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第六部・社内旅行 編
食べたい物探知
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(なるほど……。行きたい店はもっと先か)
分かりやすい香澄に内心微笑みつつ、佑は迷うふりをした。
「香澄は何が食べたい?」
「え? 私? 佑さんは? 日本食恋しいでしょう?」
食べたい物があるのに佑を優先してくれようとする。
それがまた可愛くて堪らない。
「どうしようかな……。和食……、でもないし、寿司は馴染みの店で食べたいな」
和食、寿司、と言いつつ、佑は香澄の反応を見てゆく。
「ああ、麺もいいな。ここってうどんの店も入っていたっけ」
「そうだねぇ」
そのとき香澄の口元がニコッと笑い、佑は「ビンゴだ」と内心指を鳴らした。
「香澄、うどんにしようか」
「えっ? 佑さんうどん食べたい?」
「香澄は?」
「……い、いいよ? うどん食べたい!」
その「うまく事が運んでしまったが、乗ってもいいのだろうか?」という表情に、佑は思わず笑い出していた。
「えっ? どうしたの?」
「……っくく……いや。何でもない。うどん食べよう」
うどん店の前まで来ると、佑はウェイティングリストに名前を書き、列の最後尾についた。
佑たちの前に並んでいた若い女性二人は、あからさまに佑を気にしている。
待っている客のための椅子はあるのだが、いかんせん人が並びすぎて立たなければならない。
「香澄、立っていて大丈夫か?」
「うん。松葉杖あるし平気だよ」
佑は香澄の正面に立ち、彼女の髪が崩れない程度に撫でつける。
「この編み込み、自分でやったのか?」
「うん。以前と比べたら上達したでしょう?」
「そうだな。前は一本縛りとか、まとめてクリップで……とかだったな」
少しからかうと、香澄は恥ずかしがって編み込み部分をしきりに撫でる。
「だってああいうの楽だし。こうやって女子力! みたいな髪をするのも、佑さんに褒めてほしいからだよ? 思い出してくれたまえ。私の家での頭を」
最後には芝居がかった口調で言う香澄がおかしくて、佑は笑みが絶えない。
「まぁ、自宅にいる時まで気を張る必要もないしな? でも俺は香澄のサラサラしたストレートヘア、大好きだよ?」
「そう? 一番手がかからない髪型を好きでいてくれて良かった」
彼女と仲睦まじく会話をしているのは、半分計算だ。
これだけいちゃついていれば、余計な声も掛けられないだろうと考えての事である。
しかし――。
「あの……。御劔佑さんですよね?」
前に並んでいた二十代半ばほどの女性が、我慢しきれないというように声を掛けてきた。
香澄はハッとして、反射的に自分の存在を消そうとする。
しかし佑は香澄の手をやんわり握り、「そうですが?」とスッとよそ行きの笑みを浮かべる。
香澄からすればそのオン・オフは明確だろう。
しかしミーハーな女性たちは、彼が内心「邪魔しないでほしい」と思っている事など知るよしもない。
「あの、一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」
「構いませんが、周りの方には配慮をお願いします」
「はい!」
香澄の事はまったく無視して、女性二人はそれぞれスマホを片手に、佑とツーショットを撮る。
「ジャフォットに載せても大丈夫ですか?」
ジャフォットというのは、ジャストフォトと呼ばれる画像投稿アプリの愛称だ。
世界中にユーザーがいて、ジャフォッターという流行語までできた。
「いいですよ」
笑顔で応対する佑に女性二人はキャアッと小さく声を上げ、さっそく画像加工をし始める。
その間に列は少し進み、佑は椅子に香澄を座らせた。
「リハビリはどうだ?」
香澄の前にしゃがみこみ、サマードレス越しに脚に触れると、ギプスの硬さが分かる。
早く彼女の生足に触れたいと思うが、こうさせてしまったのは自分がドイツに連れて行ったせいだ。
そんな佑の苦悩を知らず、香澄はのんびりとした口調で返事をする。
分かりやすい香澄に内心微笑みつつ、佑は迷うふりをした。
「香澄は何が食べたい?」
「え? 私? 佑さんは? 日本食恋しいでしょう?」
食べたい物があるのに佑を優先してくれようとする。
それがまた可愛くて堪らない。
「どうしようかな……。和食……、でもないし、寿司は馴染みの店で食べたいな」
和食、寿司、と言いつつ、佑は香澄の反応を見てゆく。
「ああ、麺もいいな。ここってうどんの店も入っていたっけ」
「そうだねぇ」
そのとき香澄の口元がニコッと笑い、佑は「ビンゴだ」と内心指を鳴らした。
「香澄、うどんにしようか」
「えっ? 佑さんうどん食べたい?」
「香澄は?」
「……い、いいよ? うどん食べたい!」
その「うまく事が運んでしまったが、乗ってもいいのだろうか?」という表情に、佑は思わず笑い出していた。
「えっ? どうしたの?」
「……っくく……いや。何でもない。うどん食べよう」
うどん店の前まで来ると、佑はウェイティングリストに名前を書き、列の最後尾についた。
佑たちの前に並んでいた若い女性二人は、あからさまに佑を気にしている。
待っている客のための椅子はあるのだが、いかんせん人が並びすぎて立たなければならない。
「香澄、立っていて大丈夫か?」
「うん。松葉杖あるし平気だよ」
佑は香澄の正面に立ち、彼女の髪が崩れない程度に撫でつける。
「この編み込み、自分でやったのか?」
「うん。以前と比べたら上達したでしょう?」
「そうだな。前は一本縛りとか、まとめてクリップで……とかだったな」
少しからかうと、香澄は恥ずかしがって編み込み部分をしきりに撫でる。
「だってああいうの楽だし。こうやって女子力! みたいな髪をするのも、佑さんに褒めてほしいからだよ? 思い出してくれたまえ。私の家での頭を」
最後には芝居がかった口調で言う香澄がおかしくて、佑は笑みが絶えない。
「まぁ、自宅にいる時まで気を張る必要もないしな? でも俺は香澄のサラサラしたストレートヘア、大好きだよ?」
「そう? 一番手がかからない髪型を好きでいてくれて良かった」
彼女と仲睦まじく会話をしているのは、半分計算だ。
これだけいちゃついていれば、余計な声も掛けられないだろうと考えての事である。
しかし――。
「あの……。御劔佑さんですよね?」
前に並んでいた二十代半ばほどの女性が、我慢しきれないというように声を掛けてきた。
香澄はハッとして、反射的に自分の存在を消そうとする。
しかし佑は香澄の手をやんわり握り、「そうですが?」とスッとよそ行きの笑みを浮かべる。
香澄からすればそのオン・オフは明確だろう。
しかしミーハーな女性たちは、彼が内心「邪魔しないでほしい」と思っている事など知るよしもない。
「あの、一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」
「構いませんが、周りの方には配慮をお願いします」
「はい!」
香澄の事はまったく無視して、女性二人はそれぞれスマホを片手に、佑とツーショットを撮る。
「ジャフォットに載せても大丈夫ですか?」
ジャフォットというのは、ジャストフォトと呼ばれる画像投稿アプリの愛称だ。
世界中にユーザーがいて、ジャフォッターという流行語までできた。
「いいですよ」
笑顔で応対する佑に女性二人はキャアッと小さく声を上げ、さっそく画像加工をし始める。
その間に列は少し進み、佑は椅子に香澄を座らせた。
「リハビリはどうだ?」
香澄の前にしゃがみこみ、サマードレス越しに脚に触れると、ギプスの硬さが分かる。
早く彼女の生足に触れたいと思うが、こうさせてしまったのは自分がドイツに連れて行ったせいだ。
そんな佑の苦悩を知らず、香澄はのんびりとした口調で返事をする。
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