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第二十四部・最後の清算 編
帰宅
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言い切ると、ぐっと自信が湧いた気がした。
「強くなったな」
佑は優しい目で言い、香澄のまっすぐな髪を撫でる。
「色々ありましたからね。数え切れないぐらいバージョンアップして、最新版の最強香澄ですよ」
冗談めかして言うと、佑も笑ってくれた。
「俺も普通なら味わわない事を経験した。……これが強くなったと言うのかは分からないが、もうちょっとやそっとの事じゃ動じない」
香澄は凜とした目で前を向いて言う佑の横顔を盗み見し、微笑む。
やがて車は白金台に着き、長い塀に囲まれた御劔邸の前で一時停止すると、錬鉄の門が自動で内側に開いていくのを待ち、さらに玄関前まで進んだ。
「はぁ……」
香澄はドンとそびえる御劔邸を見上げ、「ただいま」と呟く。
「香澄さん……!」
女性の声がしてハッとそちらを見ると、涙ぐんだ斎藤と島谷が駆け寄ってくるところだ。
「おかえりなさい!」
「……っ、ただいま!」
彼女たちの姿を見て、一気に〝戻ってきた〟事が現実味を帯び、香澄は涙を流して二人に抱きつく。
「うぅー……っ」
「おかえりなさい、香澄さん」
「あなたがいないと、このお屋敷は締まりませんよ」
第二の母のように思っている二人に言われ、香澄はポロポロと涙を流す。
後ろでは小金崎や瀬尾、護衛たちが荷物を出し、やっと戻った事で笑顔を見せている。
麻衣とマティアスも後続の車から降り、何度見ても素晴らしい豪邸を前に圧倒されていた。
「香澄、中に入ろう」
佑に手を差しだされ、目を潤ませた彼女は大好きな人の大きな手に、自分のそれを重ねる。
「……はい!」
玄関ホールに入った香澄は、小さく口を開いて吹き抜けの天井から下がるシャンデリアを見上げる。
突き当たりにはバイオエタノールの暖炉と、ソファセットがある。
横手にある木製のスライドドアを開けば、大きなシューズクローゼットになっている。
「……私、ここに住んでたんだね」
呟くと、靴を脱いでスリッパを出していた佑が、目を丸くしてから笑った。
「香澄のほうこそ記憶喪失になったような言い方はやめてくれ。これからもずーっとこの家で暮らしていくだよ。……勿論、気分によって別荘に行ってもいいけどね」
「ううん、このお屋敷大好き!」
ギュッと佑に抱きつくと、ポンポンと背中を叩かれた。
スリッパを履いた頃、「お邪魔します……」と遠慮がちに麻衣とマティアスが入ってきた。
「みんな疲れただろうから、夕食まで自由時間にしよう。麻衣さんとマティアスは、三階の部屋を使ってくれ。香澄はしばらく休職扱いになっているから、仕事があると思って焦らなくていい。荷物の整理もあとでいいから、まず体を休めて」
「はい」
返事をしたあと、香澄は荷物を気にしてチラッと玄関ドアを見る。
いつもながら、誰かに自分の荷物を運ばせるのは申し訳ない。
それは麻衣も同じ気持ちらしく、チラチラと後ろを気にしている。
マイペースなマティアスは、しっかりと自分の大きなリュックを背負い、スーツケースを手にしていた。
香澄たちが階段に向かい始めた時、斎藤と島谷が邸内に入ってきた。
「香澄さん、食事のリクエストはありますか? お帰りになるのが嬉しくてワクワクしてしまって、色々下ごしらえしてあるので、何でも作れます」
やる気に満ちた斎藤に尋ねられ、香澄はチラッと佑と麻衣を見る。
二人とも「香澄に任せる」という顔をしていたので「うーん……」と悩んだのだが、顔を上げるとキリッとした顔で言った。
「何でも食べます! 貴恵さんのご飯美味しいので!」
その答えを聞いて全員が破顔し、斎藤は「かしこまりました。腕によりをかけます」と笑顔を見せ、キッチンに向かった。
香澄は階段を上がって二階へ行き、麻衣とマティアスはさらに階段を上がっていく。
ほどなく久住が香澄のスーツケースを部屋に置き、「ごゆっくり」と微笑んで去っていった。
ソファセットに座った香澄は、ぼんやりと豪奢な部屋を見回す。
「強くなったな」
佑は優しい目で言い、香澄のまっすぐな髪を撫でる。
「色々ありましたからね。数え切れないぐらいバージョンアップして、最新版の最強香澄ですよ」
冗談めかして言うと、佑も笑ってくれた。
「俺も普通なら味わわない事を経験した。……これが強くなったと言うのかは分からないが、もうちょっとやそっとの事じゃ動じない」
香澄は凜とした目で前を向いて言う佑の横顔を盗み見し、微笑む。
やがて車は白金台に着き、長い塀に囲まれた御劔邸の前で一時停止すると、錬鉄の門が自動で内側に開いていくのを待ち、さらに玄関前まで進んだ。
「はぁ……」
香澄はドンとそびえる御劔邸を見上げ、「ただいま」と呟く。
「香澄さん……!」
女性の声がしてハッとそちらを見ると、涙ぐんだ斎藤と島谷が駆け寄ってくるところだ。
「おかえりなさい!」
「……っ、ただいま!」
彼女たちの姿を見て、一気に〝戻ってきた〟事が現実味を帯び、香澄は涙を流して二人に抱きつく。
「うぅー……っ」
「おかえりなさい、香澄さん」
「あなたがいないと、このお屋敷は締まりませんよ」
第二の母のように思っている二人に言われ、香澄はポロポロと涙を流す。
後ろでは小金崎や瀬尾、護衛たちが荷物を出し、やっと戻った事で笑顔を見せている。
麻衣とマティアスも後続の車から降り、何度見ても素晴らしい豪邸を前に圧倒されていた。
「香澄、中に入ろう」
佑に手を差しだされ、目を潤ませた彼女は大好きな人の大きな手に、自分のそれを重ねる。
「……はい!」
玄関ホールに入った香澄は、小さく口を開いて吹き抜けの天井から下がるシャンデリアを見上げる。
突き当たりにはバイオエタノールの暖炉と、ソファセットがある。
横手にある木製のスライドドアを開けば、大きなシューズクローゼットになっている。
「……私、ここに住んでたんだね」
呟くと、靴を脱いでスリッパを出していた佑が、目を丸くしてから笑った。
「香澄のほうこそ記憶喪失になったような言い方はやめてくれ。これからもずーっとこの家で暮らしていくだよ。……勿論、気分によって別荘に行ってもいいけどね」
「ううん、このお屋敷大好き!」
ギュッと佑に抱きつくと、ポンポンと背中を叩かれた。
スリッパを履いた頃、「お邪魔します……」と遠慮がちに麻衣とマティアスが入ってきた。
「みんな疲れただろうから、夕食まで自由時間にしよう。麻衣さんとマティアスは、三階の部屋を使ってくれ。香澄はしばらく休職扱いになっているから、仕事があると思って焦らなくていい。荷物の整理もあとでいいから、まず体を休めて」
「はい」
返事をしたあと、香澄は荷物を気にしてチラッと玄関ドアを見る。
いつもながら、誰かに自分の荷物を運ばせるのは申し訳ない。
それは麻衣も同じ気持ちらしく、チラチラと後ろを気にしている。
マイペースなマティアスは、しっかりと自分の大きなリュックを背負い、スーツケースを手にしていた。
香澄たちが階段に向かい始めた時、斎藤と島谷が邸内に入ってきた。
「香澄さん、食事のリクエストはありますか? お帰りになるのが嬉しくてワクワクしてしまって、色々下ごしらえしてあるので、何でも作れます」
やる気に満ちた斎藤に尋ねられ、香澄はチラッと佑と麻衣を見る。
二人とも「香澄に任せる」という顔をしていたので「うーん……」と悩んだのだが、顔を上げるとキリッとした顔で言った。
「何でも食べます! 貴恵さんのご飯美味しいので!」
その答えを聞いて全員が破顔し、斎藤は「かしこまりました。腕によりをかけます」と笑顔を見せ、キッチンに向かった。
香澄は階段を上がって二階へ行き、麻衣とマティアスはさらに階段を上がっていく。
ほどなく久住が香澄のスーツケースを部屋に置き、「ごゆっくり」と微笑んで去っていった。
ソファセットに座った香澄は、ぼんやりと豪奢な部屋を見回す。
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