親友だと思ってくれてるんだと感じていた」
そう言うと、彼女は荒っぽい息を吐いた。
「私、夕貴のそういうところが嫌いなんだよね。ウジウジしていつも『私が悪いんです』って顔して、そんな態度をとってたら西崎さんみたいな面倒見のいい人が庇ってくれるもんね?」
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そう言われて、記憶が蘇る。
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『パンケーキにジュースも頼むの? お茶にしといたら? もっと肉がつくよ』
今まで志保と接していて、引っ掛かる言葉は確かにあった。
でも彼女の性格の一部だと思って、悪気はないんだと思うようにしていた。
けどあれが、すべて地味に私を見下して、傷つけようとしてのものだったなら……。
知らないうちに涙が溢れ、頬を伝っていく。
「泣かないでよ。私が悪者で泣かしてるみたいじゃない」
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泣き止もうと思うものの、友情と思っていたものがすべて嘘だったと思うと、涙が止まらなかった。
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そう言って、志保は個室から去っていった。
この上なく打ちのめされた私は、声を上げて泣いてしまいそうになるのを堪え、きつく唇を噛んでスカートを握り締める。
黙って歯を食いしばり耐えていると、そのうち料理が運ばれてきてテーブルの上が一杯になってしまう。
(……どうしよう……)
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