【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第二十二部・岐路 編

探しに行っていいか?

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 ショックを受けた佑はしばらく放心していたが、溜め息をつくと床の上に座り込み、呟いた。

「……壊したなら、もう一度自分の手で積み上げていかないと」

 今まで様々な失敗を経験してきた。

 仕事で大きな損失を受けた事もあったし、人間関係が戻らなくなった事もあった。

 けれど人は大なり小なり失敗し、学んでいく生き物だと思っている。

 人間関係も、一度終わったらそれまでの人もいるし、やり直させてくれる人もいる。

 それはその人の許容量の大きさ如何もあるし、タイミングや別れ方など様々な因子が絡んでいる。

「……香澄なら大丈夫だ。……俺は香澄を信じている」

 何が理由でブロックされたかは分からないが、フェリシアに残されたメッセージが何よりも雄弁に彼女の気持ちを語っている。

「香澄は本心ではない事を思わせぶりに言う人じゃない。いつも真正面から俺にぶつかってくれる、とても純粋な人だから惹かれたんだ」

 この一年少し香澄と付き合い、試されたと感じた事はないし、自分のいないところで不平不満を言われたと感じた事もない。

 セックスがしつこいとか、愛情が重たいとか、そういう文句はあっただろうが、ネガティブな感情は抱かれていない自信はある。

 自分の人間性に自信があるのではなく、「香澄はそういう人ではない」という確信を持っていた。

「……香澄、探しに行っていいか?」

 返事がないと分かっていながら、佑はこの場にいない彼女に問いかけた。

『早く来て。会いたいよ』

 そんな都合のいい空耳が聞こえてしまうぐらいには、香澄に惚れている。重症だ。

「……行くよ。色んな人に怒られて、筋を通して君に会いに行く」

 佑は泣き笑いの表情で言い、覚悟を決めて立ちあがった。



**



 香澄は飛行機でフルフラットになるシートでぐっすり眠り、朝食はホテルのような立派な洋食をペロリと平らげた。

 羽田からジョン・F・ケネディ国際空港までは、十三時間少しだ。

「セオが運転する車はこっちで都合つけておいたけど、カスミは僕らと一緒に乗るからね」

 クラウスが言い、瀬尾は「お気遣い感謝いたします」と頭を下げる。

「セオって発音がテオと似てない? テオに『こいつテオだよ』って紹介してやろうか」

 双子はそんな事を言い、いたずらを企んでクスクス笑い合っている。

「あの、テオさんには連絡したんですか?」

「あー、まだしてなかったね」

「もー」

 アロイスが軽い口調で言うので、香澄は脱力してしまう。

「ホームタウンだし、いつでも出てこられるでしょ。俺たちだって一日、二日で発つ訳じゃないし」

 テオにメッセージを打ちながら、アロイスはケラケラと笑う。

 そんな双子だが、空の上でもWi-Fiを駆使し、連絡があるとリモートで会議などをし、きちんと働いている。

「それはそうなんですけど……」

(相変わらず、行き当たりばったりだなぁ……)

 双子が自由な人なのは分かっていたが、こうやって一緒に行動するようになると、余計に気を揉む機会が多くなる。

(と言っても、私が細かい性格しているってのもあるよね。秘書だったし、アポとるのは当たり前だったし)

 そこまで考えて、秘書〝だった〟と過去形に考えてしまう自分がいるのに気づき、苦く笑う。

(あんなに悲しんでおいて、もう今の状況に順応してる自分がいる。薄情だな……)

 身が引きちぎられるほど悲しかったはずなのに、今はアメリカの空の上で双子と笑い合っている。

 確かに一度は吹っ切ったはずだが、そんなものだったのか……と自分に言いたくなる。

 それ以上考えるとドツボに嵌まりそうだったので、香澄は気持ちを切り替えるために双子に質問した。

「NYって観光地、何がありますか? ヨーロッパはちょいちょい行きましたが、アメリカは出張ついでに少し買い物するぐらいだったので」

「んーと、まずはタイムズスクエアでしょ。ブロードウェイのチケットをとって見に行ってもいいし」

 クラウスが言い、アロイスが続ける。

「セントラルパーク、自由の女神、五番街、ブルックリンブリッジ、よく映画の舞台になってるグランドセントラルターミナル駅……。まぁ、セントラルパークはホテルの窓から見えるけどね」

「日本で言うと皇居ビューですか?」

「まぁそんなもん」
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