1,491 / 1,589
第二十二部・岐路 編
双子のいじり
しおりを挟む
(何だかんだ、凄いところに泊まるのはお決まりなんだな……)
香澄は感心し、小さく溜め息をつく。
今になって『高価なところはいいです』なんて遠慮はできない。
双子の世話になると決めた時点で、彼らが決めたところに同行すべきだ。
加えて、海外事情に詳しくない自分がでしゃばって、また危険な目にでも遭ったら双子に申し訳がつかない。
(お姫様扱いされても、大人しくしておこう)
自分に言い聞かせて「うん」と頷いた香澄は、家族や麻衣へのお土産になりそうな物をスマホで検索し始めた。
羽田を離陸したのが昼過ぎで、ジョン・F・ケネディ国際空港に着陸したのも、現地時間の昼過ぎだった。
いつものように飛行機の側まで車が迎えに来て、簡易的にパスポートチェックをしたのち、車はNYシティに向かって走り出す。
車は勿論クラウザー社の物で、大人数での移動なので七人乗りの車を出したそうだ。
後部座席に三人が乗っているほか、ベルタと久住、運転手にサブの運転手として瀬尾が乗っていた。勿論、後続車もある。
大きな車体なので後部座席に三人乗ってもゆったりとしていて、おまけに前のシートの後ろに液晶テレビがついていたり、足元からレッグレストが出てくる物凄い仕様だ。
(高いんだろうなぁ……)
ぼんやりと思っていたが、正確な値段など分からない。
車体そのものが三千万円近くし、その上カスタムしているので目玉が飛び出るような価格だと知るのは、もう少しあとの話だ。
そんな香澄は双子に挟まれて座っているのだが、物珍しさで窓の外を気にしては、彼らにクスクス笑われている。
「市内まで一時間弱は掛かるから、ゆっくりしてなよ」
「はい」
キョロキョロしていたのを笑われ、香澄は照れて俯く。
「カスミのアメリカのイメージってどんな感じ?」
「えーと……、ピザとポップコーン?」
とりあえず即答すると、双子が手を打ち鳴らして笑った。
「食いもんだよ~、この子は……」
「それだけじゃないですよ。もう。……んーと、自由の女神と、ヤシの木と海岸とローラースケート……?」
ぼんやりとしたイメージを口にすると、また双子が爆笑する。
「それ、西海岸だわ! 自由の女神はNYだけど」
「えっ? 西……」
西海岸、東海岸という言葉に慣れていないので、香澄は頭の中で世界地図を思い浮かべ、指さし確認をして西を指す。
「あっ……。こっちは東だった。……あ、そっか……ロサンゼルスとかサンフランシスコ……」
その土地の名前を口にした時、双子がチラッと香澄を見た。
彼らの心配するような視線を受け、香澄は微笑む。
「大丈夫ですよ。……うん。もう、……大丈夫」
香澄は双子を安心させるように言い、うんうんと何回も頷く。
強烈な恐怖が刻まれた土地ではあるが、良い街だと思うので印象だけで嫌いたくない。イギリスと一緒だ。
(それに、覚えてるのは港とあのホテルだけだもんな……)
ぼんやりと考えていた時、クラウスが急にクイズを出してきた。
「デデンッ、北アメリカ大陸に流れているミシシッピ川は、複数の州を跨いでいます。その州をミシシッピリバーカントリーと言いますが、マサチューセッツ州は含まれているでしょうか?」
「えっ? えっ? みひひっぴ……」
うろたえた香澄は「ミシシッピ川」と言おうとして盛大に噛む。
「「ぼあっ」」
その瞬間、双子がそれぞれ横を向いて盛大に噴きだした。
「ちょ……っ、もおお……っ!」
「カスミ、カスミ、マサチューセッツ州って言ってみ」
涙目になったクラウスに言われ、香澄はいじられていると分かりつつも応じた。
真剣な顔をしてスッと息を吸ったあと、気合いと同時に噛む。
「ましゃちゅーしぇっちゅしゅー!」
「「ぶははははははははは!!」」
双子はパンッパンッと手を打ち鳴らして笑い、ダカダカと足踏みをし、さらに自身の太腿を叩いている。
前の席で久住の肩も震えているように見える。
「もぉぉ……」
恥ずかしくて堪らないが、笑ってくれるので半ば投げやりにOKとした。
そのあと、車内で双子からアメリカあるあるや豆知識、彼らの体験談などを教えてもらいながら、NY市内までの道を進んだ。
香澄は感心し、小さく溜め息をつく。
今になって『高価なところはいいです』なんて遠慮はできない。
双子の世話になると決めた時点で、彼らが決めたところに同行すべきだ。
加えて、海外事情に詳しくない自分がでしゃばって、また危険な目にでも遭ったら双子に申し訳がつかない。
(お姫様扱いされても、大人しくしておこう)
自分に言い聞かせて「うん」と頷いた香澄は、家族や麻衣へのお土産になりそうな物をスマホで検索し始めた。
羽田を離陸したのが昼過ぎで、ジョン・F・ケネディ国際空港に着陸したのも、現地時間の昼過ぎだった。
いつものように飛行機の側まで車が迎えに来て、簡易的にパスポートチェックをしたのち、車はNYシティに向かって走り出す。
車は勿論クラウザー社の物で、大人数での移動なので七人乗りの車を出したそうだ。
後部座席に三人が乗っているほか、ベルタと久住、運転手にサブの運転手として瀬尾が乗っていた。勿論、後続車もある。
大きな車体なので後部座席に三人乗ってもゆったりとしていて、おまけに前のシートの後ろに液晶テレビがついていたり、足元からレッグレストが出てくる物凄い仕様だ。
(高いんだろうなぁ……)
ぼんやりと思っていたが、正確な値段など分からない。
車体そのものが三千万円近くし、その上カスタムしているので目玉が飛び出るような価格だと知るのは、もう少しあとの話だ。
そんな香澄は双子に挟まれて座っているのだが、物珍しさで窓の外を気にしては、彼らにクスクス笑われている。
「市内まで一時間弱は掛かるから、ゆっくりしてなよ」
「はい」
キョロキョロしていたのを笑われ、香澄は照れて俯く。
「カスミのアメリカのイメージってどんな感じ?」
「えーと……、ピザとポップコーン?」
とりあえず即答すると、双子が手を打ち鳴らして笑った。
「食いもんだよ~、この子は……」
「それだけじゃないですよ。もう。……んーと、自由の女神と、ヤシの木と海岸とローラースケート……?」
ぼんやりとしたイメージを口にすると、また双子が爆笑する。
「それ、西海岸だわ! 自由の女神はNYだけど」
「えっ? 西……」
西海岸、東海岸という言葉に慣れていないので、香澄は頭の中で世界地図を思い浮かべ、指さし確認をして西を指す。
「あっ……。こっちは東だった。……あ、そっか……ロサンゼルスとかサンフランシスコ……」
その土地の名前を口にした時、双子がチラッと香澄を見た。
彼らの心配するような視線を受け、香澄は微笑む。
「大丈夫ですよ。……うん。もう、……大丈夫」
香澄は双子を安心させるように言い、うんうんと何回も頷く。
強烈な恐怖が刻まれた土地ではあるが、良い街だと思うので印象だけで嫌いたくない。イギリスと一緒だ。
(それに、覚えてるのは港とあのホテルだけだもんな……)
ぼんやりと考えていた時、クラウスが急にクイズを出してきた。
「デデンッ、北アメリカ大陸に流れているミシシッピ川は、複数の州を跨いでいます。その州をミシシッピリバーカントリーと言いますが、マサチューセッツ州は含まれているでしょうか?」
「えっ? えっ? みひひっぴ……」
うろたえた香澄は「ミシシッピ川」と言おうとして盛大に噛む。
「「ぼあっ」」
その瞬間、双子がそれぞれ横を向いて盛大に噴きだした。
「ちょ……っ、もおお……っ!」
「カスミ、カスミ、マサチューセッツ州って言ってみ」
涙目になったクラウスに言われ、香澄はいじられていると分かりつつも応じた。
真剣な顔をしてスッと息を吸ったあと、気合いと同時に噛む。
「ましゃちゅーしぇっちゅしゅー!」
「「ぶははははははははは!!」」
双子はパンッパンッと手を打ち鳴らして笑い、ダカダカと足踏みをし、さらに自身の太腿を叩いている。
前の席で久住の肩も震えているように見える。
「もぉぉ……」
恥ずかしくて堪らないが、笑ってくれるので半ば投げやりにOKとした。
そのあと、車内で双子からアメリカあるあるや豆知識、彼らの体験談などを教えてもらいながら、NY市内までの道を進んだ。
36
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
密会~合コン相手はドS社長~
日下奈緒
恋愛
デザイナーとして働く冬佳は、社長である綾斗にこっぴどくしばかれる毎日。そんな中、合コンに行った冬佳の前の席に座ったのは、誰でもない綾斗。誰かどうにかして。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる