【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第八部・イギリス捜索 編

マルコの手助け

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「マルコさん、いるかな」

 時計を確認するとまだ十七時半すぎだ。
 いつもの時間にはいささか早いが、佑の気持ちは急いている。

「エミリア氏が本日の夜にロンドンと仰ったのなら、それは誘い出しである可能性が高いですね」
 河野の言葉を聞いて、いても立ってもいられなくなった。

 現在双子とマティアスは別行動をしており、エミリアが連絡をよこしてくるだろう時間には戻って来ると言っている。
 エレベーターを降りてロビーに向かうと、タイミング良くマルコが妻と一緒に外から戻ってくるところだった。

『マルコ!』
『おお、タスク。今日も待ちぼうけかね?』

 毎回顔を合わせるたびにそう言われ、慣れてしまっている自分がいる。

 佑はマルコの妻であるカロリーナに会釈をし、二人に河野を紹介する。
 そして本題を告げた。

『マルコ、少し内密で聞きたい事があるのですが』

 佑の言葉に、マルコは眉を上げ『ふむ、いいだろう』と上階を指差す。
 そのあと河野も同行の上、マルコの部屋にお邪魔した。

『スィニョール・タスク、お茶はいる?』

 カロリーナに尋ねられたが、佑は首を振った。

『ありがとうございます、カロリーナ。ですがすぐ移動しますので、お気にせず』

 佑の答えにカロリーナは頷き、『私も協力できそうなら何でも聞くわ』とマルコの隣に座った。

『マルコ、非常に聞きづらい事ですが、ロンドンであなたの知り合いに会いませんでしたか? それも、黒い噂のある人物です』

『ほう』

 ずっと停滞して迷っていた佑が活路を見いだした事に感心し、マルコは顎髭を撫でる。

『どういう事か説明してもらってもいいかね? 私も黒い噂となれば慎重にならざるを得ない』

 マルコは微笑んだままだが、瞳の奥に大企業の名誉職に座っている男の威厳がある。

『マルコの信頼を得るために、すべてお話します。他国の企業や名家にも繋がる話ですので、内密にお願いします』

 それから佑は河野に話したように、これまでの事情を私情をなるべく出さず淡々と説明した。

 マルコは黙って聞いていたが、次第にその目に佑への憐憫が籠もる。
 カロリーナも同じ女性であるがゆえに、眉を寄せ首を左右に振っていた。

『……その上で、何か怪しいパーティーに参加しそうな面子をロンドンで見なかったか……という事をお聞きしたかったのです』

 佑が彼を見つめると、マルコは『ふむ……』と何度か頷いた。

『人気のあるイタリアメンズモデルと、昨日ばったり出くわした。バカンスかね? と尋ねたら、含みのある笑いを浮かべて〝パーティーがある〟と言っていた。それかもしれんね』

『そのモデルは何か噂があったのですか?』

『スキャンダルにはなっていないが、過去にドラッグをやったタレントと交流があった。私はその辺りは芋づる式だと思っているからね。昨日会ったのは二人組で、どうやらその〝パーティー〟は招待状がある特別なものらしい』

 佑は目を眇め、顎に手をやって考える。

『その二人はまだロンドンにいるでしょうか?』
『どうだろうな? ザ・ゴールトンに宿泊していると言っていたが』

『すぐ向かいます』

 立ち上がった佑を見て、マルコも席を立つ。

『私も行った方がスムーズに話が進むだろう。カロリーナ、少し出てくるよ』

 マルコは二人の前で妻とキスをし、『さあ行こう』と先に部屋を出る。





 佑たちが泊まっているリッチ・カーティスはバッキンガム宮殿の近くにあるが、宮殿側のグリーン・パークとバッキンガム宮殿庭園を通り抜けた所に、ザ・ゴールトンがある。

 いつもなら歩いてすぐの距離だが、急ぎの用という事でマルコがタクシーを拾った。
 公園に沿うルートで車は走り、ユニオンジャックが掲げられた五つ星ホテルの前で停まった。

 タクシー料金はマルコがカードでサッと払ってしまい、『君にはあとでお返しをしてもらうとも』と、チャーミングにウィンクをした。

 ホテル前でマルコはスマホを弄り、すぐにイタリア語で誰かと会話し始めた。

『アレッサンドロ? 今どこにいるかね?』

 どうやらアレッサンドロというのが、例のモデルの名前らしい。
 返事を聞き、マルコは深い笑みを浮かべた。

『そのパーティーとやらに参加するのは、よしておきたまえ。恐らく警察がそちらに向かうだろう』

 マルコの電話の向こうから驚いた声が聞こえ、佑はロンドンの喧噪のなか耳を澄ます。
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