焼きたてフィーリング

作者チョロまつ

文字の大きさ
24 / 46
2章 訪問!紫躍財閥

22話 願いを叶えた男

しおりを挟む
「卓郎さんの娘が流卵…!?」
「え…?父をご存知なんですか…?」

意外な反応をされて少し困惑する流卵。
「申し訳ないけど、あの一室の手紙読ませてもらってね、もしかしたらと思ったがやはりそうだったのか。」
「そうか…あの部屋に…」
「探偵ごっこか何かですか?」
急な展開にもちょっとツッコミを入れる流卵。

「…あなたが…あの…!」
秋花はまるで尊敬的な目を向けて流卵を見つめる。

秋花の父親は流卵に近付いた。
「そうか…あいつの娘が…。卓郎、見てるか、お前の娘さんは生きてここにいるぞ。」
そして、上を見上げた。

「正文さん、ニュースを見たとき辛かっただろうなぁ…」
「えぇ、最初は信じて無かったもの。」
ニュースとは、智登の卒業打ち上げのあの日のニュース。
掬羅一家の家の焼失、父、母の死亡、娘の行方不明。
自分の親友が突如、何の前触れもなくこの世から消えたのだ。
苦楽を共にしてきた仲だった二人は、流卵が卓郎と一緒にいた時間より長かった。
流卵とほぼ同じ悲しみを背負ったのである。

「娘さんももう亡くなってしまったと…一目すら見れないと思っていたが…こんな形で会えるとはな…」
「???」
何にも知らない流卵にはちんぷんかんぷんだったので、事情を説明した。

「なんかすごいですね…!自分の父親があの有名財閥の親友だったなんて!」
「君の父親がいなければこの財閥はできてすらいないからな。」
影で見守る二人。
「パパ、冷静に見えるけど、自分の子供のように喜んでるのよね。」
「親友って深いな…」
ちょっと深い何かに浸りつつ…

「でも流卵があの卓郎さんの娘って驚いちゃった!ホント、すぐ近くにいるんだもの!」
世界の狭さも感じた。

「本当は来てもらってから秋花と友達になってもらおうと思ったが、その必要も無かったな!」
「ですねっ!もう友達なんですし!」
会ったらやりたかった事ももうすでに叶ってる。
しかし、そのきっかけを作ったのは誰だろうか。

「これって全部扶蓮のおかげよね。」
「え?」
秋花は、これが全て智登が作ったものだと実感した。
「だって、あなたが流卵を救って、その後、私を友達にしてくれて、おかげで流卵とも仲良くなれて…
流卵が生きていてほしい事、流卵と私が友達になってほしい事、パパが望んでいた事、あなたが既にやってくれた。」
奇跡の出会いを完璧なまでに成功させたのは智登のおかげ、はっきりと分かる。

「あんなに喜んでるパパ初めて…私から言わせて。ありがとう、扶蓮っ。」
「あんま実感ないけどな…まぁ、どういたしましてっ。」
その時、秋花も今までに無いくらい喜んでいるのがわかった。

「っと、もうこんな時間か…色々と話したいがもう帰ったほうがいいだろう。」
時間はもう午後6くらいを指していた。
「そうね、二人をお願いっ。」
「かしこまりました。」
執事がリムジンを運転し、こちらに来た。

「ありがとうございました。」
「礼を言うのはこちらの方だ、ありがとう扶蓮君、お礼がいくらあったって足りないよ。」
最後に正文と握手を交わした智登。
リムジンの窓が閉まった。

「なんだか不思議な体験が出来ましたね。」
「そうだな…」
「お父さん、すごかったんだなぁ…」
「それ以上にしとけ、会いたくなって泣くぞ?」
「あうぅ…」

こうして、二人は紫躍家を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

やさしいキスの見つけ方

神室さち
恋愛
 諸々の事情から、天涯孤独の高校一年生、完璧な優等生である渡辺夏清(わたなべかすみ)は日々の糧を得るために年齢を偽って某所風俗店でバイトをしながら暮らしていた。  そこへ、現れたのは、天敵に近い存在の数学教師にしてクラス担任、井名里礼良(いなりあきら)。  辞めろ辞めないの押し問答の末に、井名里が持ち出した賭けとは?果たして夏清は平穏な日常を取り戻すことができるのか!?  何て言ってても、どこかにある幸せの結末を求めて突っ走ります。  こちらは2001年初出の自サイトに掲載していた小説です。完結済み。サイト閉鎖に伴い移行。若干の加筆修正は入りますがほぼそのままにしようと思っています。20年近く前に書いた作品なのでいろいろ文明の利器が古かったり常識が若干、今と異なったりしています。 20年くらい前の女子高生はこんな感じだったのかー くらいの視点で見ていただければ幸いです。今はこんなの通用しない! と思われる点も多々あるとは思いますが、大筋の変更はしない予定です。 フィクションなので。 多少不愉快な表現等ありますが、ネタバレになる事前の注意は行いません。この表現ついていけない…と思ったらそっとタグを閉じていただけると幸いです。 当時、だいぶ未来の話として書いていた部分がすでに現代なんで…そのあたりはもしかしたら現代に即した感じになるかもしれない。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

幼馴染の許嫁

山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

処理中です...