【R-18】上司と継弟に求められて~私と彼と彼の爛れた生活~

臣桜

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男は好きな女の前では格好付けていたいんだよ

「秀弥さん、行こう。この人と話していても、ただ悪意をぶつけられるだけだよ。世の中には人を煽るだけ煽って、傷つけて心から楽しむ悪魔みたいな人がいる。そういう人にどれだけ時間を割いても無駄」

 私は秀弥さんの腕を引っ張って立たせる。

「夕貴の言う通りだ。このババアに何を話しても通じない。日本語が分かるだけのチンパンジーだ。……あ、チンパンジーに失礼だな」

 亮もサラッと毒を吐き、ポンと秀弥さんの背中を叩くと歩き始めた。

 秀弥さんは唇をきつく噛み、顔色を失いながらもその場をあとにしようとする。

 ――と、その背中に父親が話しかけた。

「……秀弥。……私はお前と夏帆を守ろうとしたんだ。沙喜を放っておいたら、何をしでかすか分からない。あのままだったら、沙喜はお前たちを破滅に導いていた。……だから私は沙喜の手をとったんだ」

 その言葉を聞き、秀弥さんは足を止める。

「……反応したら駄目だよ」

 私は彼の手を引くけれど、秀弥さんは拳を震わせて父親を振り向いた。

「……っなら! 俺と母さんを少しでも想ってたというなら、一度でも母さんの見舞いに行った事があるのかよ! 『傷つけて悪かった』って謝って、事情があるなら説明するのが筋だろ!? 少なくとも俺はそんな話、一度も聞いた事がなかった! お前はそこの毒婦を選び、母さんは絶望して自殺未遂を繰り返し、今も病院の中だ! ……なのに今になって『守ろうとした』? ふざけんな!」

 秀弥さんは青筋を浮かべて怒鳴ったあと、足早に歩き始めた。

 私はその背中を見てギュッと表情を引き締めると、二人を振り向いて釘を刺した。

「もう二度と、秀弥さんに近づかないでください。私たちに関わらないで。死んだ事になって彼の人生から去ったなら、秀弥さんと言葉を交わす権利をなくしたと思ってください」

「こわーい」

 沙喜さんが煽るように言ったけれど、私は無視して秀弥さんを追いかけた。

 私は冷たくなった砂をギュッギュッと踏み、時々バランスを崩しそうになりながらも、秀弥さんが抱え続けてきた闇を改めて噛み締める。

 彼が私を相手に〝色んな〟プレイをするようになったのは、あの女性に性行為への精神的な歪みを植え付けられたからだ。

 多分、沙喜さんとは、私としていたような多岐にわたるプレイはしていなかったと思う。

 恐らく彼女は一方的に大学生の秀弥さんに迫り、大人の女性の色香で惑わせ、ほぼ強姦に近い形で関係を持っていたんだろう。

 当時の秀弥さんはまだ今みたいに歪みを持っていなかったから、女性を強く拒否できなかったのかもしれない。

 一度関係を持ったあとは、なまじ気持ちよさを知ってしまった分、「断らなきゃいけない」と思いながらも体は快楽を求めてしまった可能性もある。

 男性の性欲のピークは二十歳前後と言うし、その時の秀弥さんの選択を責められない。

 私だって亮に求められるままだったし、私たちは性的な事に対して恋人に〝潔癖〟や〝貞淑〟を求められない関係だ。

 それでも、あの女が秀弥さんの心の奥にいまだ居座っていると思うと、腹立たしい。

 嫉妬している訳じゃなくて、彼がいまだにあんなくだらない女に傷つけられ続けているのが、悔しくて堪らないのだ。

(秀弥さんが安らげる相手になりたいのに、いざという時に役に立てない)

 ビーチを抜けた私は、歯を食いしばって歩き続ける。

 秀弥さんは脚が長い上に歩くのが速く、ずっと先にいた。

 息が切れてきた私は歩く速度を落とし、大きな溜め息をつく。

「カードキーは持ってるから大丈夫だ。……それに、一人で頭を冷やさせてやってもいいんじゃないか?」

 随分前から隣を歩いていた亮が言い、私は「そうだね……」と力なく頷く。

「……でも、一人にして大丈夫かな」

「馬鹿な奴じゃないし、危ない真似はしないだろ。そんな奴なら、がっつり資産築いて、いつ会社を辞めてもいいような男にはなってない。感情のままに刹那的な行動をとってたら、あんな嫌な男にならねーよ。俺がどんだけ煽っても、腹立つぐらい冷静だったんだから」

「……だね。秀弥さん、つらい事が沢山あって、それでも乗り越えたからあんな……、ふてぶてしいって言ったら失礼だけど、タフな性格になったんだろうし」

「そういう奴でも、カッとなったあとは冷静でいられなくなる。……特にトラウマにも関わる事だから、気持ちが落ち着くまで時間を与えてやったほうがいいと思う。寄り添ってやりたい気持ちは理解するけど、……男は好きな女の前では格好付けていたいんだよ。分かってやれ」

 最初と比べて、随分秀弥さんへの態度が軟化した亮を見て、私は思わず微笑む。

「……ありがと」

「……何がだよ」

「何でも」

「…………チッ」

 ニコニコ微笑むと、亮は照れ隠しなのか、舌打ちをしてそっぽを向いた。



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