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第7章
第1話 中学の先輩
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札幌駅の構内は、観光客の熱気と雪国特有の冷気が混ざり合い、奇妙な温度差があった。
冷気がブーツの底から冷えが上がってきて、夏樹は思わず足を強く踏みしめる。
今日は最終選考会当日。余裕を持って少し早めに現地入りする予定だった。
手を温めるために自販機で温かいココア缶を買い、駅の南口で霜矢の姿を探した。
「あ、おーい、時原!」
マフラーと帽子と耳当てで毛玉のようになった霜矢が、夏樹に向かって手を振った。
「おはよう時原。ココア買ったの?」
「ああ、手が冷たくて。手袋リュックから出すのも面倒だし」
「もー、しもやけになるぞ。しょうがないなあ」
霜矢がいきなり夏樹の手を取って、ずぼっと自分の上着のポケットに突っ込んだ。
ポケットの中で、手がつながれている。
「あったかいだろ? カイロ入れたんだ。このまま歩くと危ないから、深冬ちゃんが来るまでな!」
「あ、うん……」
なんだこれ。なんだこれなんだこれ。
「あの子たちかわいいー」
観光客の女性たちがこちらを見ながらくすくす笑っている。
霜矢が、無意識なのか、ポケットの中で夏樹の手をむにむに触って遊び始める。
顔が茹で上がりそうだ。
「あ、霜矢ー!」
深冬の声がして、夏樹は慌てて霜矢のポケットから手を引き抜いた。
深冬は霜矢たちから少し離れた位置にいる、全然別の男性に声をかけている。
「深冬ちゃん! そっちじゃない! こっちこっち!」
霜矢が手を振ると、深冬がぎょっとしてこちらを見て、顔をぼんっと赤くした。
「わー、すみませんすみません」
間違えて声をかけた男性に平謝りする深冬。
霜矢と夏樹も深冬に近づいていく。
「もー、何やってんだよ深冬ちゃん」
「えへへ……でもなんで霜矢と間違えちゃったんだろう。しいて言うなら、背丈とか?」
夏樹の中に謎の違和感が生まれた。
なんだ、これ。どこかで……。
男性が振り返り、夏樹と目が合った。
「夏樹……?」
夏樹は唖然として、相手の顔を見つめ返す。
「宇佐美先輩……?」
「あれ、もしかして知り合い?」
霜矢が不思議そうな顔をして夏樹と宇佐美の顔を交互に見つめた。
宇佐美が夏樹の顔を懐かしそうに眺める。
「久しぶり。夏樹が北海道に引っ越したのは知ってたけど、まさか旅行中に偶然会えるなんて……。背もずいぶん伸びたんだな。3年前は僕と同じくらいだったのに……」
「今更何だよ」
夏樹が宇佐美を睨み返すと、宇佐美は困ったように、眉を寝かせた。
「夏樹、あのときは悪かった。もう一度話したい」
「……もう話すことなんてない。行こうぜ」
急ぎ足で立ち去ろうとする夏樹の手を、霜矢が掴む。
「待てよ、何かあるなら話した方がいいんじゃないか?」
「うるせえな!」
夏樹は思わず霜矢の手を振り払って怒鳴っていた。
「なんも知らねえくせに適当なこと言うなよ!」
空気が凍り付く。
宇佐美の声が低くなった。
「友達に当たるのは違うんじゃないか?」
「はあ?」
「15分だけ時間をほしい。それでけりをつけるから」
夏樹はうつむいた。
「……わかった」
冷気がブーツの底から冷えが上がってきて、夏樹は思わず足を強く踏みしめる。
今日は最終選考会当日。余裕を持って少し早めに現地入りする予定だった。
手を温めるために自販機で温かいココア缶を買い、駅の南口で霜矢の姿を探した。
「あ、おーい、時原!」
マフラーと帽子と耳当てで毛玉のようになった霜矢が、夏樹に向かって手を振った。
「おはよう時原。ココア買ったの?」
「ああ、手が冷たくて。手袋リュックから出すのも面倒だし」
「もー、しもやけになるぞ。しょうがないなあ」
霜矢がいきなり夏樹の手を取って、ずぼっと自分の上着のポケットに突っ込んだ。
ポケットの中で、手がつながれている。
「あったかいだろ? カイロ入れたんだ。このまま歩くと危ないから、深冬ちゃんが来るまでな!」
「あ、うん……」
なんだこれ。なんだこれなんだこれ。
「あの子たちかわいいー」
観光客の女性たちがこちらを見ながらくすくす笑っている。
霜矢が、無意識なのか、ポケットの中で夏樹の手をむにむに触って遊び始める。
顔が茹で上がりそうだ。
「あ、霜矢ー!」
深冬の声がして、夏樹は慌てて霜矢のポケットから手を引き抜いた。
深冬は霜矢たちから少し離れた位置にいる、全然別の男性に声をかけている。
「深冬ちゃん! そっちじゃない! こっちこっち!」
霜矢が手を振ると、深冬がぎょっとしてこちらを見て、顔をぼんっと赤くした。
「わー、すみませんすみません」
間違えて声をかけた男性に平謝りする深冬。
霜矢と夏樹も深冬に近づいていく。
「もー、何やってんだよ深冬ちゃん」
「えへへ……でもなんで霜矢と間違えちゃったんだろう。しいて言うなら、背丈とか?」
夏樹の中に謎の違和感が生まれた。
なんだ、これ。どこかで……。
男性が振り返り、夏樹と目が合った。
「夏樹……?」
夏樹は唖然として、相手の顔を見つめ返す。
「宇佐美先輩……?」
「あれ、もしかして知り合い?」
霜矢が不思議そうな顔をして夏樹と宇佐美の顔を交互に見つめた。
宇佐美が夏樹の顔を懐かしそうに眺める。
「久しぶり。夏樹が北海道に引っ越したのは知ってたけど、まさか旅行中に偶然会えるなんて……。背もずいぶん伸びたんだな。3年前は僕と同じくらいだったのに……」
「今更何だよ」
夏樹が宇佐美を睨み返すと、宇佐美は困ったように、眉を寝かせた。
「夏樹、あのときは悪かった。もう一度話したい」
「……もう話すことなんてない。行こうぜ」
急ぎ足で立ち去ろうとする夏樹の手を、霜矢が掴む。
「待てよ、何かあるなら話した方がいいんじゃないか?」
「うるせえな!」
夏樹は思わず霜矢の手を振り払って怒鳴っていた。
「なんも知らねえくせに適当なこと言うなよ!」
空気が凍り付く。
宇佐美の声が低くなった。
「友達に当たるのは違うんじゃないか?」
「はあ?」
「15分だけ時間をほしい。それでけりをつけるから」
夏樹はうつむいた。
「……わかった」
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