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春日原和嶺編
3話 闇
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「『コレ』はどういうことです、会長」
放課後の生徒会室で、春日原和嶺は会長と呼んだ女子生徒と向き合っていた。
彼女はクスッと笑い、微かに首を傾げる。
「『コレ』とは?」
和嶺は無言で後方へと眼をやる。そこには和嶺がここまで運んできた、4人の男子生徒が気絶していた。
それを一瞥した後、彼女は和嶺に向き直る。
「さて、一体何のことでしょう」
「とぼけても無駄ですよ会長。ご丁寧に生徒会のマークまで描かれているのに疑われないとでも?」
そう言って、和嶺はポケットから腕輪を4つ取り出すとそれらを先程会長と呼んだ少女の机にボトボトと落とす。
「簡易式洗脳器具、腕輪バージョンってとこですか」
「洗脳なんて人聞きの悪いですね」
「やっぱり会長じゃないですか…」
「あら……」
しまったと言わんばかりに口を抑える。和嶺は少し肩を竦めて話を進める。
「この腕輪はそこにいる生徒達が着用していたものです。命令内容は大体想像できますけど、一応聞いておきます。なんて命令したんですか?」
会長はクスッと笑みを浮かべると首を軽く傾げた。
「命令でも、洗脳でもありません。私はただお願いしただけですよ?『春日原和嶺に能力を使わせて下さい』と」
「そうお願いした結果が、カツアゲですか」
「仕方ありません。私はお願いしただけですので、実行方法については一切触れていませんでしたから」
「では、能力は使ったので目標達成という訳ですね」
「いえ、目標は達成されませんでした」
その理由を和嶺はなんとなく察したが、口にすることはせず無言で続きを促した。
会長はニコニコと笑ったまま続けた。
「私が見たかったのは、貴方が最初から持っている能力の方です和嶺君」
「………………………………」
「なのに貴方は生徒会が貸し与えた能力しか使っていないじゃないですか。そんなんじゃ全然━━━━」
面白くありません。
そう言った会長の顔は、笑ってはいなかった。それも束の間コロッと表情を切り替えるとまたニコニコと笑う。
「僕は………もう僕自身の能力は…使いたくないんです」
和嶺は眼を伏せながら呟いた。
「ええ、分かっています。貴方が能力を使わない理由もキッカケも。だからこそあのような事をさせたんですよ」
会長の視界には、未だ気絶したままの生徒達が映っていた。
「貴方が気兼ねなく、害となる者を壊せる様に」
「ふざけるなッ!!」
和嶺はいつの間にか身を乗り出していた。勢い良く机に叩きつけた手は微かに痛むが、そんな事などどうだって良い。
「アンタは…それだけの為に…………無関係な生徒を巻き込もうってのか…!」
「ええ、そうですよ」
「ッ………!」
「まぁ精々カツアゲ程度では貴方も使わないと思いましたけど」
会長はおもむろに立ち上がり、和嶺の耳元に口を近づけた。
「もう一度私に見せて下さい………貴方のその美しい『翼』を…」
和嶺はギリッ…………と歯を鳴らす。そんな彼を見つめる彼女の笑みはどこまでも深く、闇に溢れていた。
放課後の生徒会室で、春日原和嶺は会長と呼んだ女子生徒と向き合っていた。
彼女はクスッと笑い、微かに首を傾げる。
「『コレ』とは?」
和嶺は無言で後方へと眼をやる。そこには和嶺がここまで運んできた、4人の男子生徒が気絶していた。
それを一瞥した後、彼女は和嶺に向き直る。
「さて、一体何のことでしょう」
「とぼけても無駄ですよ会長。ご丁寧に生徒会のマークまで描かれているのに疑われないとでも?」
そう言って、和嶺はポケットから腕輪を4つ取り出すとそれらを先程会長と呼んだ少女の机にボトボトと落とす。
「簡易式洗脳器具、腕輪バージョンってとこですか」
「洗脳なんて人聞きの悪いですね」
「やっぱり会長じゃないですか…」
「あら……」
しまったと言わんばかりに口を抑える。和嶺は少し肩を竦めて話を進める。
「この腕輪はそこにいる生徒達が着用していたものです。命令内容は大体想像できますけど、一応聞いておきます。なんて命令したんですか?」
会長はクスッと笑みを浮かべると首を軽く傾げた。
「命令でも、洗脳でもありません。私はただお願いしただけですよ?『春日原和嶺に能力を使わせて下さい』と」
「そうお願いした結果が、カツアゲですか」
「仕方ありません。私はお願いしただけですので、実行方法については一切触れていませんでしたから」
「では、能力は使ったので目標達成という訳ですね」
「いえ、目標は達成されませんでした」
その理由を和嶺はなんとなく察したが、口にすることはせず無言で続きを促した。
会長はニコニコと笑ったまま続けた。
「私が見たかったのは、貴方が最初から持っている能力の方です和嶺君」
「………………………………」
「なのに貴方は生徒会が貸し与えた能力しか使っていないじゃないですか。そんなんじゃ全然━━━━」
面白くありません。
そう言った会長の顔は、笑ってはいなかった。それも束の間コロッと表情を切り替えるとまたニコニコと笑う。
「僕は………もう僕自身の能力は…使いたくないんです」
和嶺は眼を伏せながら呟いた。
「ええ、分かっています。貴方が能力を使わない理由もキッカケも。だからこそあのような事をさせたんですよ」
会長の視界には、未だ気絶したままの生徒達が映っていた。
「貴方が気兼ねなく、害となる者を壊せる様に」
「ふざけるなッ!!」
和嶺はいつの間にか身を乗り出していた。勢い良く机に叩きつけた手は微かに痛むが、そんな事などどうだって良い。
「アンタは…それだけの為に…………無関係な生徒を巻き込もうってのか…!」
「ええ、そうですよ」
「ッ………!」
「まぁ精々カツアゲ程度では貴方も使わないと思いましたけど」
会長はおもむろに立ち上がり、和嶺の耳元に口を近づけた。
「もう一度私に見せて下さい………貴方のその美しい『翼』を…」
和嶺はギリッ…………と歯を鳴らす。そんな彼を見つめる彼女の笑みはどこまでも深く、闇に溢れていた。
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