1,062 / 1,589
第十七部・クリスマスパーティー 編
クリスマスの妖精
しおりを挟む
「いやぁ、女の子のこのルーズっぽい髪っていいよねぇ。隙のあるうなじってかぶりつきたくなる」
「ふぁっ!」
そう言ったクラウスにうなじをくすぐられ、香澄は肩を跳ねさせてくすぐったがる。
「クラウス、Warte」
いきなりマティアスがドイツ語の犬用コマンドを出し、クラウスが「だーかーらー!」と彼を振り向く。
「タスクもだけどさ、僕らに犬用コマンド使うのやめてよねー」
嫌がりつつも、その顔は笑っているので彼の本音が分からない。
その間、アロイスは香澄の目蓋にアイプライマーを塗りハイライトとコンシーラーで目元のくすみを飛ばしてから、パウダーで押さえる。
「下地のあとにパウダーしておくと、マスカラが落ちにくいよ」
そしてビューラーで睫毛を上げ、「クリスマス用」と赤みがかったブラウンやゴールドのアイシャドウでグラデーションを作っていく。
「このグリッター可愛いし使おうか」
そう言って偏光パールのグリッターを、目蓋の中央と下目蓋にトントンとつけていく。
「ん、可愛いね。クリスマスの妖精みたいだ」
アロイスは素のまま口説く様子もなく呟き、香澄のメイクを続ける。
「マスカラつけるから、ちょっと半眼気味になって」
「はい」
言われたとおり伏し目になると、アロイスはマスカラ下地を付けた後に、ボルドーのカラーマスカラをつけ、仕上げに金色のラメマスカラを睫毛に絡める。
それからノーズシャドウ、アイブロウで眉毛を描いたあと、やはりボルドーのアイブロウマスカラで眉毛を赤っぽく仕上げていく。
「さて、仕上げにリップを美味しそうな色にしよっか。俺好みのグラデリップにするよ」
「グラデ……ーションリップ?」
きょとんとする香澄の目の前でリップやリップティントの色を確認しつつ、アロイスが返事をする。
「そ。仕組みは簡単なワケ。コンシーラーでさっき輪郭消したでしょ? 薄い色のティントを全体に塗って、あとから同系色かつ色の濃いのを中心にポンポン置くんだ。で、指とか筆でぼかしたら終わり。クラ、何系統がいいと思う?」
香澄に答え、アロイスは弟に意見を尋ねる。
「んー、目元とかにボルドー使ったから、薄めの色のがいいんでない? 僕は個人的にチェリーレッドみたいな美味しそうな色が好きだけど。今使うにはちょっと濃いかな?」
「あー、俺もその色味好き。強い女の場合、ダークカラーのリップも似合ってて好きだけど。ヌードカラーのナチュラル感もいいよね。まー、今のカスミの場合、可愛い系だよね。透明感重視……と」
言いながら、アロイスは沢山リップの入った引き出しを確認する。
「この仕上がり見たら、タスク怒るぞ。たっのしみ」
くくく、と笑っている双子を見ていると、何とも言えない気持ちになる。
「お二人とも、佑さんに怒られるの好きなんですか?」
そう言った途端、双子がバッと香澄を見て物凄い顔をした。
「まさか! そんな趣味ないよ!」
「そうそう! 嫌がらせをするのが楽しいだけでさ!」
(まったくもう……)
呆れている香澄の目の前でリップカラーが決まったらしく、アロイスが香澄に指示を出してくる。
「カスミ、ちょっと唇を半開きにしてみて。そうそう」
言われた通り少し唇を開くと、リップブラシを使ってアロイスが先にリッププランパーを塗り、「んってして」とティッシュオフさせてくる。
それから、リップティントを唇に重ねてきた。
塗られるまま鏡を見ていると、リップカラーはプルンとしたピンクだ。
「リップティントとかグロス、オイルとか、チップタイプになっていると直接唇につけがちだけど、唾液がついて雑菌沸きやすくなるから、なるべくリップブラシを使うといいよ」
言われて香澄はギクッとする。
確かにそのまま使っている美容オイルは、チップの部分が少し匂うような気がして気になっていたのだ。
「化粧品も消費期限があるからねー。まぁ、こんだけ取りそろえておきながら、全部数か月以内に使うとか無理ゲーだけど。コスメって見た目変わんないように思えるけど、皮脂のついたブラシとかつけてると、そっから雑菌広がってくからね。ブラシもマメに洗わないと」
メイクブラシは専用のクリーナーで定期的に洗っているので、一応そこはクリアだと香澄は思った。
だが今は口を開いていて、クラウスに何か返事ができる状況ではない。
「カスミ、唇閉じないでね」
リップティントを塗り終えたアロイスは、唇の内側に塗るワントーン濃い色のリップを取りだし、ティッシュで軽く拭いたリップブラシで塗ってくる。
(はずかし……)
すぐ目の前にイケメンがいて、唇を見られているのは非常に恥ずかしい。
一生懸命呼吸を抑えているものの、アロイスとは言えイケメンの手に自分の吐息や鼻息がかかっていると思うと、恥ずかしくてのたうち回りたくなる。
「ふぁっ!」
そう言ったクラウスにうなじをくすぐられ、香澄は肩を跳ねさせてくすぐったがる。
「クラウス、Warte」
いきなりマティアスがドイツ語の犬用コマンドを出し、クラウスが「だーかーらー!」と彼を振り向く。
「タスクもだけどさ、僕らに犬用コマンド使うのやめてよねー」
嫌がりつつも、その顔は笑っているので彼の本音が分からない。
その間、アロイスは香澄の目蓋にアイプライマーを塗りハイライトとコンシーラーで目元のくすみを飛ばしてから、パウダーで押さえる。
「下地のあとにパウダーしておくと、マスカラが落ちにくいよ」
そしてビューラーで睫毛を上げ、「クリスマス用」と赤みがかったブラウンやゴールドのアイシャドウでグラデーションを作っていく。
「このグリッター可愛いし使おうか」
そう言って偏光パールのグリッターを、目蓋の中央と下目蓋にトントンとつけていく。
「ん、可愛いね。クリスマスの妖精みたいだ」
アロイスは素のまま口説く様子もなく呟き、香澄のメイクを続ける。
「マスカラつけるから、ちょっと半眼気味になって」
「はい」
言われたとおり伏し目になると、アロイスはマスカラ下地を付けた後に、ボルドーのカラーマスカラをつけ、仕上げに金色のラメマスカラを睫毛に絡める。
それからノーズシャドウ、アイブロウで眉毛を描いたあと、やはりボルドーのアイブロウマスカラで眉毛を赤っぽく仕上げていく。
「さて、仕上げにリップを美味しそうな色にしよっか。俺好みのグラデリップにするよ」
「グラデ……ーションリップ?」
きょとんとする香澄の目の前でリップやリップティントの色を確認しつつ、アロイスが返事をする。
「そ。仕組みは簡単なワケ。コンシーラーでさっき輪郭消したでしょ? 薄い色のティントを全体に塗って、あとから同系色かつ色の濃いのを中心にポンポン置くんだ。で、指とか筆でぼかしたら終わり。クラ、何系統がいいと思う?」
香澄に答え、アロイスは弟に意見を尋ねる。
「んー、目元とかにボルドー使ったから、薄めの色のがいいんでない? 僕は個人的にチェリーレッドみたいな美味しそうな色が好きだけど。今使うにはちょっと濃いかな?」
「あー、俺もその色味好き。強い女の場合、ダークカラーのリップも似合ってて好きだけど。ヌードカラーのナチュラル感もいいよね。まー、今のカスミの場合、可愛い系だよね。透明感重視……と」
言いながら、アロイスは沢山リップの入った引き出しを確認する。
「この仕上がり見たら、タスク怒るぞ。たっのしみ」
くくく、と笑っている双子を見ていると、何とも言えない気持ちになる。
「お二人とも、佑さんに怒られるの好きなんですか?」
そう言った途端、双子がバッと香澄を見て物凄い顔をした。
「まさか! そんな趣味ないよ!」
「そうそう! 嫌がらせをするのが楽しいだけでさ!」
(まったくもう……)
呆れている香澄の目の前でリップカラーが決まったらしく、アロイスが香澄に指示を出してくる。
「カスミ、ちょっと唇を半開きにしてみて。そうそう」
言われた通り少し唇を開くと、リップブラシを使ってアロイスが先にリッププランパーを塗り、「んってして」とティッシュオフさせてくる。
それから、リップティントを唇に重ねてきた。
塗られるまま鏡を見ていると、リップカラーはプルンとしたピンクだ。
「リップティントとかグロス、オイルとか、チップタイプになっていると直接唇につけがちだけど、唾液がついて雑菌沸きやすくなるから、なるべくリップブラシを使うといいよ」
言われて香澄はギクッとする。
確かにそのまま使っている美容オイルは、チップの部分が少し匂うような気がして気になっていたのだ。
「化粧品も消費期限があるからねー。まぁ、こんだけ取りそろえておきながら、全部数か月以内に使うとか無理ゲーだけど。コスメって見た目変わんないように思えるけど、皮脂のついたブラシとかつけてると、そっから雑菌広がってくからね。ブラシもマメに洗わないと」
メイクブラシは専用のクリーナーで定期的に洗っているので、一応そこはクリアだと香澄は思った。
だが今は口を開いていて、クラウスに何か返事ができる状況ではない。
「カスミ、唇閉じないでね」
リップティントを塗り終えたアロイスは、唇の内側に塗るワントーン濃い色のリップを取りだし、ティッシュで軽く拭いたリップブラシで塗ってくる。
(はずかし……)
すぐ目の前にイケメンがいて、唇を見られているのは非常に恥ずかしい。
一生懸命呼吸を抑えているものの、アロイスとは言えイケメンの手に自分の吐息や鼻息がかかっていると思うと、恥ずかしくてのたうち回りたくなる。
33
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜
yuzu
恋愛
人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて……
「オレを好きになるまで離してやんない。」
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる