【R-18】上司と継弟に求められて~私と彼と彼の爛れた生活~

臣桜

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南国のヴィラ

 こちらに来てから知ったけれど、インドネシアではヤモリをチチャと言うようだ。

 体長十センチぐらいでチチチッと小鳥のような可愛らしい声で鳴き、黄色っぽい外見で、クリッとしたつぶらな目が可愛い。

 いっぽうで、トッケイというトカゲもいて、現地ではゲッコーと呼ばれている。

 名前の通り、鳴く時は「ググググ~」と準備をしてから「ゲッコー」と鳴く。

 こちらは割と大きめサイズで両手で掴むほどの個体もあり、薄いグリーンをベースに赤いまだら模様がついている、ちょっとグロテスク、良く言えばカラフルな見た目をしている。

 バリ島は初めてで、日本とは何から何まで文化が違うので、いい気分転換になる。

 ビーチまで行けば白い砂浜にエメラルドグリーンの海、寺院に行くと異文化が感じられ、ジャワ島にあるボロブドゥール遺跡の大きさには、ただただ感心した。

 寺院を回る時、女性は肌を出してはいけないらしく、半袖はOKだけれどノースリーブはNG、ショーパンを穿いている時は入り口で腰巻きを貸してくれる。

 道を歩いていると、道路にお供えのチャナンが置いてあり、踏んでしまわないか戸惑った。

 チャナンはヤシの葉を四角形にしたお皿の中に、お花やパンダンという草を細切りにした物、お米やお菓子、パンなどが入っているお供えで、ヒンドゥー教の教えのもと、神様にも悪霊にも供えられるのだとか。

 高い場所にお供えするのは神様用で、地面に置くのは悪霊用で「悪さをしませんように」という祈りが込められている。

 道を歩いていると蹴散らされたチャナンを見たけれど、秀弥さんいわく、一度お供えしたらそれで用は済むらしく、土に還っても問題ない物でできているのもあり、踏んでも大丈夫なようだ。

 でも気持ち的には落ち着かないので、私は踏まないように気をつけて歩いていた。





 お正月は秀弥さんも招いて家族で過ごしたあと、仕事に縛られなくなった私たちは今までの悪い思い出を忘れる努力をすべく、海外に行く事を決意した。

 亮はまだ父の会社に在籍しているけれど、刺されて入院して以降、休職扱いになっている。

 父は亮に会社を継いでほしいと願っていたけれど、私たちの関係や今回の事件、彼がどういう道を歩みたいと思っているかを再度確認するまで、答えを保留にするらしかった。

 亮がいなくても優秀な重役たちはいるし、彼もまた会社勤めをしなくても充分にやっていける資産を持っている。

 詳細は知らないけれど、秀弥さんも亮も結構な資産のある投資家なので、この先路頭に迷う事はないそうだ。

 そんな彼らにぶら下がって働くのを辞めるのは気が引けるけれど、一連の事で私も疲れ切っていたので、しばらくのんびり過ごす事を決めた。

 頼子さんたちが開いてくれると言った送別会は、事情を話して延期してもらう事にした。

 人のいい彼女たちは心の底から心配してくれ、『いつでもいいから、長谷川さんの気持ちに余裕ができた時にしましょう』と言ってくれた。

 成田空港からデンパサール空港まで、ガルーダ・インドネシア航空の直行便で約八時間。

 私とは金銭感覚の違う秀弥さんが言うには『ビジネスと料金が変わらなくて安い』らしく、ファーストクラスで行く事にした。

 半個室の綺麗なファーストクラスシートでゆったり過ごし、映画も沢山見て、美味しい機内食も食べられて満足だ。

 アメニティはエルメスだったので、ドキドキして持ち帰ってしまった。

 デンパサール空港に着いた時は、ムワッとした熱気と独特の匂いを感じ、南国に来た実感を得る。

 向かったのはバリ島最南端にあるウルワツ地区にあるアリル・ヴィラズ・ウルワツだ。

 せっかくだからと秀弥さんはオーシャンビューのスイートヴィラを予約してくれた。

 チェックインのために入ったメインロビーからは、インフィニティプールの向こうにインド洋、そして大空が続き、夢のような眺めだ。

 ウェルカムドリンクやスイーツを出してもらったあと、カートでヴィラまで移動した。

 広大な敷地の中に六十九棟のヴィラがあるようだけれど、宿泊客しかいないそこは信じられないぐらい静かで、私たちは東京の喧噪を忘れる事ができている。

 バリ島のリゾートというと、南国調らしい雰囲気をイメージしていたけれど、アリルはモダンでシンプルな内装で統一されていて、静けさをいっそう楽しめるようになっていた。

 気を遣ったのか分からないけれどベッドルームが三つある一番いい部屋らしく、あまりに広くて迷子になりそうだ。

 コの字型の大きなソファやダイニングテーブルがあるリビングルームから直接芝生のある庭に出られ、その奥には海が望める。

 庭には広々としたプールとビーチパラソルつきのデッキチェアがあり、海を見ながらぼんやりしていると、色んな事をすべて忘れそうだ。

 部屋のどこに行っても海が見え、または緑に包まれ、シンと静まりかえった室内で聞こえるのは小鳥の鳴き声のみ。

 午前中に少し散歩をした私たちは、お昼から午後の焼け付くような暑さを避けて部屋に戻り、私は疲れからベッドで眠ってしまい、今に至る。
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