タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

5,お米な私

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「ついたよ。ここが私の泊まってる宿屋。子鹿のあくび亭だ」

  めっちゃメルヘンな名前だなあ。それより鹿ってあくびするのか。見てみたい。
  内装は全部木で出来てるみたいだった。ログハウスってこんな感じなのかなあ。すごくあったかい雰囲気。ご飯も食べれるのかな。なんかいい匂いする。

「エレオノーラ、部屋を移してもらいたい」

  レベッカさんがカウンターにいた女の人に言う。店主……にしてはかなり若い。二十歳くらいかな、いっても二十代半ばくらいに見える。髪型のせいもあるのかな。少しウェーブのかかった赤みのかかった髪をおさげにしてる。

「レベッカ……、犯罪はだめだぞ?  人攫いを泊めた宿だなんて話が出るのはごめんだよ」

  やっぱりそう思うよね。あまりに私が暴れるもんだから途中から担ぐ形になってたもんなあ。お姫様抱っこならぬ、お米様抱っこだ。あれ、こっちにお米あるかな。そしたらお米様抱っこじゃ通じないかな。

「失礼だな。これは保護だ」
「保護じゃないです。すいません、一人部屋を用意してもらっていいですか?」
「とりあえず下ろしなよ。何が悲しくて私は尻と会話しなきゃいけないんだ」

  大人しく私を下ろすレベッカさん。私が担がれてたから、エレオノーラさんからは角度的に私のお尻しか見えてなかったみたい。

「あなた何歳?  まあ歳はともかく、お金はあるの?  うちはあんまり安くないけど」

  安くないのかー。まあ安くて変な宿になるのも嫌だしなあ。えっと今の所持金は金貨二枚と銀貨七枚だから……。とりあえず三日って言ってみよう。お金の価値がわかってないし聞くのも怪しいし。

「とりあえず三日だといくらですか?」
「三日ね。素泊まりなら銀貨九枚。朝夕の食事つきなら金貨一枚と銅貨五枚」

  ということは一日銀貨三枚、ご飯付きにするならプラス銅貨五枚。そして銀貨十枚で金貨一枚。銅貨も同じく十枚で銀貨一枚か。わかりやすくてよかったー。三貨制度みたいに分かりづらいのだったらどうしようかと思った。
  五日泊まるとしたら金貨一枚と銀貨七枚、銅貨五枚。ナイフを売ったお金ほとんどなくなっちゃうなあ。まあ仕方ないか、五日の間に仕事探そう。

「じゃあ、五日お願いします。ご飯つきで」

  そう言って金貨を二枚差し出す。エレオノーラさんは黙って受け取って、銀貨を三枚と銅貨を五枚返してきた。

「エレオノーラさん、お釣り間違ってますよ」

  銀貨を一枚返して、残りを袋に入れる。しっかりしてそうだけど、おっちょこちょいなのかなこの人。

「なるほどね。頭がよくてお人好し。警戒心も無しと。レベッカ、ちゃんと面倒見てあげなね」
「ああ、今のでわかったよ。予想以上だこの子」

  え、なに。私なんかやった?  何も変なことしてないよね。計算間違えてないし、お釣りちゃんと返したし。

「あんた、なんで宿代に疑問を持たなかったの?   安くないとは言っても普通の宿の倍以上。普通食事つけてもせいぜい銀貨一枚と銅貨三枚なのに」
「その上でお釣りの間違いを正して返すんだからね。ぼられてるかもしれないのに」

  なんですとー。高級宿屋じゃん!  これはあれか、私は試されてたのか。

「でも、ここの宿屋の価格としては正しいですよね?」
「なんでそう思うの?」

  勘です。なんて言えないよなあ。でも嫌な予感がしなかったからとしか言えない。そんなもんだよな、って納得しちゃったんだもの。

「だってなんか綺麗ですし。ご飯も普通よりいいもの出そうでしたから」
「なるほどね……」

  明らかに納得してない顔だよー。不満そうだし腕組みしてるし。
  なんてエレオノーラさんと見つめあってると、再びレベッカさんに担がれた。

「じゃあ二人部屋に移るよ。部屋は奥のとこでいい?」
「ええ、荷物は自分で運んでね」

  手をひらひら振って返事をするレベッカさん。
  結局私の扱いはお米と一緒で決定なのだろうか。早くも慣れ始めた私も私だけどね!

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