ヒーロー再誕 ~ヒーロー諦めた俺がもう一度ヒーローを目指す話~

秋月 銀

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プロローグ

主人公は諦めた

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 俺が幼き頃。それはそれは可愛くて、触れれば壊れてしまいそうなほどの繊細さを持ち、肌が真珠の様にツルンツルンしていた昔の話だ。そんな穢れも知らない純真無垢であった『僕』の話だ。
  
 『僕』の将来の夢が物語の主人公であり、実際なれると思っていた幼き『僕』は当然と言うべきか、ヒーローごっこをやっていた。
 
 しかし1人でのヒーローごっこというのも早々に飽きが来た。しょうがないから幼いながらも『僕』と同じ夢を持つ、同士達を5、6人集めたのも懐かしい。

 だがここで問題が発生した。
 
 考えてみれば実に単純な問題だった。『僕』と同じ夢を持つ者達を集めて、役割を決めるとなるとどうなるか。

 皆ヒーロー役を志望したのだ。

 そう、悪役がいないという根本的な問題だったのだ。

 誰かを悪役にしなければならない、とあの時『僕』達は相手の表情や仕草の一挙一動を見逃すまいと目を凝らした。初めての心理戦がこんなしょうもない所で行われていたなんて、今思い返すと本当にしょうもなく思う。

  それでも当時『僕』達は必死だったのだ。他を蹴落とし、己がヒーローという名の高みに手が届く様に必死だった。

 そして悪役が決まる。

 皆が皆、相手の弱みを突き、如何にソイツが悪役に相応しいかという弁論を繰り広げ、とうとう終いには泣き出し先生に訴えると脅す輩もいた中、悪役は決定した。
 
  『僕』だ。

 何故決まったのかというと、この悪役決めのつい先日、当時好きだった女の子の鉛筆を誤って踏んで壊してしまって、謝らずにその場を離れてしまった場面をたまたま目撃していた陸宮りくみや君がその話を持ち出したのが大きな原因であると言えよう。

 共通の敵を見つけた敵達はここぞとばかりに責めて来る。凄い泣きそうだったのを堪えて仕方なく悪役を演じたあの頃。

  『僕』は主人公という夢を諦めたのだ。
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