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一章
その9 不思議の解明
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池の底漁りの翌日。放課後になって、文芸部の面々は文芸部室へと集合していた。
部室を二つに仕切る様に中央に設置されている長机。ナツキ、ハル、アメと並んで座り、長机を挟んで対面に俺とフユカが隣り合って座っている。
部員の顔は皆一様に芳しくない。
それもそのはず。ハルが長机に置かれたある物を指さした。
「結局、埋まっていたのはコレだったわけなんだけど」
俺達の表情を悪化させる元凶。池の底に埋まっていた物体。その正体は人魚の人形であった。
部内の空気が重い。苦労して掘り起こしたものがまさか人形だなんて自分の目を疑ってしまった。プラスチック製のちんけな人魚人形。デフォルメされ過ぎた二頭身の人魚は、こちらを馬鹿にするかの様にウインクをかましてきている。
もしかして、一日放置したら何かしらの変化があるかもしれないと思い文芸部室に放置して昨日は帰宅したのだが、何の変化も起きていなかった。
「『池に眠る人魚』か……不思議とか比喩とか関係なく、物理的に人形が眠らされていただけだったなんてね」
「そりゃ眠らせたく気持ちもわかるわ。こんな腹立つ人魚、永久に埋めとくべきだったんじゃないのか」
掘り起こした当人である男子二人組の精神的疲労は半端なものではない。コイツの為に制服を一着汚したと考えると、なんだかアホらしくなってくる。
「池に眠る人魚~♪でも実際は人形~♪」
ナツキがリズムの乗らないラップを披露してくれた。いらないけど。しかし、ナツキのラップからもわかる通り人魚と人形は語呂というか語感が似ている。
「七不思議の真実がこんなクソしょうもないシャレだけとかなら、七不思議を創った人の感性を疑いますね」
「否定出来ないのが悲しいわね……。というか一つ目の不思議以外の七不思議もこんな感じじゃないでしょうね」
「それだけは想像したくねぇなぁ…」
俺達が七不思議を解明していく究極的な目的は、七つ目の不思議である『永遠の愛』と出会い、恋人を造る為だ。その七つ目の不思議ですらシャレなら、俺は泣く。人目を憚らずにワンワン泣いてやる。もはや犬と争うレベル。
そんな俺達の暗い空気を打ち消す様に、ナツキがパチンと手のひらを合わせた。
「今はそんなこと考えちゃ駄目だよー!これで七不思議の一つ目の不思議は解明っていうことでー!」
「確かに、出てきたのはこんな人形ですが、これ以外の答えがあるかと聴かれたらなさそうですもんね」
フユカがため息混じりに手のひらサイズの人魚人形を持ち上げる。その時、微かにだが何か音が聴こえた気がした。カサッといった感じの音だ。紙が擦れる様な、そんな音。
もしかしたらと思い、フユカに人形を渡す様に頼む。
「なぁフユカ、その人形ちょっと貸してくれないか」
「いいですけど。急にどうしたんです?惚れたんですか」
「アホ抜かせ。プラスチック人魚に惚れる奴がいるか」
受け取った人形を耳に近づけて軽く振ってみると、今度は確実に音が聴こえた。思わぬ収穫に、笑みが溢れる。
「どうしたのよシュウ。急に笑いだしたりなんかして」
「当たりだ」
「んんー?どういうことー?」
「この人形、中に何か入ってるみたいなんだよ。やっぱりコイツが、七不思議で間違いなかったんだ」
そういうと、皆の顔色が変わった。
「じゃあ、その中に入ってるものが……」
「本当の『池に眠る人魚』……」
アメとフユカの声色にも、微かに元気にが戻ってきている。
人魚人形をよく観察してみると、上半身と下半身の境目、丁度人間部分と魚部分の間に、ぐるりと切れ込みのようなものが走っていた。おそらく、ここで上下に分離する仕組みなのだろう。どうやらこの人形は、入れ物としても使えたようだ。
部員の視線が人魚に集まる。その視線の中、俺は人魚の半身をもぎ取る為に力を込めた。思いの外固く、それでも現役男子高校生には敵わなかったのか、あっけなく人魚は人と魚に分離してしまった。
その人形の中から小さな、筒状に丸められた紙が落ちてきた。長机に落ちたその紙を、代表してナツキが拾い上げる。
その紙を長机の上で広げてみると━━━━
一辺五センチ程の正方形の紙。その中央にどデカく『あ』とだけ書かれていた。
「………………………何これ」
アメが俺を見つめて聞いてくる。俺だって知らない。俺の方が知りたいわ。
しかし、ここで頼れる我らが部長が何かを閃いたかのように、あーっと声を漏らした。
「ナツキ、何かわかったの?」
「まぁ推測なんだけど、間違ってはいないかなー」
「な、何なんですか?もったいぶらずに教えて下さいよ!」
「七つ目の不思議の文章は、皆わかるよねー?」
そこにナツキ以外の全員が頷く。忘れるわけがない。『六つの不思議を解明した者は、永遠の愛と出会う』その七つ目こそが、俺達の目的なのだから。
ナツキはピンと人差し指を立てて、エヘンと胸を張った。
「だからこの文字は、七つ目へと至るヒントなんだよー」
そこまで言われて、ようやく合点がいった。
「じゃあつまり、残り五つの不思議を解明していけば…」
「同じ様に文字が見つかって、七つ目に至る!」
俺の言葉を引き継いで、ハルが力強く立ち上がった。
つまり、七つ目の文章にある解明とはこの文字を集めて行くことだったのか!!今まで道標もなく、最終目標だけハッキリ設定して始まったこの部活動。曖昧な解釈しか出来ていなかった『解明』という言葉の意味を、今日理解することが出来た俺達は大きく進めたという手応えを得られたのだ。
その手応えに嬉しさやら、これからのやる気をみなぎらせる俺達を見て、ナツキもクスリと笑って言った。
「それじゃあ本当にこれで一つ目の不思議は解明、ということでー」
あんなに腹立たしげに見えた人魚のウインクも、今はなぜだか俺達の前進を祝福しているかのようだった。
部室を二つに仕切る様に中央に設置されている長机。ナツキ、ハル、アメと並んで座り、長机を挟んで対面に俺とフユカが隣り合って座っている。
部員の顔は皆一様に芳しくない。
それもそのはず。ハルが長机に置かれたある物を指さした。
「結局、埋まっていたのはコレだったわけなんだけど」
俺達の表情を悪化させる元凶。池の底に埋まっていた物体。その正体は人魚の人形であった。
部内の空気が重い。苦労して掘り起こしたものがまさか人形だなんて自分の目を疑ってしまった。プラスチック製のちんけな人魚人形。デフォルメされ過ぎた二頭身の人魚は、こちらを馬鹿にするかの様にウインクをかましてきている。
もしかして、一日放置したら何かしらの変化があるかもしれないと思い文芸部室に放置して昨日は帰宅したのだが、何の変化も起きていなかった。
「『池に眠る人魚』か……不思議とか比喩とか関係なく、物理的に人形が眠らされていただけだったなんてね」
「そりゃ眠らせたく気持ちもわかるわ。こんな腹立つ人魚、永久に埋めとくべきだったんじゃないのか」
掘り起こした当人である男子二人組の精神的疲労は半端なものではない。コイツの為に制服を一着汚したと考えると、なんだかアホらしくなってくる。
「池に眠る人魚~♪でも実際は人形~♪」
ナツキがリズムの乗らないラップを披露してくれた。いらないけど。しかし、ナツキのラップからもわかる通り人魚と人形は語呂というか語感が似ている。
「七不思議の真実がこんなクソしょうもないシャレだけとかなら、七不思議を創った人の感性を疑いますね」
「否定出来ないのが悲しいわね……。というか一つ目の不思議以外の七不思議もこんな感じじゃないでしょうね」
「それだけは想像したくねぇなぁ…」
俺達が七不思議を解明していく究極的な目的は、七つ目の不思議である『永遠の愛』と出会い、恋人を造る為だ。その七つ目の不思議ですらシャレなら、俺は泣く。人目を憚らずにワンワン泣いてやる。もはや犬と争うレベル。
そんな俺達の暗い空気を打ち消す様に、ナツキがパチンと手のひらを合わせた。
「今はそんなこと考えちゃ駄目だよー!これで七不思議の一つ目の不思議は解明っていうことでー!」
「確かに、出てきたのはこんな人形ですが、これ以外の答えがあるかと聴かれたらなさそうですもんね」
フユカがため息混じりに手のひらサイズの人魚人形を持ち上げる。その時、微かにだが何か音が聴こえた気がした。カサッといった感じの音だ。紙が擦れる様な、そんな音。
もしかしたらと思い、フユカに人形を渡す様に頼む。
「なぁフユカ、その人形ちょっと貸してくれないか」
「いいですけど。急にどうしたんです?惚れたんですか」
「アホ抜かせ。プラスチック人魚に惚れる奴がいるか」
受け取った人形を耳に近づけて軽く振ってみると、今度は確実に音が聴こえた。思わぬ収穫に、笑みが溢れる。
「どうしたのよシュウ。急に笑いだしたりなんかして」
「当たりだ」
「んんー?どういうことー?」
「この人形、中に何か入ってるみたいなんだよ。やっぱりコイツが、七不思議で間違いなかったんだ」
そういうと、皆の顔色が変わった。
「じゃあ、その中に入ってるものが……」
「本当の『池に眠る人魚』……」
アメとフユカの声色にも、微かに元気にが戻ってきている。
人魚人形をよく観察してみると、上半身と下半身の境目、丁度人間部分と魚部分の間に、ぐるりと切れ込みのようなものが走っていた。おそらく、ここで上下に分離する仕組みなのだろう。どうやらこの人形は、入れ物としても使えたようだ。
部員の視線が人魚に集まる。その視線の中、俺は人魚の半身をもぎ取る為に力を込めた。思いの外固く、それでも現役男子高校生には敵わなかったのか、あっけなく人魚は人と魚に分離してしまった。
その人形の中から小さな、筒状に丸められた紙が落ちてきた。長机に落ちたその紙を、代表してナツキが拾い上げる。
その紙を長机の上で広げてみると━━━━
一辺五センチ程の正方形の紙。その中央にどデカく『あ』とだけ書かれていた。
「………………………何これ」
アメが俺を見つめて聞いてくる。俺だって知らない。俺の方が知りたいわ。
しかし、ここで頼れる我らが部長が何かを閃いたかのように、あーっと声を漏らした。
「ナツキ、何かわかったの?」
「まぁ推測なんだけど、間違ってはいないかなー」
「な、何なんですか?もったいぶらずに教えて下さいよ!」
「七つ目の不思議の文章は、皆わかるよねー?」
そこにナツキ以外の全員が頷く。忘れるわけがない。『六つの不思議を解明した者は、永遠の愛と出会う』その七つ目こそが、俺達の目的なのだから。
ナツキはピンと人差し指を立てて、エヘンと胸を張った。
「だからこの文字は、七つ目へと至るヒントなんだよー」
そこまで言われて、ようやく合点がいった。
「じゃあつまり、残り五つの不思議を解明していけば…」
「同じ様に文字が見つかって、七つ目に至る!」
俺の言葉を引き継いで、ハルが力強く立ち上がった。
つまり、七つ目の文章にある解明とはこの文字を集めて行くことだったのか!!今まで道標もなく、最終目標だけハッキリ設定して始まったこの部活動。曖昧な解釈しか出来ていなかった『解明』という言葉の意味を、今日理解することが出来た俺達は大きく進めたという手応えを得られたのだ。
その手応えに嬉しさやら、これからのやる気をみなぎらせる俺達を見て、ナツキもクスリと笑って言った。
「それじゃあ本当にこれで一つ目の不思議は解明、ということでー」
あんなに腹立たしげに見えた人魚のウインクも、今はなぜだか俺達の前進を祝福しているかのようだった。
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