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2章 美容コーナーでの出会い
ニーバンの忠告
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試食品を目当てに、足を止める人たちは増えた。すぐにお客様につながらないのは仕方ない。
「朝から来たら変わるかしら」
ハルナへきいてみる。
「そうやなー。予約客が多いでー。仕事中やし、来れないからのー」
「ひいきのお客様をつかむことだね」
市場でも午前中は必要なものを探しにくる人が多い。お洒落するのは仕事を終えた午後からになるだろう。
(市場では午前中にやることもあるし)
管理者として、連絡を受けたりもしている。そして、商店街で朝から働くと、庶民とのつながりが消える寂しさもあった。金を溜めて何かをしようと思うが、美容術のあとは思いつかない。
(お金の使い方か。王子様のいうとおりなのかな)
美容術の対決で勝てば千マニーを儲けるが、もっと能率よく稼ぎたくもなる。
・
それでニーバン。4回目の勝負を終えての帰り、駐馬車場で白馬から降りたところで会った。友達みたいな仲にはなったと思う。まずはニーバンの考えを知りたい。
「おひさー。王子様から貨幣流通促進会のことを聞かされたけど。どう思う?」
「おひさー。貨幣の流通は流れから当然だが。やり方がな」
言いながら、ちょっと待って、というふうに騎士へ合図した。
「なにか、色々あるの」
稼げば良いだけではないらしい。
「王子さまはどうか、分からないが。損はしないようなやり方で、相手を騙す輩もある。金貸しとかが代表だ」
「えっ。悪いことなの?」
貸して助けるのがいけないのか疑問だ。
「悪徳業者もいる。ただ大金が必要だし、それを借りることになる。たぶん利子を払って返さねばならない」
たしかに、いまは貸すほどの金もない。
「借り手がいなかったら、帰さなくていいよね」
「規則によるが、その借りた所へ月に幾らかは返すことになる。なにか、始めるつもりか?」
「いや。ニーバンから言われると怖くなるね」
結局は、自分が借りて利子を返すことになるらしい。
「借りる人も簡単にさがせないと思う。訳ありの人だと思うし、返せるかわからないだろ」
「貸したのが返ってこなかったらどうするの」
「ちょっと脅して回収するか、あげたものとして諦めるかだな」
「王子様がそれをしているんだよ。たぶん」
話から考えると、オーボチャマ王子が借りる人を捜していたのだろう。
「どちにしても、王子様の本心を聞いてからだ」
「そのために、この前は会ったの」
「いろいろと。そうだ。明日は休みか。初登城祝いだろ」
「うん。ダニエル、弟ね。こんど初顔見せなの」
「楽しみだな。ちゃらちゃらした連中が集まるから苦手なんだよなー」
言うと、思いだしたように、ちょっと笑った。
「市場へよったとき、若いのが張り切っていた」
コーナーをまわり、話していたようだ。
「庶民たちは、かしこまっていたが。ひとりだけ、やけに馴れ馴れしくしてたな」
「ミテルシかも。市場の監督って立場。同級生なの」
「もっと大人っぽくもみえたが。仲がいいんだな」
「私のファンだよ。言い寄るから蹴飛ばしたけど、いまは市場で貨幣を広めようと協力している」
ミテルシは軽い部分もあるが、世話をやくのが趣味みたいな男性で年配の人の信頼もあり、人望は厚い。
「蹴飛ばした。うん、ありえるか」
会った最初の日に、喧嘩を売ろうとしたのを思いだしたのだろう。
「ありえないっての。やっぱり、金貸しは無理かな」
「まずは、美容術だと思う。金はあとからついてくる」
ニーバンは金儲けに興味はないらしい。アカリーヌも貨幣は使い方が複雑と考えるようになった。
ニーバンは待ち合わせのようで、騎士と一緒に奥へ去って行った。みると、アマクマ侯爵家の四頭立て馬車が停まる。王城で見たこともある。母が公爵家の孫だから、幼いころに乗ったことはあるらしい。乗り心地もいいだろうし、きれいな服を着て男性のエスコートを受ける。
(でもねー)
ロリコン子爵の幻影が現れてしまう。いまは恐れるほどではないが、どうしても、いやだ、との思いは湧く。恋人といちゃいちゃすることは難しいだろう。
「ニーバンとは、良い友達で続けようかしら」
いつものように隣にいるマームへいう。
「明日でしょうかね」
「えっ。なにが」
「お嬢様も、ニーバン様の御身分には興味がないのでございますか」
「そうだ。きょうも聞きそびれた。ま、いいや」
「だから。あしたでしょうね」
マームはなにかを分かりながら黙っているようだ。
「そうだね。貴族なら」
初登城を祝うのは年間行事でも盛大なもの。
(苦手とかいってたのはさ。参加する予定だよ、きっと。ニーバンへ会えるかもしれない)
3話・終わり
「朝から来たら変わるかしら」
ハルナへきいてみる。
「そうやなー。予約客が多いでー。仕事中やし、来れないからのー」
「ひいきのお客様をつかむことだね」
市場でも午前中は必要なものを探しにくる人が多い。お洒落するのは仕事を終えた午後からになるだろう。
(市場では午前中にやることもあるし)
管理者として、連絡を受けたりもしている。そして、商店街で朝から働くと、庶民とのつながりが消える寂しさもあった。金を溜めて何かをしようと思うが、美容術のあとは思いつかない。
(お金の使い方か。王子様のいうとおりなのかな)
美容術の対決で勝てば千マニーを儲けるが、もっと能率よく稼ぎたくもなる。
・
それでニーバン。4回目の勝負を終えての帰り、駐馬車場で白馬から降りたところで会った。友達みたいな仲にはなったと思う。まずはニーバンの考えを知りたい。
「おひさー。王子様から貨幣流通促進会のことを聞かされたけど。どう思う?」
「おひさー。貨幣の流通は流れから当然だが。やり方がな」
言いながら、ちょっと待って、というふうに騎士へ合図した。
「なにか、色々あるの」
稼げば良いだけではないらしい。
「王子さまはどうか、分からないが。損はしないようなやり方で、相手を騙す輩もある。金貸しとかが代表だ」
「えっ。悪いことなの?」
貸して助けるのがいけないのか疑問だ。
「悪徳業者もいる。ただ大金が必要だし、それを借りることになる。たぶん利子を払って返さねばならない」
たしかに、いまは貸すほどの金もない。
「借り手がいなかったら、帰さなくていいよね」
「規則によるが、その借りた所へ月に幾らかは返すことになる。なにか、始めるつもりか?」
「いや。ニーバンから言われると怖くなるね」
結局は、自分が借りて利子を返すことになるらしい。
「借りる人も簡単にさがせないと思う。訳ありの人だと思うし、返せるかわからないだろ」
「貸したのが返ってこなかったらどうするの」
「ちょっと脅して回収するか、あげたものとして諦めるかだな」
「王子様がそれをしているんだよ。たぶん」
話から考えると、オーボチャマ王子が借りる人を捜していたのだろう。
「どちにしても、王子様の本心を聞いてからだ」
「そのために、この前は会ったの」
「いろいろと。そうだ。明日は休みか。初登城祝いだろ」
「うん。ダニエル、弟ね。こんど初顔見せなの」
「楽しみだな。ちゃらちゃらした連中が集まるから苦手なんだよなー」
言うと、思いだしたように、ちょっと笑った。
「市場へよったとき、若いのが張り切っていた」
コーナーをまわり、話していたようだ。
「庶民たちは、かしこまっていたが。ひとりだけ、やけに馴れ馴れしくしてたな」
「ミテルシかも。市場の監督って立場。同級生なの」
「もっと大人っぽくもみえたが。仲がいいんだな」
「私のファンだよ。言い寄るから蹴飛ばしたけど、いまは市場で貨幣を広めようと協力している」
ミテルシは軽い部分もあるが、世話をやくのが趣味みたいな男性で年配の人の信頼もあり、人望は厚い。
「蹴飛ばした。うん、ありえるか」
会った最初の日に、喧嘩を売ろうとしたのを思いだしたのだろう。
「ありえないっての。やっぱり、金貸しは無理かな」
「まずは、美容術だと思う。金はあとからついてくる」
ニーバンは金儲けに興味はないらしい。アカリーヌも貨幣は使い方が複雑と考えるようになった。
ニーバンは待ち合わせのようで、騎士と一緒に奥へ去って行った。みると、アマクマ侯爵家の四頭立て馬車が停まる。王城で見たこともある。母が公爵家の孫だから、幼いころに乗ったことはあるらしい。乗り心地もいいだろうし、きれいな服を着て男性のエスコートを受ける。
(でもねー)
ロリコン子爵の幻影が現れてしまう。いまは恐れるほどではないが、どうしても、いやだ、との思いは湧く。恋人といちゃいちゃすることは難しいだろう。
「ニーバンとは、良い友達で続けようかしら」
いつものように隣にいるマームへいう。
「明日でしょうかね」
「えっ。なにが」
「お嬢様も、ニーバン様の御身分には興味がないのでございますか」
「そうだ。きょうも聞きそびれた。ま、いいや」
「だから。あしたでしょうね」
マームはなにかを分かりながら黙っているようだ。
「そうだね。貴族なら」
初登城を祝うのは年間行事でも盛大なもの。
(苦手とかいってたのはさ。参加する予定だよ、きっと。ニーバンへ会えるかもしれない)
3話・終わり
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