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第八部・イギリス捜索 編
兄と妹
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『なんで……、なんでぇっ!?』
半狂乱になったエミリアを、エミリアの兄が怒鳴りつけた。
『家の恥晒しめ! お前の顔など二度と見たくなかったが、マティアスに呼ばれて来てみれば……っ!』
激昂したエミリアの兄がもう一度手を振り上げたが、その手をマティアスが強く握った。
『テオ、殴るのは一発でいい』
『離せ! こんな事、許されない! こんな腐りきった女……っ!』
それに逆らい、テオは全力でエミリアに殴ろうとする。
マティアスに羽交い締めされた兄を見て、エミリアは泣き濡れた顔で哀願する。
『お兄様、違うの、違うの! エミは悪くないの! 全部あの子が悪いんだわ! エミからアロクラやカイを奪おうとするんですもの!』
一気に幼児返りしたかのようなエミリアに、全員がギョッとした。
しかしクラウスが冷静な声で告げた。
『エミ、僕らはエミの〝物〟じゃないよ。僕らだって人間で意思がある。もうエミに支配されて恋すらできないなんて、まっぴらなんだ』
『何か言いたい事があるな、警察で事情を話しなよ』
アロイスにも突き放され、エミリアの顔がクシャリと歪む。
『何でそんな意地悪を言うの!? 小さい頃から私の事を可愛いって言ってくれたじゃない! いつだってエミの味方だったでしょう!? エミが二人とカイを好きでいてあげてるんだから、三人とも一生好きな人を作らないのは当たり前でしょう!?』
無茶苦茶な理論を振りかざす、文字通り子供の我が儘を言うエミリアに、双子は話にならないと首を横に振る。
その時、それまで沈黙を貫いていた佑が顔を上げた。
そして地獄の底から響くような低い声で告げる。
『――エミリア。お前を潰す。お前の会社も、お前の背後にいるフランク爺さんも、ぶっ潰してやる。富裕層の横の繋がりがあろうが、今回の醜聞を煽り立てて孤立無援にし、断ち切ってやる』
呪うような声で言われ、エミリアは顔を引き攣らせる。
『カイだってそんな女、愛してないくせに! 何でそんな日本人女と結婚するなんて言うの!? エミに優しくしてくれたじゃない! 私を可愛いって言ってくれたじゃない!』
絶叫するエミリアの声を聞いて、クラウスが「うわ、メンヘラだ」と日本語で呟いた。
『俺は香澄を愛してる! 香澄がどんな目に遭おうが、絶対に結婚するし一生幸せにする! お前なんか知った事か!』
腕にしっかりと香澄を抱き、佑は青筋を浮かべて怒鳴る。
その剣幕に少し押されたエミリアに、一人だけ冷静さを貫いているマティアスが告げた。
『エミ、あんたが脱税して日本の銀行に隠した金は、俺が元の口座に移しておいた。あんたはもう終わりだよ』
彼の言葉を聞き、佑と双子は日本でマティアスが銀行へ向かった理由を知った。
クラウスは『飼い犬に手を噛まれたな』とニヤリと笑う。
彼女は下僕が言った事を理解するまで、数秒を要したようだ。
そして理解したかと思うと、激昂する。
『マティアス!! あなた、オーパの代からメイヤー家に世話になった恩を忘れたの!? あなただっていつも美しい私に仕えられて幸せだって言っていた癖に!!』
美しい顔を歪めて憤怒を露わにするエミリアに、マティアスは顔色を変えず言い放つ。
『恩? そう思ってるのはそっちだけだろう。俺の母さんが病気になった時、メイヤーズは保険金を払ってくれなかった。母さんは死に、父さんは過労死寸前だ。そんな俺たち家族を陰から援助してくれていたのは、アドラーさんだ。彼に〝仕返しをしたいなら、今は堪えて機会を見ろ〟とずっと言われていた。それが〝今〟なんだよ』
ポカンとしたエミリアにマティアスは淡々と言い、最後に少しだけ嘲笑した。
『俺は最初からお前たち一家を憎んでた。顔しか取り柄のない女の我が儘を我慢して聞いてるうちに、俺はどんどん表情や感情をなくしていった。お前の取り巻きたちも、フランク爺さんに握られてる保険金さえなければ、お前の股なんて舐めるかよ。あいつらも可哀想に。勘違い女もここまで来ると逆に哀れだな。――エミリア、お前は世界で一番醜い女だ』
ほとんどの者が検挙され、別荘は静まりかえっている。
いまだ残っている警官は、首謀者であるエミリアが逃げないようにこちらを見張っている。
テオは疲れたように溜め息をつき、黒髪を掻き上げた。
『俺は実家なんてどうでもいい。お前の事はとうに見限ってるし、縁を切ったつもりだった。そのクズを可愛がっている爺さんがどうなろうが、メイヤーズがどうなっても知らない。エミリア、お前はここまでだ』
兄に宣告され、エミリアは床を這いつくばりその脚に縋った。
『ねぇ! エミはずっといい子だったじゃない! お兄様の事ずっと好きだったのよ!? お兄様があんなイギリス女と結婚するから……!』
『妻を侮辱するな!』
その言葉がテオの逆鱗に触れたらしく、エミリアの頬がまた強く叩かれた。
さらにテオはエミリアの腕を掴み、力任せに立たせた。
半狂乱になったエミリアを、エミリアの兄が怒鳴りつけた。
『家の恥晒しめ! お前の顔など二度と見たくなかったが、マティアスに呼ばれて来てみれば……っ!』
激昂したエミリアの兄がもう一度手を振り上げたが、その手をマティアスが強く握った。
『テオ、殴るのは一発でいい』
『離せ! こんな事、許されない! こんな腐りきった女……っ!』
それに逆らい、テオは全力でエミリアに殴ろうとする。
マティアスに羽交い締めされた兄を見て、エミリアは泣き濡れた顔で哀願する。
『お兄様、違うの、違うの! エミは悪くないの! 全部あの子が悪いんだわ! エミからアロクラやカイを奪おうとするんですもの!』
一気に幼児返りしたかのようなエミリアに、全員がギョッとした。
しかしクラウスが冷静な声で告げた。
『エミ、僕らはエミの〝物〟じゃないよ。僕らだって人間で意思がある。もうエミに支配されて恋すらできないなんて、まっぴらなんだ』
『何か言いたい事があるな、警察で事情を話しなよ』
アロイスにも突き放され、エミリアの顔がクシャリと歪む。
『何でそんな意地悪を言うの!? 小さい頃から私の事を可愛いって言ってくれたじゃない! いつだってエミの味方だったでしょう!? エミが二人とカイを好きでいてあげてるんだから、三人とも一生好きな人を作らないのは当たり前でしょう!?』
無茶苦茶な理論を振りかざす、文字通り子供の我が儘を言うエミリアに、双子は話にならないと首を横に振る。
その時、それまで沈黙を貫いていた佑が顔を上げた。
そして地獄の底から響くような低い声で告げる。
『――エミリア。お前を潰す。お前の会社も、お前の背後にいるフランク爺さんも、ぶっ潰してやる。富裕層の横の繋がりがあろうが、今回の醜聞を煽り立てて孤立無援にし、断ち切ってやる』
呪うような声で言われ、エミリアは顔を引き攣らせる。
『カイだってそんな女、愛してないくせに! 何でそんな日本人女と結婚するなんて言うの!? エミに優しくしてくれたじゃない! 私を可愛いって言ってくれたじゃない!』
絶叫するエミリアの声を聞いて、クラウスが「うわ、メンヘラだ」と日本語で呟いた。
『俺は香澄を愛してる! 香澄がどんな目に遭おうが、絶対に結婚するし一生幸せにする! お前なんか知った事か!』
腕にしっかりと香澄を抱き、佑は青筋を浮かべて怒鳴る。
その剣幕に少し押されたエミリアに、一人だけ冷静さを貫いているマティアスが告げた。
『エミ、あんたが脱税して日本の銀行に隠した金は、俺が元の口座に移しておいた。あんたはもう終わりだよ』
彼の言葉を聞き、佑と双子は日本でマティアスが銀行へ向かった理由を知った。
クラウスは『飼い犬に手を噛まれたな』とニヤリと笑う。
彼女は下僕が言った事を理解するまで、数秒を要したようだ。
そして理解したかと思うと、激昂する。
『マティアス!! あなた、オーパの代からメイヤー家に世話になった恩を忘れたの!? あなただっていつも美しい私に仕えられて幸せだって言っていた癖に!!』
美しい顔を歪めて憤怒を露わにするエミリアに、マティアスは顔色を変えず言い放つ。
『恩? そう思ってるのはそっちだけだろう。俺の母さんが病気になった時、メイヤーズは保険金を払ってくれなかった。母さんは死に、父さんは過労死寸前だ。そんな俺たち家族を陰から援助してくれていたのは、アドラーさんだ。彼に〝仕返しをしたいなら、今は堪えて機会を見ろ〟とずっと言われていた。それが〝今〟なんだよ』
ポカンとしたエミリアにマティアスは淡々と言い、最後に少しだけ嘲笑した。
『俺は最初からお前たち一家を憎んでた。顔しか取り柄のない女の我が儘を我慢して聞いてるうちに、俺はどんどん表情や感情をなくしていった。お前の取り巻きたちも、フランク爺さんに握られてる保険金さえなければ、お前の股なんて舐めるかよ。あいつらも可哀想に。勘違い女もここまで来ると逆に哀れだな。――エミリア、お前は世界で一番醜い女だ』
ほとんどの者が検挙され、別荘は静まりかえっている。
いまだ残っている警官は、首謀者であるエミリアが逃げないようにこちらを見張っている。
テオは疲れたように溜め息をつき、黒髪を掻き上げた。
『俺は実家なんてどうでもいい。お前の事はとうに見限ってるし、縁を切ったつもりだった。そのクズを可愛がっている爺さんがどうなろうが、メイヤーズがどうなっても知らない。エミリア、お前はここまでだ』
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『ねぇ! エミはずっといい子だったじゃない! お兄様の事ずっと好きだったのよ!? お兄様があんなイギリス女と結婚するから……!』
『妻を侮辱するな!』
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