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第二十三部・幸せへ 編
GPS解除
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「こういうホテルはアメリカンタイプって言って、最初からホテルとして使うために作られた建物ね。だから空間にゆとりがあって日本人には馴染みやすいと思う。勿論、伝統的なタイプが好きな人もいるだろうし、それぞれだけどね」
「ふんふん」
学んだ香澄は何度も頷き、ケーキを完食する。
「桜祭りってどんな感じなんですか?」
尋ねると、アロイスは脚を組んで言う。
「まず目につくのは、公園の芝生で凧を揚げてる家族連れかな。パレードもするし、公園では音楽やアートとか、夜には花火も上がるし、最終のほうになるとジャパンフェスティバルもやるね。コスプレとか日本の屋台みたいなのとか、着物の貸し出しとか」
「へええ……! そこまで日本にちなんでくれてるんですね」
ソメイヨシノの木を友好の証として送ったエピソードは知っているが、祭りの詳細までは知らなかった。
「だから多分、居心地いいと思うよ。お馴染みの桜も見られるし」
クラウスに言われ、香澄は笑顔で頷く。
「ですね。私、桜の花大好きで、お花見時期は積極的に散歩して、スマホのアルバムが桜まみれになるぐらい写真を撮ってるんです」
「だと思った。日本人って桜好きだよね。僕らも好きだけど」
クラウスはそう言ったあと、腕時計を見てから室内に控えているベルタに尋ねる。
『ワシントンDCでのスケジュールってどうなってたっけ』
尋ねられ、ベルタはタブレット端末を開いて予定を淡々と読み上げていく。
「じゃあ、俺たち一日は桜祭り付き合うけど、あとはワシントンDCでの仕事をちょっとこなすから、カスミはミオと一緒に自由行動しなよ。勿論、護衛を連れてね」
「分かりました」
何から何まで双子の世話になりっぱなしは申し訳ないし、子供ではないのでつきっきりではなくても大丈夫だ。
安全を気にして外出させられないなど言われたら、世の留学、または海外移住した日本人女性はどうなるのだという話になる。
「じゃあ、ランチ食べてから散歩に行ってみようか」
「はい」
アロイスに言われ、香澄は一度部屋に戻って服を着替え、メイクをしてから外出する事にした。
「私はちょっとアロクラと話があるから、あとで行くわ」
「分かりました」
澪の返事を聞き、香澄はペコリと頭を下げると、彼らを待たせないように支度をしようと、久住と佐野を伴っていそいそと部屋を出て行った。
双子の部屋に残った澪は、クラッシュデニムを穿いた脚を組んで言う。
「……そろそろいいんじゃない?」
言われて、双子は顔を見合わせる。
「まぁ……、ね」
「どっちにしろここで会わせるつもりだし」
「ホテルの場所とか教えないつもり?」
さらに問い詰めると、彼らは困ったように首を竦める。
「佑に二週間、歩き回らせるつもり? あの人にも仕事はあるんだけど」
澪に睨まれ、アロイスは溜め息をついた。
「分かったよ……」
言ったあと、アロイスはスマホを出して佑にメッセージを打つ。
「【これからワシントンDCの某レストランでランチ。カスミは明日から自由行動。彼女の行きそうな所を想像して動くべし】。……これでOK? 俺はこれ以上譲れない」
「…………しょうがないわね」
澪は溜め息をつき、立ちあがると部屋を出て行った。
いっぽうで、久住と佐野は香澄が支度をするのをスイートルームのリビングで待っていた。
「……そろそろ連絡しないと本気でクビになるな」
ぼやいた久住に、佐野が頷く。
「俺もそう思います。……GPS解除しましょうか」
「だな。……でもホテルで再会したら、アロイス様たちの思惑から外れて大目玉食らうんじゃないか? 最低限公園での再会ラインは死守しないと」
「……ですね。じゃあ、公園に着いた辺りでGPS解除しましょうか」
護衛たちはお互いの位置が分かるよう、位置情報アプリを共有している。
双子がキレて香澄を連れ出した辺りから、二人と瀬尾は双子に言われてGPSを小山内や呉代に共有しないようにしていた。
恐らく相棒たちも、GPSアプリは頻繁にチェックしているだろうから、こちらが解除すればすぐに通知が入って気づくだろう。
「……怒られる覚悟を決めるかぁ……」
またぼやいた久住に、佐野は頷いた。
「ですね」
**
「ふんふん」
学んだ香澄は何度も頷き、ケーキを完食する。
「桜祭りってどんな感じなんですか?」
尋ねると、アロイスは脚を組んで言う。
「まず目につくのは、公園の芝生で凧を揚げてる家族連れかな。パレードもするし、公園では音楽やアートとか、夜には花火も上がるし、最終のほうになるとジャパンフェスティバルもやるね。コスプレとか日本の屋台みたいなのとか、着物の貸し出しとか」
「へええ……! そこまで日本にちなんでくれてるんですね」
ソメイヨシノの木を友好の証として送ったエピソードは知っているが、祭りの詳細までは知らなかった。
「だから多分、居心地いいと思うよ。お馴染みの桜も見られるし」
クラウスに言われ、香澄は笑顔で頷く。
「ですね。私、桜の花大好きで、お花見時期は積極的に散歩して、スマホのアルバムが桜まみれになるぐらい写真を撮ってるんです」
「だと思った。日本人って桜好きだよね。僕らも好きだけど」
クラウスはそう言ったあと、腕時計を見てから室内に控えているベルタに尋ねる。
『ワシントンDCでのスケジュールってどうなってたっけ』
尋ねられ、ベルタはタブレット端末を開いて予定を淡々と読み上げていく。
「じゃあ、俺たち一日は桜祭り付き合うけど、あとはワシントンDCでの仕事をちょっとこなすから、カスミはミオと一緒に自由行動しなよ。勿論、護衛を連れてね」
「分かりました」
何から何まで双子の世話になりっぱなしは申し訳ないし、子供ではないのでつきっきりではなくても大丈夫だ。
安全を気にして外出させられないなど言われたら、世の留学、または海外移住した日本人女性はどうなるのだという話になる。
「じゃあ、ランチ食べてから散歩に行ってみようか」
「はい」
アロイスに言われ、香澄は一度部屋に戻って服を着替え、メイクをしてから外出する事にした。
「私はちょっとアロクラと話があるから、あとで行くわ」
「分かりました」
澪の返事を聞き、香澄はペコリと頭を下げると、彼らを待たせないように支度をしようと、久住と佐野を伴っていそいそと部屋を出て行った。
双子の部屋に残った澪は、クラッシュデニムを穿いた脚を組んで言う。
「……そろそろいいんじゃない?」
言われて、双子は顔を見合わせる。
「まぁ……、ね」
「どっちにしろここで会わせるつもりだし」
「ホテルの場所とか教えないつもり?」
さらに問い詰めると、彼らは困ったように首を竦める。
「佑に二週間、歩き回らせるつもり? あの人にも仕事はあるんだけど」
澪に睨まれ、アロイスは溜め息をついた。
「分かったよ……」
言ったあと、アロイスはスマホを出して佑にメッセージを打つ。
「【これからワシントンDCの某レストランでランチ。カスミは明日から自由行動。彼女の行きそうな所を想像して動くべし】。……これでOK? 俺はこれ以上譲れない」
「…………しょうがないわね」
澪は溜め息をつき、立ちあがると部屋を出て行った。
いっぽうで、久住と佐野は香澄が支度をするのをスイートルームのリビングで待っていた。
「……そろそろ連絡しないと本気でクビになるな」
ぼやいた久住に、佐野が頷く。
「俺もそう思います。……GPS解除しましょうか」
「だな。……でもホテルで再会したら、アロイス様たちの思惑から外れて大目玉食らうんじゃないか? 最低限公園での再会ラインは死守しないと」
「……ですね。じゃあ、公園に着いた辺りでGPS解除しましょうか」
護衛たちはお互いの位置が分かるよう、位置情報アプリを共有している。
双子がキレて香澄を連れ出した辺りから、二人と瀬尾は双子に言われてGPSを小山内や呉代に共有しないようにしていた。
恐らく相棒たちも、GPSアプリは頻繁にチェックしているだろうから、こちらが解除すればすぐに通知が入って気づくだろう。
「……怒られる覚悟を決めるかぁ……」
またぼやいた久住に、佐野は頷いた。
「ですね」
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