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第一章
疑惑
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彩香を背負って更に30分ほど歩くと周りに空き家と思われる家がいくつか見えてきた。
その中には人も住んでいそうな家も見てとれた。
「この近くです。母の家は」
背中から彩香の声がした。俺は一度彩香を降ろすと近くにあった古びたベンチ椅子に座った。
「ずっと背負わせてしまって疲れたでしょう?ごめんなさい」
彼女は申し訳無さそうに俺の顔を覗く。
「全然気にしないでください。こういうときに女性を背負えるように鍛えてるんですから」
俺が疲れを誤魔化すため笑いながら言うと彼女も照れたように笑った。
彼女の笑い顔を見て確信してしまった。
俺は彩香のことが好きになっていたのだ。
少し休んだ後に集落を進む。
集落は山に囲まれている。大雨が降れば土砂崩れが起きそうな場所だとは俺から見てもわかった。
集落から外れた更に奥に木々に囲まれた土地があった。そこには空き家とは思えない綺麗か一軒家が建っていた。
「あの家が母の家です」
彩香は少し離れたところから家を指差した。
「この後は総司くんにお願いすることになります」
彩香は申し訳無さそうに俺の顔を見た。
「心配しないでください。俺がばっちりお母さんを七夕祭に誘ってみせますよ」
俺は指を立てて強がってみせた。
彩香は少し微笑んで俺の手を握った。
俺は一瞬心臓が止まるかと思うくらいドキドキした。
「本当にありがとうございます。あなたは今も昔も変わらずに優しいのですね」
彩香は俺の手を握りながら泣きそうな表情になっていた。
「それってどういう、、」
俺は言ってることが理解出来なかった。彼女は俺の疑問には答えず続けた。
「総司くんが母に七夕祭の話を無事できたらあの神社で落ち合いましょう」
そう言って彼女は道を真っ直ぐ行った先に見える鳥居を指差した。
「待ってますから。総司くんなら絶対上手くできます」
そう言うと彩香は鳥居の方へ歩いていく。
先程までの彩香の様子と明らかに違っているように感じた。
一人になった俺は彩香の母の家へ向かう。
緊張するが何としても七夕祭に来てもらわなくてはならない。
表札を見ると「橘」とある。
彩香の母は橘さんと言うらしい。
俺は呼び鈴を鳴らした。
しばらくするとドアが開き女性が出てきた。30代くらいに見える若い女性だ。
「はーい。どちら様でしょうか?」
「あ、こんにちは!僕は胡桃町七夕祭りの実行委員をしている南雲といいます!」
お祭りの実行委員なら疑われないだろうと思い最初から決めていた嘘の自己紹介をする。
「あーどうもー。何かありましたか?」
「はい!実は七夕祭りのチラシを配らせてもらってて!是非橘さん家族にも参加してもらいたいなーって思って来ました!」
俺はとにかく明るくお祭りを盛り上げたい実行委員を演じた。
「あらあら。それはご苦労様ですー。私達家族は毎年参加してますから今年も参加しますよー」
「ただ3年前は残念だったわよね、、、災害があってお祭りも準備してたけど途中中止で。しかも梶さん家族は三人みんな亡くなってしまって」
俺は橘さんの話を聞いて一瞬状況が読み込めなかった。
「橘さんは3年前の七夕祭り準備から参加してくれたのですか?」
「えーもちろん!私達家族楽しみにしてますから。今年も楽しくしましょうね!実行委員さん」
俺は橘さんにチラシを渡して家を後にした。
橘さんの家を出て先程彩香と別れた道まで来た。俺はこの状況が理解できず混乱していた。
この世界は彩香の記憶が作った世界。その世界で救えなかった彩香の母の家族を救うのが目的だったはずだ。
しかし先程の家にいた橘さんと言う人は三年前も七夕祭りの準備に参加して無事だった。
更には当時亡くなったのは梶さん家族だと言う。
どういうことなのだろうか。
そもそも現在の置かれている状況は最初からおかしかった。螺旋状の電車に階層式の駅。その状況を受け入れたのは何故だったか。
思い返してみれば彩香が記憶の世界と言い出したところからだった。
現在の状況はわからない。しかし同じ状況に置かれたもう一人の人物が仮説を立てた。
俺はそれを素直に受け入れたがそもそも彩香の言っていたことは正しいのだろうか。
俺は自分の顔をパンっと叩く。
今考えても仕方ない。
神社で待つ彩香の元へ行くことにした。
その中には人も住んでいそうな家も見てとれた。
「この近くです。母の家は」
背中から彩香の声がした。俺は一度彩香を降ろすと近くにあった古びたベンチ椅子に座った。
「ずっと背負わせてしまって疲れたでしょう?ごめんなさい」
彼女は申し訳無さそうに俺の顔を覗く。
「全然気にしないでください。こういうときに女性を背負えるように鍛えてるんですから」
俺が疲れを誤魔化すため笑いながら言うと彼女も照れたように笑った。
彼女の笑い顔を見て確信してしまった。
俺は彩香のことが好きになっていたのだ。
少し休んだ後に集落を進む。
集落は山に囲まれている。大雨が降れば土砂崩れが起きそうな場所だとは俺から見てもわかった。
集落から外れた更に奥に木々に囲まれた土地があった。そこには空き家とは思えない綺麗か一軒家が建っていた。
「あの家が母の家です」
彩香は少し離れたところから家を指差した。
「この後は総司くんにお願いすることになります」
彩香は申し訳無さそうに俺の顔を見た。
「心配しないでください。俺がばっちりお母さんを七夕祭に誘ってみせますよ」
俺は指を立てて強がってみせた。
彩香は少し微笑んで俺の手を握った。
俺は一瞬心臓が止まるかと思うくらいドキドキした。
「本当にありがとうございます。あなたは今も昔も変わらずに優しいのですね」
彩香は俺の手を握りながら泣きそうな表情になっていた。
「それってどういう、、」
俺は言ってることが理解出来なかった。彼女は俺の疑問には答えず続けた。
「総司くんが母に七夕祭の話を無事できたらあの神社で落ち合いましょう」
そう言って彼女は道を真っ直ぐ行った先に見える鳥居を指差した。
「待ってますから。総司くんなら絶対上手くできます」
そう言うと彩香は鳥居の方へ歩いていく。
先程までの彩香の様子と明らかに違っているように感じた。
一人になった俺は彩香の母の家へ向かう。
緊張するが何としても七夕祭に来てもらわなくてはならない。
表札を見ると「橘」とある。
彩香の母は橘さんと言うらしい。
俺は呼び鈴を鳴らした。
しばらくするとドアが開き女性が出てきた。30代くらいに見える若い女性だ。
「はーい。どちら様でしょうか?」
「あ、こんにちは!僕は胡桃町七夕祭りの実行委員をしている南雲といいます!」
お祭りの実行委員なら疑われないだろうと思い最初から決めていた嘘の自己紹介をする。
「あーどうもー。何かありましたか?」
「はい!実は七夕祭りのチラシを配らせてもらってて!是非橘さん家族にも参加してもらいたいなーって思って来ました!」
俺はとにかく明るくお祭りを盛り上げたい実行委員を演じた。
「あらあら。それはご苦労様ですー。私達家族は毎年参加してますから今年も参加しますよー」
「ただ3年前は残念だったわよね、、、災害があってお祭りも準備してたけど途中中止で。しかも梶さん家族は三人みんな亡くなってしまって」
俺は橘さんの話を聞いて一瞬状況が読み込めなかった。
「橘さんは3年前の七夕祭り準備から参加してくれたのですか?」
「えーもちろん!私達家族楽しみにしてますから。今年も楽しくしましょうね!実行委員さん」
俺は橘さんにチラシを渡して家を後にした。
橘さんの家を出て先程彩香と別れた道まで来た。俺はこの状況が理解できず混乱していた。
この世界は彩香の記憶が作った世界。その世界で救えなかった彩香の母の家族を救うのが目的だったはずだ。
しかし先程の家にいた橘さんと言う人は三年前も七夕祭りの準備に参加して無事だった。
更には当時亡くなったのは梶さん家族だと言う。
どういうことなのだろうか。
そもそも現在の置かれている状況は最初からおかしかった。螺旋状の電車に階層式の駅。その状況を受け入れたのは何故だったか。
思い返してみれば彩香が記憶の世界と言い出したところからだった。
現在の状況はわからない。しかし同じ状況に置かれたもう一人の人物が仮説を立てた。
俺はそれを素直に受け入れたがそもそも彩香の言っていたことは正しいのだろうか。
俺は自分の顔をパンっと叩く。
今考えても仕方ない。
神社で待つ彩香の元へ行くことにした。
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