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第十九部・マティアスと麻衣 編
いざとなったらマイがいる
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時と場所を変え、同日二十時半、新千歳空港。
「羽田よりこぢんまりとした空港だな」
大きなリュックサックを背負ったマティアスは、麻衣のスーツケースを持って隣を歩きながら呟く。
「お土産屋さんとかある場所は、そこそこ大きいですよ。勿論、羽田や成田には敵いませんが」
マティアスがスーツケースを持ってくれているので、麻衣は手荷物だけだ。
荷物を受け取ったあと、麻衣はエスカレーターを下ってJRの改札へ向かう。
マティアスが北海道にいると思うと、変な気持ちになる。
「ちょっとそこで待っててください」
切符売り場まで来ると、麻衣はマティアスを待たせ、札幌駅までの切符を一枚買った。
麻衣は交通系ICカードを持っているので、ピッとかざして通るだけだ。
マティアスは話すほうは流暢だが、読みは勉強中らしい。
切符を買う程度なら大丈夫だろうが、JRの時間もあるのでスムーズにいく方法をとった。
「ありがとう。あとで返す」
「どう致しまして。気にしないでください。東京では色々してもらったし、これからもお世話になると思います。出せる時は私が出しますから」
エスカレーターに乗ってホームまで下りると、まだ並んでいる人の少ない列に並ぶ。
「札幌駅までどれぐらい掛かるんだ?」
「快速なら三十分ちょっとですね」
「そうか。さすがに札幌は寒いな」
「そうですね。東京より寒いと思います。ここは屋内ですけど、トンネルをくぐった先は雪景色です。あと厳密にここは千歳市で、札幌市に行くまで、恵庭市、北広島市を通ります。結構離れてるんですよ」
「そうか」
「それより、今日から泊まるホテルは予約してあるんですよね?」
「いや」
「ええっ!?」
いつでも準備万端なマティアスが、まさか予約していなかったと思わなかった。
「えーっと……。今からホテルって空いてるのかな?」
慌ててスマホで調べようとするが、マティアスの希望するホテルが分からない。
「マティアスさん、どんなホテルにします? 一応、有名どころもありますし、お洒落でコンパクトな所もあると思いますし。リーズナブルな所とか、駅に近い所とか」
有名ホテルの場所なら把握しているが、その他の小さめのホテルは、調べなければ分からない。
おまけに連泊となると、空いているかどうかの確認も必要だ。
一生懸命スマホで検索しているのに、マティアスはぼんやりと立っている。
「もうちょっと必死になってくださいよ。宿なしですよ?」
「……いや。いざとなったらマイがいるしな、と思っている」
その言葉を聞き、麻衣は目を剥く。
「…………!」
(だ、駄目な男だーっ!)
一瞬にして麻衣の脳裏に〝理由をつけて彼女の部屋に転がり込み、そのまま居座るダメ男〟が浮かぶ。
(いやいや、マティアスさんは駄目男じゃないから!)
だがすぐ自分に言い聞かせ、自宅に彼を泊めるのは可能か考える。
(香澄を泊めていたから布団セットはある。荷物もあんまり広げなければ大丈夫。コンビニは近くにあるから、足りない物があっても大丈夫。あとは……、彼とは結婚しようと思っている仲だし……仕方ない、かぁ)
そこまで考え、麻衣は溜め息をつく。
仕事始め直前になり、帰省ラッシュがピークを迎えているとはいえ、まだホテルは混んでいるだろう。
そんな中、長期滞在できる所を探すのは難しそうだ。
「……仕方ないですね。けど、狭いですからね?」
「構わない。マイの住まいが見られて嬉しい」
「はぁー……」
マティアスの表情は相変わらずあまり変わらないが、彼がルンルンしているのは分かる。
「じゃあ、ホテルが決まるまで、力仕事とかお願いしていいです?」
「勿論だ」
頼られたマティアスは嬉しそうな顔をし、その笑顔が眩しい。
(本当に忠犬みたいだな、この人)
宿泊先問題が落ち着いたので、麻衣は香澄にメッセージを打つ。
(香澄、多分いまごろ御劔さんに襲われているんだろうなぁ……)
佑が如何に香澄を溺愛しているかは、年末年始を一緒に過ごしてよく分かった。
東京へ行った親友を心配していたが、佑が香澄をとても大切にしているのが分かり、不安は消え去った。
(御劔さん、我慢させてすみません。どうぞ香澄を心ゆくまで味わってください)
心の中で思っていると、やがて電車が着いて二人はJRに乗った。
**
「羽田よりこぢんまりとした空港だな」
大きなリュックサックを背負ったマティアスは、麻衣のスーツケースを持って隣を歩きながら呟く。
「お土産屋さんとかある場所は、そこそこ大きいですよ。勿論、羽田や成田には敵いませんが」
マティアスがスーツケースを持ってくれているので、麻衣は手荷物だけだ。
荷物を受け取ったあと、麻衣はエスカレーターを下ってJRの改札へ向かう。
マティアスが北海道にいると思うと、変な気持ちになる。
「ちょっとそこで待っててください」
切符売り場まで来ると、麻衣はマティアスを待たせ、札幌駅までの切符を一枚買った。
麻衣は交通系ICカードを持っているので、ピッとかざして通るだけだ。
マティアスは話すほうは流暢だが、読みは勉強中らしい。
切符を買う程度なら大丈夫だろうが、JRの時間もあるのでスムーズにいく方法をとった。
「ありがとう。あとで返す」
「どう致しまして。気にしないでください。東京では色々してもらったし、これからもお世話になると思います。出せる時は私が出しますから」
エスカレーターに乗ってホームまで下りると、まだ並んでいる人の少ない列に並ぶ。
「札幌駅までどれぐらい掛かるんだ?」
「快速なら三十分ちょっとですね」
「そうか。さすがに札幌は寒いな」
「そうですね。東京より寒いと思います。ここは屋内ですけど、トンネルをくぐった先は雪景色です。あと厳密にここは千歳市で、札幌市に行くまで、恵庭市、北広島市を通ります。結構離れてるんですよ」
「そうか」
「それより、今日から泊まるホテルは予約してあるんですよね?」
「いや」
「ええっ!?」
いつでも準備万端なマティアスが、まさか予約していなかったと思わなかった。
「えーっと……。今からホテルって空いてるのかな?」
慌ててスマホで調べようとするが、マティアスの希望するホテルが分からない。
「マティアスさん、どんなホテルにします? 一応、有名どころもありますし、お洒落でコンパクトな所もあると思いますし。リーズナブルな所とか、駅に近い所とか」
有名ホテルの場所なら把握しているが、その他の小さめのホテルは、調べなければ分からない。
おまけに連泊となると、空いているかどうかの確認も必要だ。
一生懸命スマホで検索しているのに、マティアスはぼんやりと立っている。
「もうちょっと必死になってくださいよ。宿なしですよ?」
「……いや。いざとなったらマイがいるしな、と思っている」
その言葉を聞き、麻衣は目を剥く。
「…………!」
(だ、駄目な男だーっ!)
一瞬にして麻衣の脳裏に〝理由をつけて彼女の部屋に転がり込み、そのまま居座るダメ男〟が浮かぶ。
(いやいや、マティアスさんは駄目男じゃないから!)
だがすぐ自分に言い聞かせ、自宅に彼を泊めるのは可能か考える。
(香澄を泊めていたから布団セットはある。荷物もあんまり広げなければ大丈夫。コンビニは近くにあるから、足りない物があっても大丈夫。あとは……、彼とは結婚しようと思っている仲だし……仕方ない、かぁ)
そこまで考え、麻衣は溜め息をつく。
仕事始め直前になり、帰省ラッシュがピークを迎えているとはいえ、まだホテルは混んでいるだろう。
そんな中、長期滞在できる所を探すのは難しそうだ。
「……仕方ないですね。けど、狭いですからね?」
「構わない。マイの住まいが見られて嬉しい」
「はぁー……」
マティアスの表情は相変わらずあまり変わらないが、彼がルンルンしているのは分かる。
「じゃあ、ホテルが決まるまで、力仕事とかお願いしていいです?」
「勿論だ」
頼られたマティアスは嬉しそうな顔をし、その笑顔が眩しい。
(本当に忠犬みたいだな、この人)
宿泊先問題が落ち着いたので、麻衣は香澄にメッセージを打つ。
(香澄、多分いまごろ御劔さんに襲われているんだろうなぁ……)
佑が如何に香澄を溺愛しているかは、年末年始を一緒に過ごしてよく分かった。
東京へ行った親友を心配していたが、佑が香澄をとても大切にしているのが分かり、不安は消え去った。
(御劔さん、我慢させてすみません。どうぞ香澄を心ゆくまで味わってください)
心の中で思っていると、やがて電車が着いて二人はJRに乗った。
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