【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第十九部・マティアスと麻衣 編

好きな物を食え

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「……お肉とかガッツリしたのを選んだら、『そんなの食べるから太るんだ』って思われそうで怖い。痩せてる子は皆サラダを食べてる。……私は肉が大好きだから、女っぽくないと思われそうで……怖い」

 またマティアスの前で、自分の弱い部分を晒してしまった。

 あまりに恥ずかしくて、声が少し震えてしまう。

 俯いていると、向かいに座っていたマティアスが立ち、麻衣の隣に座った。

「えっ!? えっ……」

 皆の前で触れられるのかと思い、麻衣はとっさに立とうとした。

 だが腕を引っ張られ、座らされた。

 マティアスは麻衣の両腕をしっかり掴み、まっすぐ見つめてくる。

「好きな物を食え」

 短く言われ、ドキンッと心臓が跳ね上がった。

「〝周り〟とか〝皆〟とか、そんなものを気にするな。今マイとデートしているのは俺だ。俺はマイが喜ぶ顔を見たい。なのにマイはどうして名前も知らない奴らに遠慮するんだ?」

 じわっ……と喜びが胸の奥から溢れてくる。

 涙ぐんだ麻衣に、マティアスはさらに言う。

「ドイツの女性は遠慮しないぞ。大きなジョッキで好きなだけビールを飲む。肉を食べてソーセージをたらふく食べて、でかい口を開いて豪快に笑う。誰にも遠慮しない。体が大きかろうが痩せていようが、好きな物を食べる」

「でも……ドイツの女性って痩せててモデルさんみたいじゃないの?」

「個人差がある。日本でもそうだろう? 誰かに遠慮して食べるのを遠慮して、何が楽しい? 人生は長いようで短い。食べる事が好きなら、好きな物を食べて過ごせ。誰かのために痩せようと思わなくていい。いつか『痩せたい』と思ったなら、その時に頑張ればいい。だが俺や他人のために遠慮するな」

 マティアスの言葉が、胸の奥に染みこんでいく。

 麻衣は痩せている友達を「可愛い」と思い、香澄は自分の推しだと思っている。

 羨ましいと思う気持ちがあるのは否めないが、大好きな友達には幸せになってほしいと本気で思っている。

 逆に有名人や、SNSに出てくる自撮り女子を見て、冷めた気持ちになっているのも事実だ。

 香澄に影響を受けて、SNSなどでコスメを検索すると、インフルエンサーによるメイク動画や新作紹介投稿が出てくる。

 自撮りして投稿する女性たちは、ぱっちり二重で鼻筋の通った美人だ。

 アイプチを使ってメイク動画を投稿している人の素顔はは、確かに地味かもしれない。

 けれど麻衣は「痩せてるから、顔さえ作ってしまえば美人になるよね」とひねくれた思いを抱いてしまう。

『可愛くなる努力をしている人には、恋人や旦那さんがいる。私にはそんな人はいない』

 興味を持つくせに相手を否定し、言い訳して努力しない自分を情けなく思っていた。

 佑の本には『自分を好きになるためにはどうすればいいか』が書いてあり、そうなれたらと心の底から願っている。

 けれど鏡を見ると、むちっとした下ぶくれのフェイスラインに、丸い体の輪郭、凡庸な顔立ちの自分がいて、溜め息しか出ない。

 それなのにマティアスとデートすると、急に〝女〟を出して小食ぶる自分がいる。

 そんな浅ましい自分を見透かされた気がして、カーッと赤面した。

 けれど彼は決して馬鹿にしない。

「何が食べたい? どれを『美味しそう』だと思う? お互い好きな物を食べて笑顔になろう。〝遠慮〟はいらない」

 真面目に聞いてくるマティアスを見て、不思議な気持ちなった。

(どうしてこの人は、嫌な顔一つしないで面倒な私に向き合おうとするんだろう)

 香澄は麻衣のすべてを受け入れ、肯定してくれる特別な人だ。

 コンプレックスも分かっていて、解決するためならいつでも協力すると言ってくれるし、愚痴も聞いてくれる。決して何かを無理強いしない。

 だが麻衣は香澄以外の友人には、あまり自分の弱さを見せない。

 気まずくなる話題は出さず〝いつも明るい人〟でいようと努力している。

 友人たちも分かってくれていて、嫌な事は言わないし、返事に困る事も聞かない。

 だがマティアスは麻衣のコンプレックスに触れ、「気にするな」と言ってくる。
 マティアスと一緒にいると、価値観が変わってきそうで少し怖い。

 ぼんやりしていると、チュッとキスをされた。

「わっ」

 驚いたあまりテーブルをガタッと動かしてしまい、周りから一瞬注目を浴びる。
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