引きこもり王女ですが最強パーティーが集まったので世直し旅をします~この紋章が目に入らぬか!~

ぬいぬ

文字の大きさ
14 / 18
第2章 アルヴィゴ街道の騎士たち

3. 最初の一歩

しおりを挟む
 私たちは街道門の検問所に来ていた。

 首都を守る荘厳な門。ここを抜ければ、私の旅が本格的に始まる。

 私の仲間、カクペルとルスケンはそれぞれ役割分担をして旅立ちの準備をしている。

 カクペルは持ち物を見直し、食料品(パンは私が持っているとついついつまみ食いしてしまうので食事の時間まで没収されている)の備蓄は十分か、消耗品の状態は十全であるかなどの確認をしているようだ。
 
 私も先ほど自分の準備の確認を終えたばかりではあるが、カクペルに「お言葉ですがシスター、貴女の『大丈夫』は信用に値する場合とそうでない場合がございます」と荷物を持っていかれ、彼の荷物とともに最終チェックをうけることになってしまっていた。

 手持無沙汰となった私がルスケンを探すと、彼は書類窓口の職員たちと談笑しながら通行許可の手続きを進めているところであった。

 私が彼を見ていると、彼はそれに気づき、笑顔で私を手招きする。

 「さて、お嬢。ウェスマウンソーの街道門を抜けるにはいくつかの手続きが必要だってこと、知ってたか?」

 「ええ、ある程度は。しかし具体的な流れまでは存じておりませんわ」

 検問所の最奥、街道門に直接つながるそこが検問窓口だ。
 10か所ほど横並びで設置されているそこには、それぞれ旅人や商人たちが列をなしており、門番とやり取りをしている。

 そのうち8つは量が多い荷物を確認する受付であり、残りの2つは軽装で外を出る者向けの簡易的な受付である。

 私とルスケンは後者の受付に並ぶ。ルスケンもまた自身の荷物をカクペルに預けていた。

 カクペルがどうしているか探すと、彼は貸し出された台車を押しながら、8つある受付のうちの一つに並び始めたところであった。

 ルスケンは先ほどいた書類窓口を親指で示しながら説明を始める。

 「まず、身分証明と旅の目的を申告するのが基本だ。オレたちの場合、シスターと護衛の修道士、それと傭兵ってことになってるから、その旨を記載する。次に街道通行税の支払いだな。これは移動手段や目的によって変わる。たとえば荷馬車を使う場合は追加料金がかかるとかな」

 「私たちは徒歩ですから支払いが少なく済むというわけですわね」

 「そういうこった。ここまでの手続きはさっきの窓口で済ませたし、次はいよいよ検問だな」

 彼は前のほうを示した。

 「ウェスマウンソーの検問は出るほうが厳しくてな。確認事項も多いし、複数人が各々で荷物を持って通ろうとすると時間がかかる。だから今回はカクペルに荷物を任せたわけだが」

 「特に厳しいのが――」と彼は続ける。

 「武器の持ち出しだ。お嬢の短剣みたいな儀礼用のものであっても、必ずひとつひとつに許可証が発行される。それに持ち出せる武器にも規制があってな、カクペルのサーベルみたいなのは問題ないが、戦争用の重装備なんかは理由がないと没収されるし、問題ない種類のものであっても大量に持ち出そうとすれば当局に通報されることだってある」

 「しかし、街道を進むのに武器がないと危険ではありませんの?」

 私が疑問を口にすると、ルスケンは肩をすくめながら答えた。

 「そりゃそうだが、ここで規制しているのにはれっきとした理由がある。首都で作られた精度の高い武器が密輸されるのを防ぐためだ」

 「密輸、ですの?」

 「おう。中央に反抗的な諸領や各地に潜む不穏分子、無法者ども、それに外国の連中は、ウェスマウンソーの職人が作る一級品の武器を喉から手が出るほど欲しがってる。首都もそれがわかってるから、出ていくものを厳しくチェックしてるってわけだ」

 私は納得しつつも、門の先へと視線を移した。

 ここから先は高い壁に守られた安全な首都とは違う。自由とともに、未知の危険も待ち受けているのだ。

 私たちのほうはいよいよ検問の順番が来た。
 ルスケンが受付の門番に先ほど書類窓口で発行された確認済証を手渡す。

 「やあルスケン、調子はどうだい?」
 
 門番がルスケンに親しげに話しかける。

 「今度の仕事は護衛か? 珍しいな」

 「たまにはな。マンネリっつーのもよくないぜ、ミンデルのおっさん」

 「馬鹿言え、この仕事も毎日刺激的だ。密輸業者どもの小細工を出し抜いたりとかな――」

 親しげに軽口をたたきながら身体検査を済ませていく。

 ルスケンが終わったら次はそのまま私の検査だ。

 体全体をてきぱきと触られ、なにか隠し持っていないか確認される。
 ただ触っているだけでなく、触っただけではわからないものは魔法で確認しているということらしいが、このように体を触られることなど初めてなので緊張する。

 「シスター、あんたも合格だ」

 10秒ほどの検査ののち、門番が私の体から手を離した。

 「ありがとうございます、ミスター」

 「気を付けなよお嬢さん。熊公は手が早いからな。修道女だってお構いなしさ」 

 「るせーよジジイ」

 「ほほほ……」

 私たちは門番に礼をしてから検問所を抜け、門の前のちょっとした広場でカクペルを待つ。

 カクペルも検問の順番が回ってきているようだ。

 しかしそこの雰囲気は私たちの時のような和やかなものではない。
 彼は門番に辛辣に当たられているようである。

 門番はカクペルのサーベルを執拗に検分しつつ、カクペルを横目で睨む。

 「聖光輪騎士団の騎士様ねぇ……」

 「それが何か?」

 「女連れでいいご身分だな、この生臭坊主」

 「私はシスターの護衛です。それ以上でも以下でもない」

 「どうだか! なにが禁欲の修道士だ。俺はな、お前らみたいな神の名を汚す卑怯者のことなんかすぐに見抜けるんだぜ」

 「…………」

 「街道にだってな、お前らみたいな――――」

 「そこまで!」

 私はいてもたってもいられず二人の間に割って入った。

 「これ以上私の仲間を侮辱されることは我慢なりません。発言を撤回しなさい」

 「シスター……」

 私は門番を毅然とした態度で見据える。

 彼は私が割り込んでくると思わなかったのかたじろいている。
 
 しかし彼が何か言う前に口を開いたのはカクペルだった。

 「よいのですシスター」

 「ブラザー! しかし……!」

 「いえ……本当に、お気になさらず」

 カクペルは「お騒がせして申し訳ありませんでした」と門番や周囲の人々に一礼すると、いつの間にか検査を終えていた荷物を持ち門の方へと向かっていった。

 私はカクペルを追いかける。
 
 それを後目に、一連のやりとりを見ていたルスケンは門番になれなれしく話しかけた。

 「お前さん、女連れに嫉妬するってことは……飢えてんのか? 女に」

 「はぁ……!?」

 「ならいいアイディアがある――傭兵になれ。生きて帰れた日にゃ、毎晩違う女侍らせて宴会三昧だ」

 「な、なっ……!」

 顔を真っ赤にさせる門番。その周囲では彼の同僚がくすくすと笑っている。

 「ぎょ、業務妨害だ、さっさと行けっ!!」

 追い払われるようにして、ルスケンが私とカクペルのもとに合流する。

 「もう、またくだらないことを……」

 「まあまあ、楽しいことを我慢するのはいけないよってことで」

 にへらと笑うルスケン。

 「真面目な話、それはお嬢だってそうだぜ。今まで知らなかった楽しいこと、美しい景色がこの先には待ってる!」

 「ええ」と私は返事をし、門の先を見る。

 「ルスケン、カクペル、はじめの一歩は同時に行きましょう」

 「よいでしょう」

 「早速面白いこと考えるじゃねえか!」

 「では、いきますわよ」

 3人で横並びになり、門の淵に立つ。

 「せーの!」

 私たちは、最初の一歩を踏み出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。  彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。  彼女は思った。 (今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。  今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))  書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...