26 / 26
『違う恋人』
しおりを挟む
昔々……と言うほどの前のことではなく、第二成長期を終え来年から『大人』となる年代のこと。
大いなることを成すと意気込み狂気と言うべき物をその瞳に燃木の代わりに組んでいた青年がいました。彼の夢は夢想空想の類いではなく、周囲にいる人たちは皆、成功者になると思っていました。
そう、彼はペテン師や詐欺師の才を秘めた人物でした。
生みの親を騙し育ての親を欺き、彼はようやく社会に出た。しかし、そこで運命は大きく変わってしまった。
恋をした。
運命を揺るがすだけに留まらずそれを容易くひっくり返してしまうほどの熱病に。
ペテンや詐欺の才能は世間に悪影響を及ぼすようなことには使われず、ただ彼女に振り向いてもらえるように発揮された。
顔見知りになり、知り合いになり、友達になり、SNSで交流するようになり、そして男と女の関係になった。
熱病で頭と心を苛まれたのは彼だけではなかった。目の前にいる女性にもその病は伝播し、婚約した。
互いの親と酒を汲み良好な関係へと発展した。
しかし、悲劇が起きた。正に悲しむべき劇が幕開いた。
女性は異常者となった。明らかに容姿が違う、正しく人外――いや、化け物へと。
皮膚はヒビ割れその隙間から覗くのは蒼白い血肉、額の骨が歪み鬼のような角が皮膚を突き破り、尻からは獣の尾が申し訳ない程度に生えた。
彼女のことを異常者、人外、化け物と言わずして何と呼ぶのか。
しかし、それでも彼は愛していた。
容貌が変質しようと容姿が変化しようと関係ない。彼女という存在に対して愛が芽生え、そして育んでいたから。見目が変わろうと熱病は治まらなかった。
対して彼女はと言うと、嬉しかった。日々変わっていく見目に恐怖を感じ、周囲の反応が嫌で嫌で仕方なかった。それでも愛を囁いてくれる彼がいたから、絶望せずに生きることができた。
彼は彼女の血から《DUAシステム》を造り始めた。変化を逆手に取り直そうと奮起した。
しかし、世界は甘くはなかった。基礎理論に目処が立った頃に彼女は自ら命を絶った。彼女の家族からはどうして傍にいなかったのかと責められ、世論では彼が殺したかのように囁かれた。
彼は《DUAシステム》によって肉体変態が起きる以前から『怪物』となっていた。
大いなることを成すと意気込み狂気と言うべき物をその瞳に燃木の代わりに組んでいた青年がいました。彼の夢は夢想空想の類いではなく、周囲にいる人たちは皆、成功者になると思っていました。
そう、彼はペテン師や詐欺師の才を秘めた人物でした。
生みの親を騙し育ての親を欺き、彼はようやく社会に出た。しかし、そこで運命は大きく変わってしまった。
恋をした。
運命を揺るがすだけに留まらずそれを容易くひっくり返してしまうほどの熱病に。
ペテンや詐欺の才能は世間に悪影響を及ぼすようなことには使われず、ただ彼女に振り向いてもらえるように発揮された。
顔見知りになり、知り合いになり、友達になり、SNSで交流するようになり、そして男と女の関係になった。
熱病で頭と心を苛まれたのは彼だけではなかった。目の前にいる女性にもその病は伝播し、婚約した。
互いの親と酒を汲み良好な関係へと発展した。
しかし、悲劇が起きた。正に悲しむべき劇が幕開いた。
女性は異常者となった。明らかに容姿が違う、正しく人外――いや、化け物へと。
皮膚はヒビ割れその隙間から覗くのは蒼白い血肉、額の骨が歪み鬼のような角が皮膚を突き破り、尻からは獣の尾が申し訳ない程度に生えた。
彼女のことを異常者、人外、化け物と言わずして何と呼ぶのか。
しかし、それでも彼は愛していた。
容貌が変質しようと容姿が変化しようと関係ない。彼女という存在に対して愛が芽生え、そして育んでいたから。見目が変わろうと熱病は治まらなかった。
対して彼女はと言うと、嬉しかった。日々変わっていく見目に恐怖を感じ、周囲の反応が嫌で嫌で仕方なかった。それでも愛を囁いてくれる彼がいたから、絶望せずに生きることができた。
彼は彼女の血から《DUAシステム》を造り始めた。変化を逆手に取り直そうと奮起した。
しかし、世界は甘くはなかった。基礎理論に目処が立った頃に彼女は自ら命を絶った。彼女の家族からはどうして傍にいなかったのかと責められ、世論では彼が殺したかのように囁かれた。
彼は《DUAシステム》によって肉体変態が起きる以前から『怪物』となっていた。
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる