1,128 / 1,589
第十八部・麻衣と年越し 編
マティアスの呼び出し
しおりを挟む
「香澄と麻衣さんは、せっかくだから景色を楽しめる側に座るといい」
彼に言われ、香澄たちは並んで座る。
「俺はここでいい」
マティアスは麻衣が座っている側の下座に座り、佑は「じゃあ俺はこっち」と香澄が座っている側の上座に座る。
双子たちは香澄と麻衣の向かいだ。
「すでにコースを予約してあるけど、麻衣さんはアレルギーとか苦手な食べ物はない? 香澄からは特にないと聞いたけど」
「ありません。何でも食べます」
きぱっと言い切った麻衣の返事を聞いて、佑はクシャッと笑うと、そのままクックック……と笑い崩れた。
双子も爆笑している。
「どうしたの? 佑さん」
香澄は彼らが麻衣をバカにしているなら、一言もの申すという表情で尋ねた。
「……いや、香澄の仲良しは香澄と同じ事を言うなって思って。健康的で宜しい」
「…………」
「…………」
だがそう言われ、香澄は親友と顔を見合わせて、じわ……と赤面する。
「だって……ねぇ?」
「ねぇ? 好き嫌いがないのは自慢だもんねぇ?」
ポソポソと言い合う姿がツボだったのか、佑たちはさらにクックック……と笑っていた。
その後、コース料理の準備をしてもらう事にし、飲み物をオーダーする。
「やっぱり本社に来たならビール飲まないとね! いやぁ、昼間っからビール最高!」
みんなで乾杯をしたあと、麻衣はくーっとビールを呷ってご機嫌に言う。
「マイっていけるクチなんだね? ドイツに来てビール飲み比べしてみない? 日本のビールとはまた違いがあって面白いよ」
クラウスに誘われ、麻衣は笑顔で頷く。
「ドイツってビールが有名ですよね。香澄に写真を送ってもらったんですけど、バカでかいジョッキやグラスがあって『飲んでみたいなー』って思いました」
興味を示したからか、アロイスが得意げに言う。
「日本やベルギーのビールも美味いけど、俺たちはやっぱり祖国のビールを推すね。地方性があって面白いよ。俺たちが住んでいるブルーメンブラットヴィルは南部なんだけど、南部はフルーティーなんだ。北部に行くとどんどん辛くなっていくよ」
地方性を教えられ、麻衣は興味津々だ。
「へぇ~! 面白い。いつか行ってみたいです。でもツアーなら、定番の観光スポット巡りになるから……。そういうのは二回目以降かな。どう思う? 香澄」
親友に意見を求められ、香澄も考える。
「確かにツアーだと見たい所が凝縮されてお得かも。その分、自由度は低いよね」
そう言った時、クラウスが二人に向かって両手を突きだした。
「ハイハイ、何言ってんの。僕らのジェットに乗せてひとっ飛びに決まってるじゃん。パスポートさえ持ってれば、ガイド不要、通訳不要であちこち連れてってあげるよ」
「あはは、ありがとうございます。魅力的ですね」
麻衣はまた、マティアスの時と同じ対応をする。
一般的に考えれば、ドイツ旅行を負担するなど高額すぎる。
初対面の人に言われても、普通ならリップサービスとしか思わないだろう。
(でもね……。この人たちが言う事って全部本気なんだよ……)
香澄は生ぬるい表情で、親友に心の中で語りかける。
――と、それまで黙っていたマティアスが口を開いた。
「マイ、ちょっといいか?」
彼は親指で個室の外を示し、「二人きりで話したい」と伝えている。
「はい? 構いませんが」
麻衣は立ち上がり、マティアスと一緒に個室から出ていった。
「あいつ結構、行動的だな?」
「だな。ちょっとビックリしてる」
双子がそう言い、香澄は「ん?」となる。
「横槍を入れずに、したいようにさせてやれよ」
佑も会話に加わり、昼ビールを楽しむ。
(え? この雰囲気って……もしかして……)
ピーン、ときた香澄は、出入り口のほうを気にしつつ、コソコソと三人に向かって尋ねた。
「もしかしてマティアスさんって、麻衣を……?」
「今頃気づいたの? カスミ」
「応援してやろーね」
「…………!」
瞬間、香澄の表情がパァッと明るくなり、直後、思い切りにやついた。
「んっふふふふふふ…………! ふー!」
「カスミ、怖い」
「あーあー。カスミのスイッチ入っちゃったよ」
双子が苦笑する中、佑がもっともな事を言ってくる。
彼に言われ、香澄たちは並んで座る。
「俺はここでいい」
マティアスは麻衣が座っている側の下座に座り、佑は「じゃあ俺はこっち」と香澄が座っている側の上座に座る。
双子たちは香澄と麻衣の向かいだ。
「すでにコースを予約してあるけど、麻衣さんはアレルギーとか苦手な食べ物はない? 香澄からは特にないと聞いたけど」
「ありません。何でも食べます」
きぱっと言い切った麻衣の返事を聞いて、佑はクシャッと笑うと、そのままクックック……と笑い崩れた。
双子も爆笑している。
「どうしたの? 佑さん」
香澄は彼らが麻衣をバカにしているなら、一言もの申すという表情で尋ねた。
「……いや、香澄の仲良しは香澄と同じ事を言うなって思って。健康的で宜しい」
「…………」
「…………」
だがそう言われ、香澄は親友と顔を見合わせて、じわ……と赤面する。
「だって……ねぇ?」
「ねぇ? 好き嫌いがないのは自慢だもんねぇ?」
ポソポソと言い合う姿がツボだったのか、佑たちはさらにクックック……と笑っていた。
その後、コース料理の準備をしてもらう事にし、飲み物をオーダーする。
「やっぱり本社に来たならビール飲まないとね! いやぁ、昼間っからビール最高!」
みんなで乾杯をしたあと、麻衣はくーっとビールを呷ってご機嫌に言う。
「マイっていけるクチなんだね? ドイツに来てビール飲み比べしてみない? 日本のビールとはまた違いがあって面白いよ」
クラウスに誘われ、麻衣は笑顔で頷く。
「ドイツってビールが有名ですよね。香澄に写真を送ってもらったんですけど、バカでかいジョッキやグラスがあって『飲んでみたいなー』って思いました」
興味を示したからか、アロイスが得意げに言う。
「日本やベルギーのビールも美味いけど、俺たちはやっぱり祖国のビールを推すね。地方性があって面白いよ。俺たちが住んでいるブルーメンブラットヴィルは南部なんだけど、南部はフルーティーなんだ。北部に行くとどんどん辛くなっていくよ」
地方性を教えられ、麻衣は興味津々だ。
「へぇ~! 面白い。いつか行ってみたいです。でもツアーなら、定番の観光スポット巡りになるから……。そういうのは二回目以降かな。どう思う? 香澄」
親友に意見を求められ、香澄も考える。
「確かにツアーだと見たい所が凝縮されてお得かも。その分、自由度は低いよね」
そう言った時、クラウスが二人に向かって両手を突きだした。
「ハイハイ、何言ってんの。僕らのジェットに乗せてひとっ飛びに決まってるじゃん。パスポートさえ持ってれば、ガイド不要、通訳不要であちこち連れてってあげるよ」
「あはは、ありがとうございます。魅力的ですね」
麻衣はまた、マティアスの時と同じ対応をする。
一般的に考えれば、ドイツ旅行を負担するなど高額すぎる。
初対面の人に言われても、普通ならリップサービスとしか思わないだろう。
(でもね……。この人たちが言う事って全部本気なんだよ……)
香澄は生ぬるい表情で、親友に心の中で語りかける。
――と、それまで黙っていたマティアスが口を開いた。
「マイ、ちょっといいか?」
彼は親指で個室の外を示し、「二人きりで話したい」と伝えている。
「はい? 構いませんが」
麻衣は立ち上がり、マティアスと一緒に個室から出ていった。
「あいつ結構、行動的だな?」
「だな。ちょっとビックリしてる」
双子がそう言い、香澄は「ん?」となる。
「横槍を入れずに、したいようにさせてやれよ」
佑も会話に加わり、昼ビールを楽しむ。
(え? この雰囲気って……もしかして……)
ピーン、ときた香澄は、出入り口のほうを気にしつつ、コソコソと三人に向かって尋ねた。
「もしかしてマティアスさんって、麻衣を……?」
「今頃気づいたの? カスミ」
「応援してやろーね」
「…………!」
瞬間、香澄の表情がパァッと明るくなり、直後、思い切りにやついた。
「んっふふふふふふ…………! ふー!」
「カスミ、怖い」
「あーあー。カスミのスイッチ入っちゃったよ」
双子が苦笑する中、佑がもっともな事を言ってくる。
23
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる