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第十七部・クリスマスパーティー 編
メイクアップ
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「あ、時計は見やすさ重視のタイプね。りょーかい。僕もそんな感じだよ」
シンプルな文字盤の周りにガラスのフレームがある壁時計を見て、クラウスが頷く。
「腕時計もなんですが、目盛りのないお洒落重視のって、どうにも慣れないんですよね。分単位できっちり分かる時計の方が安心できるというか」
「分かるよ。じゃあ、今度カスミにプレゼントする腕時計はそういうのにするね」
「あっ! そ、そうじゃなくて……」
「いーから! じゃ、ここ座って」
クラウスに腕を引っ張られ、香澄はドレッサーの椅子に座る。
「アロはメイクとヘアどっちやる? 僕はカスミの髪を触りまくりたいな」
「いいよ、じゃあ俺はメイクやる。カスミの顔を至近距離で見られるの、役得!」
「ううう……」
双子はそれぞれに役割を決め、ドレッサーにあるコスメアイテムをチェックしていく。
「OK、必要な物は……っていうかファンデーションも色んなタイプが揃ってるみたいだね。これ揃えたのタスクでしょ? さすが変態」
「へ、変態って……」
「好きな女の好みの物を揃えるっていうより、何があっても備えられるようにオールラウンドで揃えるのは変態でしょ」
よく分からない事を言ってから、アロイスはパン、と手を打ち鳴らした。
それからグロータイプの化粧下地を香澄の頬や鼻筋、額と化粧が崩れやすい部分に置き、スポンジで伸ばしていく。色はパープル系の透明感を増すタイプの物だ。
後ろではクラウスがが香澄の髪を豚毛のブラシで梳かし始める。
(う……うう……)
正直、馴染みの美容師の陣内以外、佑ではない男性に顔や髪を触られるのに慣れていない。
陣内は仕事で美容師をしている人で、個人的な感情は何もない。
だが双子はプライベートの付き合いがある人で、ドイツ人のイケメンだ。
好きではなくてもドキドキしてしまう。
「カスミはやっぱり肌が綺麗だね。コンシーラーほぼ要らないかも。聞いとくけど、さっき使った化粧水とかは水分が多いタイプ? 油分が多いタイプ?」
アロイスに尋ねられ、香澄は戸惑う。
「え……と、そこまではよく分かりません。使っているのはポーイドラテの普通肌用です。一応、ティッシュオフもしておきました」
「ふぅん? シャバシャバした奴だからOKか。ツヤ肌のメイクって、基礎化粧品が油分の多い物だと、ツヤじゃなくてテカって見えるんだよね」
「な、なるほど……」
クラウスはマティアスに洗面所からコテを持ってこさせ、香澄の髪を緩く巻いている。
アロイスはツヤタイプのリキッドファンデーションにリキッドハイライトをほんの少し混ぜる。そして先ほどと同じ場所にポンポンと置き、スポンジで伸ばしていく。
「こうすると肌にツヤが出るよ。あんまり使いすぎるとテッカテカになるけど」
「は、はい。それにしても凄い手さばきですね。プロのメイクアップアーティストさんみたいです」
「暇な時は女の子の顔を弄って遊んでたからね。セックスもしたくない時。付き合ってた女の子たちの中にそういう職業の子がいたってのもあるし。あ、ファンデーションの量、ほっぺは少し多め、他は少なめね。むしろ中心部につける程度でいいかも」
「はぁ……」
双子の〝今まで〟についてあまり興味はないが、まったく知りたくないと言う訳でもない。
自分とはまったく異なる価値観を持った人が、どのように過ごしていたかというのは、興味半分で知りたい気持ちはある。
そのあとアロイスはスティックハイライトを指に取り、鼻筋や頬の高い場所にさり気なくつける。
そしてボルドーのクリームチークを使い、ほんのりと色づく程度に頬に色をつけた。
「パウダーチークでもいいけど、ツヤと透明感のある肌を目指す場合、クリームチークかな。まぁ、色んなやり方があるけど」
「はい」
「これは仕上げのローション。カスミ、使ってた?」
「え、えっと……。それはまだ使った事がなくて。フィックススプレーならしているんですが」
香澄の目の前でアロイスはスポンジにミストローションを含ませ、肌をトントンと軽く叩いていく。
「これやると、余計なファンデーションが取れるし、肌に水分も与えられるんだよ」
「あ、ありがとうございます……」
「このベース作って外出先でツヤが取れたら、乾燥してマットになった証拠だから、美容オイルとかをオンするといいよ。スキンケアとしても使える奴がいいね」
「はぁ……」
双子からこういう事をみっちり教わりたいと思うが、〝何か〟を対価として求められそうで聞けずにいる。
いっぽうクラウスは髪の毛を巻き終わり、香澄の髪の毛をざっくりとしたポニーテールにして、ヘアゴム隠しのためにねじった髪の毛を巻き付けている。
シンプルな文字盤の周りにガラスのフレームがある壁時計を見て、クラウスが頷く。
「腕時計もなんですが、目盛りのないお洒落重視のって、どうにも慣れないんですよね。分単位できっちり分かる時計の方が安心できるというか」
「分かるよ。じゃあ、今度カスミにプレゼントする腕時計はそういうのにするね」
「あっ! そ、そうじゃなくて……」
「いーから! じゃ、ここ座って」
クラウスに腕を引っ張られ、香澄はドレッサーの椅子に座る。
「アロはメイクとヘアどっちやる? 僕はカスミの髪を触りまくりたいな」
「いいよ、じゃあ俺はメイクやる。カスミの顔を至近距離で見られるの、役得!」
「ううう……」
双子はそれぞれに役割を決め、ドレッサーにあるコスメアイテムをチェックしていく。
「OK、必要な物は……っていうかファンデーションも色んなタイプが揃ってるみたいだね。これ揃えたのタスクでしょ? さすが変態」
「へ、変態って……」
「好きな女の好みの物を揃えるっていうより、何があっても備えられるようにオールラウンドで揃えるのは変態でしょ」
よく分からない事を言ってから、アロイスはパン、と手を打ち鳴らした。
それからグロータイプの化粧下地を香澄の頬や鼻筋、額と化粧が崩れやすい部分に置き、スポンジで伸ばしていく。色はパープル系の透明感を増すタイプの物だ。
後ろではクラウスがが香澄の髪を豚毛のブラシで梳かし始める。
(う……うう……)
正直、馴染みの美容師の陣内以外、佑ではない男性に顔や髪を触られるのに慣れていない。
陣内は仕事で美容師をしている人で、個人的な感情は何もない。
だが双子はプライベートの付き合いがある人で、ドイツ人のイケメンだ。
好きではなくてもドキドキしてしまう。
「カスミはやっぱり肌が綺麗だね。コンシーラーほぼ要らないかも。聞いとくけど、さっき使った化粧水とかは水分が多いタイプ? 油分が多いタイプ?」
アロイスに尋ねられ、香澄は戸惑う。
「え……と、そこまではよく分かりません。使っているのはポーイドラテの普通肌用です。一応、ティッシュオフもしておきました」
「ふぅん? シャバシャバした奴だからOKか。ツヤ肌のメイクって、基礎化粧品が油分の多い物だと、ツヤじゃなくてテカって見えるんだよね」
「な、なるほど……」
クラウスはマティアスに洗面所からコテを持ってこさせ、香澄の髪を緩く巻いている。
アロイスはツヤタイプのリキッドファンデーションにリキッドハイライトをほんの少し混ぜる。そして先ほどと同じ場所にポンポンと置き、スポンジで伸ばしていく。
「こうすると肌にツヤが出るよ。あんまり使いすぎるとテッカテカになるけど」
「は、はい。それにしても凄い手さばきですね。プロのメイクアップアーティストさんみたいです」
「暇な時は女の子の顔を弄って遊んでたからね。セックスもしたくない時。付き合ってた女の子たちの中にそういう職業の子がいたってのもあるし。あ、ファンデーションの量、ほっぺは少し多め、他は少なめね。むしろ中心部につける程度でいいかも」
「はぁ……」
双子の〝今まで〟についてあまり興味はないが、まったく知りたくないと言う訳でもない。
自分とはまったく異なる価値観を持った人が、どのように過ごしていたかというのは、興味半分で知りたい気持ちはある。
そのあとアロイスはスティックハイライトを指に取り、鼻筋や頬の高い場所にさり気なくつける。
そしてボルドーのクリームチークを使い、ほんのりと色づく程度に頬に色をつけた。
「パウダーチークでもいいけど、ツヤと透明感のある肌を目指す場合、クリームチークかな。まぁ、色んなやり方があるけど」
「はい」
「これは仕上げのローション。カスミ、使ってた?」
「え、えっと……。それはまだ使った事がなくて。フィックススプレーならしているんですが」
香澄の目の前でアロイスはスポンジにミストローションを含ませ、肌をトントンと軽く叩いていく。
「これやると、余計なファンデーションが取れるし、肌に水分も与えられるんだよ」
「あ、ありがとうございます……」
「このベース作って外出先でツヤが取れたら、乾燥してマットになった証拠だから、美容オイルとかをオンするといいよ。スキンケアとしても使える奴がいいね」
「はぁ……」
双子からこういう事をみっちり教わりたいと思うが、〝何か〟を対価として求められそうで聞けずにいる。
いっぽうクラウスは髪の毛を巻き終わり、香澄の髪の毛をざっくりとしたポニーテールにして、ヘアゴム隠しのためにねじった髪の毛を巻き付けている。
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