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学年トーナメント戦編
7話 勝つべき者と負けるべき者
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問◎主人公として、ヒーローとして、必要な事とは何か。簡潔に述べよ。
答☆勝利。
(主人公検定1級試験問題より抜粋)
◆◆◆
「ここからは僕の反撃だ」
そう言った僕に対して難波地君は、
「何言ってんだてめぇ。俺に一撃も当てられてないくせによぉ」
当ててないというか攻撃を行っていないだけで、決して難波地君の実力による回避が出来ているとかではないのだけれど、そこにはつっこまないであげよう。まぁ今までのぶつかりで難波地君の行動は概ね理解出来た。それに彼の能力も。
能力が分かったというほど、実際には大層なものではない。見た通り。彼の能力は『氷の生成』だろう。
氷だけにとどまらず、自然界に存在する物質の生成能力は応用の幅が広い。水を使う能力者なら、鋭く尖らせて槍のように扱う事も出来る。火なら、大体の形へと自由自在に変えられたり、土なら強固な壁を創ったりも出来る。しかし、それらも結局の所は能力者の熟練度によるものが大きい。
難波地君の使用しているの氷は、攻撃にも防御にも兼用出来る優れた能力だ。それなのに彼は、拳大の氷を数個生成して浮かし、それを直線的に飛ばす事しかやっていない。いや、出来ないんだろうな。
僕が彼について知り尽くしているなんて事はないけど、大体の性格は彼の態度や話し方で想像はつく。出し惜しみをしない、そんな感じの人だと思う。なのに、せっかくの氷の能力をあんな風にしか使ってないなんて事は、アレが彼にとっても最大だったって事だ。
氷を出して突っ込んで、相手が距離を取ったら氷を飛ばす。難波地君が毎度毎度この戦法を取っているかどうかは分からないけど、少なくとも僕との試合ではその動作しかやっていない。
なら対処の方法なんて簡単じゃないか。
僕は胸の辺りに意識を向ける。そこには確かに存在する。他の誰にも見えない、僕だけの“第三の手”が。
「てめぇ無視するなんていい度胸してんじゃねぇか。そろそろ終わらせんぞこら!」
難波地君がそう言って飛び出して来る。僕との距離は十メートル程、身体強化されている今なら三、四歩で辿り着ける距離だ。
一歩目。難波地君の周りに氷塊が生成された。
二歩目。何を言っているのか分からないけど、叫びながら大勢を肩から突進する為のものへと変える。
三歩目。しかしそれは叶わない。
「ッ!?」
ブゥゥゥゥンという重低音と共に、三歩目を踏み込もうとしていた難波地君の体が急停止する。彼の周りを覆うように展開されている防護陣には前方に緩やかな波紋が起きていた。
「なんだ……何が起こってんだよコレ!!」
「そりゃまぁ、勢い良く踏み込もうとしていた所に何かに衝突したような感触があれば誰だって戸惑うとは思うけれどね?………………でも、普通に考えても予測はつくんじゃないかな。防護陣からそんな重低音が響いてるって事は、《完全遮断》が発動したって事に他ならないじゃないか」
「何寝ぼけた事言ってんだ………!俺の行動を邪魔して攻撃を加えた物なんて、何処にもねぇじゃねえか!」
ニヤリと僕は口を歪める。上手い具合に嵌ってる。難波地君はそんな僕の考えも分からず声を荒げる。
「こりゃ防護陣の不備だろ!そうなんだろ!でなきゃ何も無い所で《完全遮断》が発動する訳ねぇ!」
「防護陣に不備なんてないよ………」
「あぁ!?じゃあなんだ!てめぇがイカサマしたってのか!」
「イカサマも何も、能力を使用してこその学年戦じゃないか」
「………………………………は?」
僕の言葉を聞いた難波地君が動きを停止する。
優しい主人公とかならここで懇切丁寧に自分の能力についての説明をしてあげたりするんだろうけど、僕はそんな甘ちゃんではない。能力は勿論教えてあげるけどそれは、身をもって、という事だ。
僕は胸の辺りに意識を向ける。透明な物体の形状変化の為だ。
因みにさっきまで、この物体は“手”ではなく、“槍”へと形状を変化させていた。射程の関係もあって、僕の能力は近接戦闘向きなんだけど、難波地君の戦法は少しばかり苦手だった。どうしたもんかと思ったのも束の間、対処は実に簡単だった。
難波地君の方から突っ込ませたらいいのだ。要するにカウンターである。その際、物体の形状は出来るだけ鋭い物をイメージして変化させた。僕としては槍のつもりだったのだけれど、もしこの物体を皆が見る事が出来たのなら、胸の中心から五メートル近い棘が生えていたように見えただろう。
別に“手”のままで対処しても良かったのだけれど、そのままだとダメージを与えられるようなイメージを僕が抱けなかったので形状変化をさせた。
防護陣はどんな『攻撃』でも、初撃は完全に無効化してくれる。しかし、『接触』するだけでは《完全遮断》は発動しない。僕は今回、相手の動きに合わせてカウンターを行った訳じゃない。あくまで難波地君の進行位置に物体を設置していただけだ。勢い良く振れば、手でもそれなりにダメージは与えられるけど、置いておくだけなら防護陣が最悪『接触』だと判断して、難波地君の動きを一瞬止めるだけになってしまう。
まぁダメージを与えられるならどんな形状でも構わなかったのだけれど。そしてその思惑は成功したという訳だ。
難波地君はこれで理解した筈だ。僕という脅威を。実際、見えない攻撃というのは人の恐怖を煽る。いつかシュウヤが言ってくれていた。
見えない攻撃ってのはほぼほぼ無敵なんだと。
僕も、そう思えるよ。
僕は透明な物体を今度は“剣”へと形状を変化させた。そして未だに驚愕のまま固まっている難波地君へと、振り下ろした。
無慈悲に響く破砕音。防護陣を破壊してやっと拝めた難波地君の驚愕の表情に、少し罪悪感を覚えないでもないけれど。
「ごめんね。君程度に負ける訳にはいかないんだよね」
その言葉がトドメになってしまったのか、難波地君がドサリと膝をついた。
『Bブロック第一回戦十八組目の勝者は━━━━春日原和嶺!!』
そのアナウンスが聞こえて、僕は軽く息を吐いた。
答☆勝利。
(主人公検定1級試験問題より抜粋)
◆◆◆
「ここからは僕の反撃だ」
そう言った僕に対して難波地君は、
「何言ってんだてめぇ。俺に一撃も当てられてないくせによぉ」
当ててないというか攻撃を行っていないだけで、決して難波地君の実力による回避が出来ているとかではないのだけれど、そこにはつっこまないであげよう。まぁ今までのぶつかりで難波地君の行動は概ね理解出来た。それに彼の能力も。
能力が分かったというほど、実際には大層なものではない。見た通り。彼の能力は『氷の生成』だろう。
氷だけにとどまらず、自然界に存在する物質の生成能力は応用の幅が広い。水を使う能力者なら、鋭く尖らせて槍のように扱う事も出来る。火なら、大体の形へと自由自在に変えられたり、土なら強固な壁を創ったりも出来る。しかし、それらも結局の所は能力者の熟練度によるものが大きい。
難波地君の使用しているの氷は、攻撃にも防御にも兼用出来る優れた能力だ。それなのに彼は、拳大の氷を数個生成して浮かし、それを直線的に飛ばす事しかやっていない。いや、出来ないんだろうな。
僕が彼について知り尽くしているなんて事はないけど、大体の性格は彼の態度や話し方で想像はつく。出し惜しみをしない、そんな感じの人だと思う。なのに、せっかくの氷の能力をあんな風にしか使ってないなんて事は、アレが彼にとっても最大だったって事だ。
氷を出して突っ込んで、相手が距離を取ったら氷を飛ばす。難波地君が毎度毎度この戦法を取っているかどうかは分からないけど、少なくとも僕との試合ではその動作しかやっていない。
なら対処の方法なんて簡単じゃないか。
僕は胸の辺りに意識を向ける。そこには確かに存在する。他の誰にも見えない、僕だけの“第三の手”が。
「てめぇ無視するなんていい度胸してんじゃねぇか。そろそろ終わらせんぞこら!」
難波地君がそう言って飛び出して来る。僕との距離は十メートル程、身体強化されている今なら三、四歩で辿り着ける距離だ。
一歩目。難波地君の周りに氷塊が生成された。
二歩目。何を言っているのか分からないけど、叫びながら大勢を肩から突進する為のものへと変える。
三歩目。しかしそれは叶わない。
「ッ!?」
ブゥゥゥゥンという重低音と共に、三歩目を踏み込もうとしていた難波地君の体が急停止する。彼の周りを覆うように展開されている防護陣には前方に緩やかな波紋が起きていた。
「なんだ……何が起こってんだよコレ!!」
「そりゃまぁ、勢い良く踏み込もうとしていた所に何かに衝突したような感触があれば誰だって戸惑うとは思うけれどね?………………でも、普通に考えても予測はつくんじゃないかな。防護陣からそんな重低音が響いてるって事は、《完全遮断》が発動したって事に他ならないじゃないか」
「何寝ぼけた事言ってんだ………!俺の行動を邪魔して攻撃を加えた物なんて、何処にもねぇじゃねえか!」
ニヤリと僕は口を歪める。上手い具合に嵌ってる。難波地君はそんな僕の考えも分からず声を荒げる。
「こりゃ防護陣の不備だろ!そうなんだろ!でなきゃ何も無い所で《完全遮断》が発動する訳ねぇ!」
「防護陣に不備なんてないよ………」
「あぁ!?じゃあなんだ!てめぇがイカサマしたってのか!」
「イカサマも何も、能力を使用してこその学年戦じゃないか」
「………………………………は?」
僕の言葉を聞いた難波地君が動きを停止する。
優しい主人公とかならここで懇切丁寧に自分の能力についての説明をしてあげたりするんだろうけど、僕はそんな甘ちゃんではない。能力は勿論教えてあげるけどそれは、身をもって、という事だ。
僕は胸の辺りに意識を向ける。透明な物体の形状変化の為だ。
因みにさっきまで、この物体は“手”ではなく、“槍”へと形状を変化させていた。射程の関係もあって、僕の能力は近接戦闘向きなんだけど、難波地君の戦法は少しばかり苦手だった。どうしたもんかと思ったのも束の間、対処は実に簡単だった。
難波地君の方から突っ込ませたらいいのだ。要するにカウンターである。その際、物体の形状は出来るだけ鋭い物をイメージして変化させた。僕としては槍のつもりだったのだけれど、もしこの物体を皆が見る事が出来たのなら、胸の中心から五メートル近い棘が生えていたように見えただろう。
別に“手”のままで対処しても良かったのだけれど、そのままだとダメージを与えられるようなイメージを僕が抱けなかったので形状変化をさせた。
防護陣はどんな『攻撃』でも、初撃は完全に無効化してくれる。しかし、『接触』するだけでは《完全遮断》は発動しない。僕は今回、相手の動きに合わせてカウンターを行った訳じゃない。あくまで難波地君の進行位置に物体を設置していただけだ。勢い良く振れば、手でもそれなりにダメージは与えられるけど、置いておくだけなら防護陣が最悪『接触』だと判断して、難波地君の動きを一瞬止めるだけになってしまう。
まぁダメージを与えられるならどんな形状でも構わなかったのだけれど。そしてその思惑は成功したという訳だ。
難波地君はこれで理解した筈だ。僕という脅威を。実際、見えない攻撃というのは人の恐怖を煽る。いつかシュウヤが言ってくれていた。
見えない攻撃ってのはほぼほぼ無敵なんだと。
僕も、そう思えるよ。
僕は透明な物体を今度は“剣”へと形状を変化させた。そして未だに驚愕のまま固まっている難波地君へと、振り下ろした。
無慈悲に響く破砕音。防護陣を破壊してやっと拝めた難波地君の驚愕の表情に、少し罪悪感を覚えないでもないけれど。
「ごめんね。君程度に負ける訳にはいかないんだよね」
その言葉がトドメになってしまったのか、難波地君がドサリと膝をついた。
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そのアナウンスが聞こえて、僕は軽く息を吐いた。
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