魔竜を封じる部室にて!!

秋月 銀

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四章

その25 四つ目の不思議

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 久方ぶりの全員集合となった文芸部。

 しかし文芸部の面々はいつものように長机に集まることもなく、床に腰を下ろしていたのだった。

 ぶぉぉぉと扇風機があっちこっちへと首を振って風を送ってくれている。その恩恵に預かるため、俺達はパイプ椅子を使わずに座っていたのだった。まさか部室で扇風機を浴びる日が来るなんて………。文明の利器とアメに感謝を捧げつつ、肌を撫でる爽やかな風を楽しむ。

 「涼しいわねぇ」
 「そうですねーもうここから動きたくありませんからねー」
 「同感だよー」

 風に髪を遊ばれている女子達。そのおかげで普段は隠れているうなじも明らかになっている。それに加えて先程までの暑さで、僅かに浮かんでいた汗がキラリと光る。そのせいで、なんだかやけに扇情的に見えてしまっていた。

 いつもと変わらないはずなのに、今の彼女達は少しばかり魅力的に見えていた。

 「それでー?ハルはなんであんなに慌ててたのー?」
 「ああそうだった……。扇風機のせいですっかり忘れちゃってた」
 
 そういえば部室に入って来る時に何か言っていたな。ハルもナツキに言われて思い出したのか、持ってきていたリュックサックから何やら筒状の紙を取り出した。どうやら模造紙のようだ。

 その模造紙を床に広げだす。当然の如く、バサバサと扇風機の風に煽られていたので、近くにあった本やら筆箱やらを重しにして模造紙を抑えつけた。そして広げ終わった後、ハルが深刻そうな声を出した。

 「私の自由研究が大変なのよ」
 「小学生か」
 「うるさい!今回ばかりは本当に焦ってるの!」

 むきぃー!といった風にハルがこちらを睨んでくる。

 いや……だって。だって、ねぇ?自由研究だなんて、小学生以来聴いたことがないんだが。それに扇風機で忘れるくらいのことだしなぁ。

 「自由研究とはまた懐かしい単語を持ち出してきたものですね。一体何がどうなって自由研究をする羽目になっているのですか」
 「うぅ…聴いてよフユカぁ。ウチのクラスの担任が科学の先生でもあるんだけど……」
 「はぁ。それで追加の課題をだされてしまった、と?」
 「いや、自分の興味ある内容について研究してきたら科学の平常点を少しプラスするって言ったの」
 「強制でないなら別にしなくても構わないじゃないですか」
 「科学は苦手だから少しでも点数が欲しいのよぅ……」

 両手の人差し指を突き合わせながら、ハルが俯きがちに真意を告白してきた。ハルに苦手科目があるということに軽く驚いた。頭は良さそうには見えないが、別段悪くはなさそうでもある。最低でも平均点くらいは獲得していそうなものだが。

 少し気になってハルに尋ねてみた。

 「苦手ってことは、期末テストの結果も相当悪かったのか?」
 「うぅ…平均点の五点下………」
 「コメントし辛いな…」

 いっそのこと「九十点しか点数とれなかったのー」とか言ってくれた方が良かった。あまりにもリアルな苦手教科だったので、からかおうにもからかえない。

 「それでも赤点は回避しているからいいではないですか」
 「それでも科学だけ評定2とか恥ずかしいし……」
 「別に恥ずかしくはないとは思うけど………。まぁハルが気になるっていうのなら自由研究をすべきだろうね」
 「そう!そうなんだけど!この模造紙を見て!」

 バッと模造紙に向かって両手を広げるハル。広げられた模造紙はキレイなままだった。

 「真っ白だねー」
 「何もやってなかったのよ…」

 文字一つ記入されていない模造紙を前にして、ハルはガクリと項垂れた。

 「そこまで落ち込むものですか?夏休みはまだ後半分くらいはありますし………」
 「提出期限が今週の金曜日までなの」
 「するとつまり今日が火曜日だから、後三日しかないんだねー」

 緊張感のあるハルとは対照的にのほほんとした口調でナツキが付け加えた。その言葉にハルはコクリと頷いた。

 「だから皆に頼りに来たんだけど……」
 「だからって言われてもなぁ。頼みの綱のアサガオ研究も今からじゃ間に合わないだろうしな」

 うぅ、と落ち込んだ声をハルは漏らす。時間がないというのはハル自身も理解していたはずだ。その上で、自分で何が研究できるかを考えても思い浮かばなかったから、文芸部俺達を頼りに来たのだろう。

 真剣に悩んでいる様子のハルを見ていると、無下に断るというのも悪い気がする。しかし、なぜこうなる前に片付けなかったのかという疑問はあるのだが。

 するとナツキがぽむ、と両手を合わせた。

 「そういえば丁度いいのがあるよー」
 「え……!本当に!?」

 先程の落ち込んだ表情から反転。ナツキの言葉に激しく食いついたハルはそのままナツキに詰め寄った。ほとんど至近距離で抱き着く女子。なぜだかイケナイものを見ている気がするのは俺だけなのかな?

 ナツキは特にたじろいだ様子もなく、ゆっくりとそれを口にした。

 「四つ目の不思議『屋上で吠える人狼』」
 「………ん?」

 意図が伝わらなかったハルが首を傾げる。というか周りで聴いている俺達もよくわかっていない。詳しい説明を無言で俺達は求めた。ふふふ、とナツキが笑った。

 「この調査解明も兼ねて、自由研究は青空観察といこうよー」
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